学位審査の主査の先生はIL-5の研究で名高いTK先生でした。先生の審査は厳しいと言われていました(そうでもないという話もありましたが)。学位審査は別名(thesis) defense と呼ばれます。文字通り防戦一方となるものです。自分の行った仕事の重要性を防衛できれば博士号が取得できるのです。ヨーロッパの大学だと審査に帯剣して臨む所もあるらしいですね。

当時、プレゼンテーションはスライド(一枚一枚手で触ることができる、「実体のある」スライドです。今の若い人は想像ができないかも)を使って行っていましたが、そのころようやくパソコンとプロジェクタをつなぐスタイルのプレゼンテーションも可能になってきました。私は両方を準備しましたが、当時使っていたソフトはPersuasionというMac専用のソフトで、その頃はパワーポイントなど無かったのではないかと思います。(Persuasionという名をすっかり忘れていて今調べましたが、なかなか調べられませんでした。Aldus社の製品ですが1994年にAdobe社に買収されたようです。)今は発表直前までスライドをパソコンで直すということができますが、当時のスライドはその場で修正することはできませんでした。学会会場に向かっている時点でまな板の鯉状態であり、その意味では昔の方が学会会場ではリラックスできたかもしれません。結局学位審査は昔ながらのスライドを使って発表することになりました。

とにかく一生の中でも指折りの緊張した時間ではありました。TK先生の試問が特別に
厳しいものとは思いませんでしたが、印象に残った質問があったので、次回に紹介します。

佐藤 浩二郎

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