研究内容

私たちの目標は、神経系をモデルとして、生命現象における機能の裏付けとなる「かたち」の変化とその分子メカニズム、そしてその役割を理解することです。特に、細胞間コミュニケーションや細胞内のオルガネラ動態に注目しています。光学顕微鏡および電子顕微鏡レベルでの免疫組織化学や in situ hybridization、遺伝子改変動物やウイルスベクターを応用した細胞・器官の生体イメージング、走査型電子顕微鏡による大容量3次元微細形態解析技術、あるいは生理学的な解析を含めた多角的なアプローチを用いて研究を進めています。

(1) 髄鞘形成・機能・疾患の構造化と制御

神経系では、様々な細胞の相互作用が重要な役割を果たします。その中でも神経細胞の軸索の周りに形成される髄鞘は、神経線維の伝導速度を向上させ、軸索の生存にも重要な役割を果たしています。髄鞘の病的な喪失や形成不全は、様々な疾患に関連し、また最近の研究から、髄鞘は運動や生育環境などによって可塑的に形成・修飾され、学習や社会行動に影響することがわかってきました。髄鞘の形成や異常には多くの細胞間の相互作用が関わることから、これらの細胞の形態学的・機能的変化、そしてその制御方法について、明らかにしたいと考えています。

Review; Ohno and Ikenaka, Neurosci Res. 2019 Feb;139:48-57. doi: 10.1016/j.neures.2018.08.013.

マウス脱髄モデルにおける単球由来(赤)とミクログリア由来(緑)のマクロファージの電顕画像(上段)および核(中段)とミトコンドリア(下段)の3次元再構築像。Sci Rep (2017) 7:4942より修正・転載

(2) 細胞小器官の動態の制御メカニズムとその役割

細胞の中で多くの役割をもつミトコンドリアの動態の異常は、様々な疾患の病態生理に深く関わっています。また、ミトコンドリアはその他の細胞小器官と相互作用をし、こうした相互作用はお互いの機能的な調節に深く関わります。神経系をはじめとして、生体内におけるこれらのオルガネラの動態と相互作用の機序と役割の理解、その制御技術の開発を目指して研究を進めています。

Review; Sui et al., Adv Exp Med Biol. 2019;1190:145-163. doi: 10.1007/978-981-32-9636-7_10.