4年間「○の穴」のような所で基礎研究ばかりやっていたので、そろそろ臨床のトレーニングに力を入れるべきと頭では分かっていたつもりだったのですが、4年では十分ではなかったのかもしれません。

そういう訳で、大学院の先輩でもあるTH先生が新しく医科歯科で研究室を立ち上げるという話を聞いたときに、すぐにスタッフとして立候補したのです。

ラボのテーマは主に破骨細胞という細胞でした。この細胞は多核のマクロファージ系の細胞で、骨基質を吸収する作用を持つ唯一の細胞と考えられています。骨は一見安定した組織に見えますが、実際には常に吸収され、同時に修復されるという「リモデリング」が行われています。リモデリングが起こらないと骨は微少な損傷が蓄積して脆くなってしまうのでしょう。また、骨はカルシウムの宝庫であるため、血中のカルシウム濃度を一定に保つために骨はCaの重要な供給源の1つになっています。骨基質を吸収するのが破骨細胞で、骨基質を作るのが骨芽細胞という細胞です。破骨細胞の機能が亢進すると骨粗鬆症になり、また破骨細胞の機能が損なわれると、これは生まれつきの場合が多いのですが、大理石骨病という状態になります。骨にある空洞、骨髄腔が骨基質で満たされてしまう状態です。

 従って、破骨細胞の機能と骨芽細胞の機能はバランスを保つ必要があります。実際、破骨細胞機能を低下させる薬剤であるビスフォスフォネートは骨粗鬆症の治療薬として広く用いられています。

 面白いことに破骨細胞はin vitroつまりプレート上で分化させることができます。プレート上で前駆細胞が融合して、巨大な細胞になるのはとても印象的な光景です。この分化システムの開発には日本人研究者が深く関わってきました。

佐藤 浩二郎

私的免疫学ことはじめ (24) ← Prev     Next →私的免疫学ことはじめ (26)