破骨細胞はマクロファージ系の細胞なので、骨髄細胞や脾細胞に前駆細胞が含まれていることになります。ただし、破骨細胞分化を「助ける」働きをする細胞も必要になります。それが骨髄に存在するストローマ細胞や、骨形成に重要な骨芽細胞です。
マウスの骨芽細胞と、脾細胞や骨髄細胞を一緒に培養(共存培養)し、そこにビタミンDなどを添加すると、多核の巨大細胞が試験管内でも観察されるようになります(たとえばTakahashi N, Akatsu T, Udagawa N, et al. : Endocrinology, 123 : 2600-2602, 1988)。その細胞は酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(Tartrate- Resistant Acid. Phosphatase;TRAP)陽性であり、このTRAPは破骨細胞の重要なマーカーの1つです。更に試験管内で骨基質を吸収する能力があることが示されます(= pit formation assay)。
こういう培養系を一から立ち上げることがどれほど大変なことか。添加する試薬だって無数に考えられるわけですし、その濃度だって無限に変えられます。気が遠くなるような研究だと思います。
そういう訳で、ストローマ細胞や骨芽細胞は、破骨細胞の分化に必要な因子を産生していることが予想されます。この「破骨細胞分化因子(osteoclast differentiation factor, ODF)」の正体を明らかにすべく、国際的な激しい競争が始まりました。当然その因子は骨粗鬆症のような疾患の標的分子になりえるということもあり創薬上の価値も高いわけです。その因子の1つはM-CSFというサイトカインであり、これは単球系の細胞の生存・分化に必要なサイトカインなので、同様の性質を持つ破骨細胞分化に必要なのはさほど意外なことではありません。もう1つの因子がODFの本態とされることになりますが、1998年頃に相次いで同定され、同一分子であることが分かりました。それは1997年に報告されていたサイトカインRANKLだったのです。
この2つのサイトカインが分かったことで、破骨細胞の研究は加速します。
佐藤 浩二郎
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