その興味深い論文のタイトルは”Osteoclast differentiation independent of the TRANCE-RANK-TRAF6 axis”です。このTRANCEとは何か。これは破骨細胞分化因子RANKLのことです。Choi博士らは1997年にTNFファミリーに属するサイトカインの一つとしてTARNCEを発表し、翌年それが破骨細胞分化に重要であることが判明しました(Osteoclast differentiation factor is a ligand for osteoprotegerin/osteoclastogenesis-inhibitory factor and is identical to TRANCE/RANKL. Yasuda H, Shima N, Nakagawa N, Yamaguchi K, Kinosaki M, Mochizuki S, Tomoyasu A, Yano K, Goto M, Murakami A, Tsuda E, Morinaga T, Higashio K, Udagawa N, Takahashi N, Suda T. Proc Natl Acad Sci U S A. 1998など。この論文ではTRANCE/RANKLとTRANCEの方がRANKLの前に表記されています)。その後RANKLという言葉の方が広まったのですが、Choi博士はTRANCEという名称にこだわりが強かったのでしょう。プライドが垣間見えます。・・・ただ最近の論文ではChoi博士もRANKLを使っているようです。閑話休題、この2005年の論文では、TNFとIL-1βの組み合わせやTNFとTGFの組み合わせでも破骨細胞ができることを主張しています。ちゃんとTRANCEやRANKのノックアウト細胞を用いた解析で、微量なRANKLの影響を否定できるようにしています。

つまり、TNFなどの(炎症性)サイトカインの組み合わせによってRANKL非依存性に破骨細胞が分化しうるというアイデア(報告)は結構前からあったのです。我々の報告はその系譜に連なるものの一つということになるでしょう。

関節リウマチにおいて、TNF単独の阻害では十分な骨破壊の抑制につながらないことがあるのは、TNFには依存していない破骨細胞誘導性サイトカインの組み合わせも存在するから、なのかもしれません。それが現時点での私の解釈です。

佐藤 浩二郎

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