このAPC + T cell + 抗CD3抗体の培養系で、T細胞から出るIL-2とAPCから出るIL-12を測定したところ、T細胞をTregだけにするとIL-2は出ず、Th細胞だけだとIL-2は検出され、Treg : Th = 1 : 1にするとちょうど半分(平均)の量になります。一方、その時のIL-12産生を見ると、Treg : Th = 1 : 1の時のIL-12産生はTh細胞だけの場合に比べて激減しており、平均にはなりません。当初の「TregがAPCの機能を落としている」という仮説に合う結果です。

Th細胞は活性化するとCD40Lという分子を発現し、それがAPCを活性化させるという性質を持っているのですが、Tregは刺激してもCD40Lの発現が低いことが分かりました。また、これは以前から分かっていたのですが、TregはCTLA4という分子を発現していて、Th細胞よりもAPCと結合(相互作用)しやすい性質を持っています。

また、このCFSE染色により、「Tregは単独ではほとんど分裂しないのに、Th細胞があると結構分裂する」ことも確認されました。これはTh細胞が産生するIL-2のためと考えられます。Treg自体はIL-2を産生しないのですが、他人(人ではありませんが)の産生するIL-2に頼って増殖するのです。CD25(=IL-2高親和性受容体)を発現しているのは伊達ではありません。横着な生き方のようにも見えますが、重ね重ね、Tregは人間ではありません。「APCがTh細胞を活性化してTh細胞がIL-2を産生し、それによって増殖したTregがAPCと相互作用して活性化を抑制する」これは生体の恒常性を維持する(=ホメオスタシス)のに重要なシステムの1つである、「ネガティブ・フィードバックシステム」の1例と考えられます。

佐藤 浩二郎

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