関節リウマチの論文が一段落してちょっと一息ついた所で驚きの論文を見つけてしまいました。皮膚筋炎(dermatomyositis, DM)の治療に抗IFN-β抗体であるダズキバートが有効だった、という報告がLancetに載っていたのです。DMは血清中にIFN-βではなくIFN-αが出る、と思っていた私としては虚をつかれる思いでした。実際DMの内、抗MDA5抗体陽性の患者の場合、IFN-αが高いことが分かっている全身性エリテマトーデス(SLE)の患者よりも血清IFN-αが高い傾向があったのです(基本的には治療前の話です。治療で結構すぐ低下しました)。ですからIFN-α、IFN-βの働きを共に阻止できるアニフロルマブ(抗I型IFN受容体抗体)をDMに使えば効果があるのではないか、とは考えていました。しかしアニフロルマブはSLEには保険適応があるものの、DMに対しては適応がありません。使うためには面倒な書類仕事が必要で、更に保険も効かないとすると誰がその費用を負担するのだ?ということにもなりかねません。(というわけで誰か医師主導治験でもやってくれないかな・・・と思っていました。完全に自主性の乏しい態度です。)

 しかし、IFN-βだけ中和すれば効くのか?理論的にはダズキバートはIFN-αの効果は阻止しないはずです。これは一体どうしたことか・・・?頭の中がクエスチョンマークで一杯になりました。色々なことが考えられます。(1) 血中ではIFN-αが検出できても皮膚や筋肉(炎症が実際に起きている場)ではIFN-βの方が多い。そういうこともあるかもしれません。(2) IFN-βを阻害するとIFN-αの産生が阻害される・・・これはその昔私が所属していた大学院のラボでそんなことを言っていたような気が・・・。(3) 実は今まで使ってきた試薬が、IFN-αだと思っていたが実際にはIFN-βを検出していた これは身も蓋もない、最悪のパターンです。そもそもI型IFNは構造が似ているので、濃度を検出する際に用いる抗体によっては「どちらにも反応してしまう」(=交叉反応)が全くないとは言い切れません。しかし大手の会社の製品ですしそんなことはないと信じたいところです。この驚きを先輩の先生(◯マリアン◯医大のK畑先生)に伝えたところ「筋細胞がIFN-βを産生するという論文があるよ」と涼しい顔で言われました。そ、そうなのか。まあ大量に出るサイトカインでもないので、免疫染色で検出することも簡単ではないと思います。産生細胞や産生メカニズムについて、I型IFNにはまだまだ謎が潜んでいることを痛感しました。謎が解消することは滅多になく、増える一方である気がします。しかしだからこそ謎解きは面白く、嵌ってしまうものだと思います。

佐藤 浩二郎

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