胸腺とTRAILの関係について実験を途中で断念しました。その結果残された時間がかなり少なくなってきました。大学院というのは一応、博士号をとるための課程なのですが、急いで結果を論文にまとめないと期限内に審査に臨めません。流石に焦ってきました。NK細胞と言えば抗腫瘍活性が有名ですが、その一方で、I型IFNと言えば抗ウイルス活性が有名です。ウイルスを扱っているグループも教室内にあったことからマウスの感染実験を行って、抗TRAIL抗体を投与するとマウスが死にやすくなることを示しました。しかしall or noneの結果ではないので自分でも「そんなに大きな違いはないな」というのが正直な感想でした。でも贅沢は言えません。

ちゃんとした英語論文など書いたことはありませんでしたが、やってみるしかありません。抗TRAIL抗体を供与頂いた順天堂大学のYH先生にも草稿を持って行きました。驚いたことにすぐに草稿を読んで頂いたようで、真っ赤に修正されて戻ってきました。赤ペン先生か?というくらいです(いや、○研ゼミはやったことはないのですが・・・)。その修正を経て、ようやく論文の体裁が整いました。当時は驚きの気持ちが大きかったのですが、今になってみると、忙しい業務の合間に他大の院生の論文をチェックするのがどれほど大変なことだったかということが分かります。本当にありがたいことだったと思います。自分もそのような立場になった時に同じようなことができるのか、自問せざるをえません。

最終的に、論文はEuropean Journal of Immunology誌に掲載されました。この結果を引っさげて学位審査に挑むことになります。

佐藤 浩二郎

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