NK細胞はウイルス感染細胞や癌細胞を排除する能力を持つ細胞です。キラーT細胞と異なり「鍵と鍵穴」のような厳密な抗原認識受容体は持っていません。しかしキラーT細胞が免疫応答をするまでに時間がかかる(細胞分裂で増殖する必要があるなどの理由で)のに対して、即時に攻撃をかけられるという特徴があります。これはNK細胞や顆粒球、マクロファージのように「自然免疫」を担当する細胞の特徴でもあります。一方T細胞やB細胞のような「獲得免疫」系の細胞は、初回の応答に時間がかかります(ただし2回目の応答は1回目よりもスピードアップします。これは獲得免疫系の特徴である「免疫記憶」のためです)。

当時TT研ではNK細胞に関する大きな発見がありました。IRF-1ノックアウトマウスにはNK細胞がいないのです。その時期にポスドクとして研究室におられたOK先生はマウスの骨髄移植実験を通じて、これがNK細胞自身の問題ではなく、外部環境のせいであることを示し、更にその外部環境の本体が「IL-15の欠損」であることを示しました。サイトカインIL-15を外から加えてやるとIRF-1を欠損したNK細胞も分化可能になるのです。つまり、IRF-1はIL-12だけではなくIL-15の産生にも必須な転写因子であることが分かりました。そしてIL-15はNK細胞の分化に重要なサイトカインだったのです(Nature 1998, 391: 700-703)。

マウスの骨髄移植・・・そんなことが出来るのか、と驚きました。そして実験結果のクリアカットなことにも感銘を受けました。こういう実験も是非やってみたいものだと思いましたが、実際にマウスの骨髄移植実験を自分で手がけるのは、その10年くらい後のことになりました。

佐藤 浩二郎

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