久しぶりに病棟に戻って、指導医をすることになりました。いわゆるオーベンです。オーベンというのはドイツ語で「上」を表す言葉で、こんな所に日本がドイツに医学を学んだ名残が残っているのかもしれません。それに対して研修医はネーベンというらしいですが、私の出身大学の附属病院では「中ベン」「小ベン(子ベン?)」の3段階に分かれていました。チューベン、コベンはもちろんオーベンのオーを「大きい」に見立てた造語です。

 私は中ベンまでしか経験しておらず、実はオーベンは初めてでした。しかし歳だけはオーベン相当になっていたので、今更「できません」とも言えません。

 臨床復帰数日目にして腰椎穿刺をすることになった日をよく覚えています。研修医の先生がなかなか成功せず、そういう場合は「手を替える」と言って、術者を交代した方が良い場合が多いのです。私は立場上、「こうやるといいんだよ」と教えてあげなければいけません。しかし私にとっては「腰椎穿刺なんて何年ぶりだろう・・・」というくらい久しぶりの手技なのです。内心はドキドキしていました。・・・一瞬で、というわけにはいきませんでしたが何とか無事済ませることができました。Tの門病院で修行していた時にUY先生の光速腰椎穿刺を見学したのが役に立ったのかもしれません(あまりにもローカルな話で誰にも伝わらないと思いますが)。あのような基本的な手技は、研修医の時の訓練が大事だと思います。意外と忘れないものです。自転車や逆上がりが、何年ぶりでもできるように。

ただし私の立場としては、臨床だけでなく、研究もしていく義務があります。テーマはいくつかもう決まっているものがありました。

1つは「Th17細胞の分化の過程で著増するような転写因子はあるのだろうか」という問題です。もう1つは「関節リウマチは本当にTh17型の疾患と言えるのだろうか」という問題です。1番目の方は、破骨細胞分化の時に著増していたNfatc1を意識したテーマでした。

佐藤 浩二郎

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