Th1細胞は、CD4陽性T細胞を刺激するときにIL-12を加え、またIL-4を中和するために抗IL-4抗体を加えることによって試験管内で分化させることができます。IL-12の代わりにIL-23を加えれば、IFN-γの代わりにIL-17を産生させることができるのではないか。またここで、抗IL-4抗体だけではなく抗IFN-γ抗体も加えるという工夫を付け加えました。これは必須ではないのかもしれませんが、IFN-γ自体にTh1分化を促進する働きがあるため(→ことはじめ8)、中和しておくにこしたことはないと考えていました。
実際、この培養法で、培養液中にはIL-17が検出できました。更に、このTh細胞を破骨細胞の分化系に加えると、「共存培養系」で破骨細胞分化が促進したのです。ただ、骨芽細胞が存在しない「単独培養系」にこのTh細胞を加えても破骨細胞分化を促進することは出来ませんでした。このことから、このTh細胞は、破骨細胞の前駆細胞に直接作用するのではなく、骨芽細胞に作用することで間接的に破骨細胞分化を促進するのではないかと考えられます。考えられるメカニズムとしては、IL-17が骨芽細胞のRANKL発現を誘導するのが最もシンプルなものでした。
我々はラボ内でこのTh細胞サブセットのことをThOcつまり破骨細胞(OsteoClast)を誘導するTh細胞と呼んでいました。しかし大きな懸念として、Th1/Th2パラダイムに反旗を翻すようなこんなコンセプトを、果たして信じて貰えるのか?ということがありました。そもそも自分自身も半信半疑だった訳です。
コンセプトの妥当性を補強する必要があると考え、いくつかの遺伝子改変マウスを海外などから手に入れて実験している最中に大変なことが続けざまに起きました。
佐藤 浩二郎
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