日本の医療費はどんどん増えている ということが問題になっています。一つの原因は日本全体の高齢化だと思うのですが、もう一つは医療技術の高度化です。むしろ後者の方が効いているように思います。2000年代に入って、関節リウマチ診療に生物学的製剤が導入されました。徐々にその数は増えていったのですが、とにかく治療効果の大きさは驚くべきものでした。パラダイム・シフト(従来の枠組みが根本的に変わってしまうこと)と称されたのも納得できる、まさに革命でした。ただその当時、それらの薬剤を使っていて私が心配になったのは、「こんな高額の薬剤を使っていて、日本の医療保険は持続可能なのだろうか?」ということでした。生物学的製剤は3割負担であっても高額であるため患者が使えない(使うのに同意しない)こともしばしばなのですが、逆に言えば、使える場合でも最低7割の費用は医療保険から支出されるからです。しかし効果が明らかなので使わないという選択肢はなく、その後も生物学的製剤の種類はどんどん増えていきました。そのうち私の感覚も麻痺してきて、「何だ、意外と大丈夫だったのかな」と心配しなくなっていきました。でも今考えると、やはりそんなはずはなく、実際には「大丈夫ではなかった」ように思います。日本の医療財政というのは巨大な構造体なので、飛行機で言えばすぐには墜落しない、また船で言えばすぐには沈没しない仕組みになっていたのだと思います。しかし一旦状況が悪くなると、その悪化を押し留めることはものすごく困難なことなのでしょう。システムのきしみが色々なところで見えるようになっていると思います。
佐藤 浩二郎
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