自家移植と同種移植はどうちがうの?
 造血幹細胞移植のうち、患者さんが自分以外の誰か(同じ種である人間=つまり同種)から造血幹細胞をもらうことを、「同種」造血幹細胞移植と呼びます。この際に造血幹細胞を提供してくれる人を「ドナー」といいます。
 一方、自分の造血幹細胞をあらかじめ採取して凍結保存しておいて、移植前処置を行った後に自分の体に戻す方法を「自家」造血幹細胞移植といいます。
 自家移植の方が副作用は少ないのですが、同種移植の場合、採取した造血幹細胞に腫瘍細胞が混じる心配がないことや、移植後にドナーさんの細胞の免疫力による抗腫瘍効果(GVL効果と呼ばれています)が期待できることから、腫瘍に対する効果は同種移植の方が強いと考えられています。

誰から移植するのがいいの? 
 HLA型が大事です。
 赤血球にABO型があるように、白血球にもHLA型という型があります。HLA型は自分か他人かを見分けるために重要で、HLA型が一致していると自分に近い存在だと判断します。ですので、HLA型が適合していると、ドナーさんの細胞の拒絶やGVHDなどの合併症が生じにくいということになります。これは、移植成績の向上につながります。

ドナーの選択順位
1位. HLA型の適合する同胞(兄弟・姉妹)、親子
2位. HLA型の適合する非血縁者(骨髄バンクのドナー)
3位. HLA型がひとつだけちがう血縁者
4位. HLA型がふたつかみっつちがう血縁者、非血縁者の臍帯血(へその緒の血)、HLA型がひとつだけちがう非血縁者

 ただし、HLA型がふたつかみっつちがう血縁者からの移植では、重いGVHDを予防するために工夫が必要です。私たちはアレムツズマブ(通称Campath-1H)という薬を使ってGVHDを予防する移植方法を研究しています。

骨髄移植と末梢血幹細胞移植  ドナーさんにとっても患者さんにとっても、それぞれいい点と悪い点があります。
 まず、ドナーさんにとっては、造血幹細胞の採取の方法が大きく異なります。
 骨髄移植の場合は、全身麻酔をかけて、うつぶせの状態で腸骨(骨盤の骨)にボールペンの針ぐらいの太さの針を何度も刺して骨髄液を吸引します。採取する骨髄液の量は、移植を受ける患者さんの体格によって変わりますが、500~1000mlになります。ですので、全身麻酔を受けなくてはならないこと、自己血貯血(自分の血を採って貯めておくこと。移植前に1~3回)をしなければならないというのが欠点です。また、腸骨に針を何度も刺すので、手術後に腰痛が短期間残ることがあります。非常に稀ですが、麻酔の重い副作用がでる可能性があります。入院期間は通常は4日間程度です。
 一方、末梢血幹細胞移植の場合は、白血球を増やすG-CSFという薬を皮下注射して、4~5日目から幹細胞の採取を開始します。採取は片方の腕から血液を採りだして、専用の器械で遠心分離して幹細胞だけをバッグに移し、残りの血液を逆の腕に戻すという方法で行われます。3~4時間ベッドの上でじっとしていなくてはならないというのが苦痛に感じられるかもしれません。これが1~3日間行われます。非常に稀ですが、白血球を増やす薬であるG-CSFの重い副作用がでる可能性があります。また、動脈硬化や自己免疫疾患をお持ちの場合にはこの方法で幹細胞を採取することはできません。入院期間は通常は6~8日程度です。
 次に、患者さんにとっては、移植する方法はどちらも同じで、点滴で体の中に注ぎこむだけです。
 末梢血幹細胞移植のほうが移植をしたあとに早く白血球が回復するという利点があり、無菌室で過ごす時間も短くなります。しかし、慢性のGVHD(「移植の流れと副作用」のページに説明があります)を発症する頻度が高くなるということが知られています。これは、移植後の再発が少なくなるという利点にもつながり、進行期の白血病などに対して移植する場合には最終的な成功率が若干高くなると考えられています。
 なお、臍帯血は誕生時に採取する必要がありますので、血縁者間の移植では通常は行うことはできません。

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骨髄採取

末梢血幹細胞採取