自治医科大学アレルギー膠原病学では毎週医局員が交代で抄読会を行っております。

Joint Bone Spine 2016;83(5):485-9.” Trafficking of antigens from gut to sacroiliac joints and spine in reactive arthritis and spondyloarthropathies: Mainly through lymphatics?”を読みました。

 この論文は過去の基礎研究、臨床研究を元にしたreviewで、体軸性の関節炎の発症機序について述べています。樹状細胞に取り込まれた宿主と共存性を持つ腸内細菌が、腸間膜リンパ節で休眠状態でトラップされ、正常であればそこで他の有害な菌に対する抗菌物質を産生させてバランスを保つが、トラップが弱まって腸間膜リンパ節から中枢の方に逆行(bacterial trafficking)することで、リンパ管近傍の関節ー椎体、仙腸関節など-を中心に炎症が起きてしまう説について書いてあります。血行性だけでなく、リンパ管の流れからのアプローチによる研究で解明されていくことが今後の研究で期待されます。

 これまで、当科の疾患のいくつかが感染症が関係していることを過去に習ってきたことですが、日常診療で機序についてピンとこない感じでした (反応性関節炎はクラミジア等による性感染症で発症、およびSAPHO症候群もざ創に関係するプロピオバクテリウムが遠因となる など)。しかしこの論文に書かれているリンパ管を介しての視点によって、体軸型の関節炎について、具体的なイメージを膨らませやすくなったように感じました。

 

担当 M