最近世間でChatGPTが話題になり始めましたが2022年の11月に発表され、その後5日間で利用者が100万人を超えていたようです。私は気づくのが相当遅かったと言えるでしょう。話を聞いて4月に初めて使ってみましたが、日本語でも使えて、更に回答が非常に自然な日本語であることに驚きました。少し前まではここまで自然な回答ではなかったような・・・。これだと一見しただけでは人間が回答したものか区別がつきません。しかし、ネット上の書き込みで「カチカチ山の話を訊いたら変な回答が返ってきた」というのがあって試してみたところ『「かちかち山」とは、日本の童話の一つで、狸と狐の対決を描いた物語です。』ふむふむ・・・えっキツネ?『狸と狐はお互いに自慢話をしているうちに、火起こしの競争をすることになります。』・・・火起こしの競争って・・・?『狸は乾いた木の枝を使って火を起こそうとしても、かちかちと音がしてしまい、狐に気づかれてしまいます』どんな勝負なんだ。ツッコミどころ満載です。『この物語は、自慢や虚栄心が裏目に出ることを教える童話として知られています』そっそうなんだ。・・・確かに変な回答です。しかし、これは海外の知らない人が読んだら信じてしまいそうです。元の話を知っているから変だと分かるわけです。Wikipediaも情報の不正確さが問題になることがありますが、ChatGPTは「平気で嘘をつくレベル」なので更に注意が必要です。学生さんも安易に使うのはやめておいた方が良さそうです。きちんとウラを取る必要があります(あとは老婆心になりますが、こういうのにあまり頼ると思考力が退化してしまうのではないかと心配です)。それにしてもすごい技術ではあります。Deep learningの威力を再認識させられましたが、私が初めてそれを認識したのはアルファ碁と当時世界最高峰の囲碁棋士だったイ・セドル氏(韓国)との公開対局でした。

今調べるとそれは2016年のことのようです。もっと前だと思っていましたが。私は碁については基本的なルールしか知りませんが、アルファ碁の方が奔放に石を置いている印象を持ちました。しかしそれでも最終的には勝ってしまう。ただ第4戦では明らかに素人目でもアルファ碁が変な手を連発し、イ・セドルが1勝を返しました。まだ完璧な存在ではないことを示したわけですが、結局5戦でアルファ碁の4勝1敗でした。翌年バージョンアップしたアルファ碁が当時世界最強と言われた中国の柯潔氏に3連勝し、人との対戦はその後打ち切られたようです。もはや全く人類が太刀打ちできないレベルにまで到達してしまいました。将棋はもう少し以前からコンピューターが人を超えていたようで、今プロの将棋の対局放送でもどちらが優勢か、また次の候補手も最善手・次善手・・・と順番に示されています。リアルタイムで得点が出るのでスポーツ観戦のような面白さがあります。将棋を指さず見るだけ人を表す「観る将」という言葉もできました。最近最年少名人を獲得した藤井7冠は、将棋ソフトの最善手との一致率が極めて高く、解説のプロ棋士をいつも唸らせています。当然将棋ソフトで研究を重ねている(高機能のコンピューターを自作しているそうです)わけですが、重要な点は、ソフトは最善手を教えてくれても「どうしてそれが最善なのか」は教えてくれないということだと思います。絶対的な正解はコンピューターが教えてくれるが、その理由は教えてくれない。これは将棋に限らず、私達の「理解」というものを根本的に変えてしまう可能性を示しています。

佐藤 浩二郎

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