末梢血由来単核球にpoly I-Cを加えた場合、αもβも、どちらのインターフェロン(interferon, IFN)も産生されない、ということは、2本鎖RNAを認識する重要な受容体であるToll様受容体3 (Toll-like receptor 3, TLR3)の発現が低いことが一因と考えられます。実際TLR3の発現は上皮細胞や線維芽細胞といった非血球系の細胞で発現が高いようです。関節リウマチ患者でIFN-βが検出されるとして、それは「線維芽細胞IFN」という旧名から予想されるように滑膜線維芽細胞から産生されているのでしょうか?また、産生刺激(産生のきっかけ)は一体何なのでしょうか?大変興味深い問題です。

我々が関節リウマチ(RA)患者さんの生物学的製剤投与前後の血清でサイトカインを定量してみたところ、治療前にIFN-βが検出された患者についてはTNF阻害薬が1年後も継続できている(=中止されていない)ケースが多いことが分かりました。これは先行研究の結果とは必ずしも一致していません。I型IFNが検出されるとRAの予後が良い、という報告も予後が悪いという報告も共にあるのです。前々回に紹介したFront Immunol. 2022の論文では活動性が高くなる、というストーリーでした。またSci Rep. 2022の方では、生物学的製剤投与後にINF-βが上がってきたら再燃のサインと考えるべき、ということでした。今の私の解釈は、IFN-βはTNF産生を促す効果があるのではないか、というものです。以前は全く違って、I型IFNとTNFとは互いに産生を阻害し合うという関係ではないかと考えていました。それでバランスが保たれているのでは?と予想していたのです。第92回でも書いたようにTNF阻害薬の副作用としてSLE様の症状が出ることがある(稀にですが)というのは「TNFによるブレーキが外れてI型IFNが過剰になる」と考えれば説明できます。しかしSLEに使われるI型IFNの阻害薬で(TNFが過剰になって)RAになってしまった、という話は聞きません。I型IFN阻害薬はむしろSLEの関節症状に比較的よく効くとされています。従って今考えているのは「TNFはI型IFNの産生を阻害するが、I型IFNはTNFの産生を促進する」という仮説です。これでも意外とバランスは保てるのかもしれません。実際私たちのデータでも血清中のIFN-βが測定できたRA患者の方が測定できなかった患者よりも血清TNFが高かったのです。TNFが高い患者の方がTNF阻害薬の効果が発揮されるということはありそうなことだと思いました。もちろん過ぎたるはなんとやらで、TNF濃度が高すぎるとTNF阻害薬でも十分に病勢を抑えられないことは考えられます。つまり「IFN-βのレベルによって結果(TNF阻害薬が効くか効かないか)が変わってくる」のかもしれません(血清中のIFN-βはかなり低い値であって、「測定感度を越えているか、越えていないか」の2択の判断しかできず、高値か低値かの解釈が難しい点は問題です)。また、寛解状態でもIFN-βが上がってくるとそれは「TNFも上がってくる前触れ」になるのかもしれません。そのような解釈を昨年Int J Rheum Dis.誌に発表しました(Saito et al. 2024)。ああでもない、こうでもないと頭の中で理屈を考えるのはとても楽しいことですが、なかなか仮説を「証明」する手立てにたどり着けていないのがもどかしいところではあります。

佐藤 浩二郎

私的免疫学ことはじめ (95)← Prev     Next→私的免疫学ことはじめ(97)