RESEARCH

研究プロジェクト

温度環境による炎症細胞機能調節と代謝機能連関

呼吸により体内に取り込まれた酸素の約70%は、細胞内のミトコンドリアで消費されています。ミトコンドリアは酸素を用いて電子伝達系を駆動することで、エネルギー通貨であるATPを大量に獲得しています。反対に酸素が欠乏した環境ではミトコンドリア呼吸は抑制され、嫌気的解糖へとシフトすることが知られており、このような現象はパスツール効果と呼ばれています。私達はこれまでにHIF-1αシグナルがミトコンドリア呼吸を抑制することでパスツール効果を引き起こしていることを明らかにしてきました(Nature Com 2016;7:11635)。
 細胞内の酸素はATP産生以外にも様々な酵素反応等に利用されていますが、特にミトコンドリアおける酸素は主に熱産生に利用されています。体内の温度は必ずしも一定ではなく、例えば皮膚表面の温度は外気温による影響を強く受けています。熱産生は細胞外環境、特に温度変化に応答して組織や細胞が温度恒常性を維持するのに重要な役割を果たしていると考えられています。
 私達は最近、これら細胞外の温度環境がマクロファージ機能に大きな影響を与える事を見出しています。この中で特にミトコンドリア機能やマクロファージ細胞内代謝経路の調節機構に注目して解析を進めています。温度環境がどのように細胞機能に影響を与えるのか、その分子機構の解明を通じて、炎症学における新たな分野としての”Thermal-Immunology”の創成を目指して研究をスタートしています。