IFN-αだろうが、βだろうが、受容体に結合した後のシグナルは共通なのだからどちらでもいいじゃないか、という考え方もありますが、そうとも限りません。産生細胞が異なる可能性があります。I型IFNがα、βと名付けられる前はそれぞれ白血球IFN, 線維芽細胞IFNと呼ばれていたのです。
ただし私が博士課程を過ごしたラボでは、「細胞がウイルスなどの刺激を受けると、まずIFN-βが産生される。そのIFN-βがその細胞自身あるいはその周囲の細胞を刺激し(つまりオートクラインあるいはパラクライン的に作用して)IFN-αの産生を促す」という仮説が提唱されていました。(私は直接そのテーマには関わっておらず、端で見ていただけなので誤解しているかもしれませんが・・・。)この仮説が正しければ、どのみち最終的に産生されるのはIFN-αである、ということになります。しかしSakashita et al.で取り上げられていたのはIFN-βの方です。つまりIFN-βが主に産生されIFN-αは誘導されない、という状況があり得るということが示唆されます。
実は私も患者由来血清でI型IFNを測定している時に皮膚筋炎やSLE患者ではIFN-αが主に検出されるが、関節リウマチではIFN-βが主に検出される、ということに気づいていました。つまりSakashita et al. と同じです。まあ一致すること自体はそれほど驚くべき結果ではないのかもしれません。というのも同じ会社の同じ機器・試薬を使って測定していたからです。
難しい点は、IFN-αにしろβにしろ、検出限界のギリギリの濃度だということです。測定できない患者も多いのです。そして、低い濃度ということは誤差の割合も大きいということになります。結果の解釈には慎重さが必要です。
しかし昔の研究者が考えたようにIFN-αが白血球(この中には当然形質細胞様樹状細胞pDCも含まれるでしょう)、IFN-βが線維芽細胞から主に産生されるのなら、関節リウマチの場合は滑膜線維芽細胞から出ているのかもしれません。実際、昔からウイルスの刺激を模倣する刺激として使われてきたpoly I-C(二本鎖RNA)を滑膜線維芽細胞にふりかけると、培養上清中にIFN-βが主に産生され、IFN-αはほとんど検出できません。興味深いことに末梢血由来単核球にpoly I-Cを加えた場合、どちらのIFNも産生されませんでした。
佐藤 浩二郎
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