大学病院で1年、虎の門病院で2年研修の後に免疫学の大学院に進学しました。
平成10年のことです。

そこでは正に興味のあったTh1/Th2分化の研究が進行していました。大学院の先輩
であるS藤健O先生のテーマです。縁あってというべきか、今の医局でも大変お世話になっている先生です。そもそもこの伏せ字に意味があるのかどうか・・・

免疫学教室の教授はサイトカインを世界で初めてクローニングしたTT先生(このイニシャルも意味があるとは思えませんが)であり、IFN-βの遺伝子配列を決定しました。
それに留まらず、IFN-βの発現を制御する転写因子を探してIRF (interferon regulatory factor)-1, IRF-2を見出しました。その後IRFファミリーはIRF-9まで家族が増えました。IFN-βの制御を実際にしているのは実はIRF-3とIRF-7であるということもTT研から報告されましたがそれは後の話です。

IRF-1は多彩な機能を持っており、IRF-1のノックアウトマウスの表現型の1つにTh1分化の障害がありました。Th1/Th2バランスがTh2に偏っており、あまりIFN-γが産生されず、逆にIL-4の産生が強いのです。

研究の結果、S藤先生達は、Th1分化に必須のサイトカインであるIL-12がIRF-1ノックアウトマウスでは産生されていないことを見出しました。つまりIRF-1はIL-12発現を制御する転写因子だったのです(Immunity 1997, 6: 673-679)。素晴らしい研究で、とても羨ましく思ったことを覚えています。しかし私自身がTh1/Th2分化の実験をすることになったのはかなり後の話です。私は興味を持っていたT細胞ではなく、NK(ナチュラルキラー)細胞研究に手を染めることになりました。

藤 浩二郎

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