ヒトTh1/2/17応答の定量で、すぐに思いつくやり方は、ヒトの血清をサンプルとして、それぞれのサブセットの産生する代表的なサイトカインを測定してやる、というものです。代表的なサイトカインと言えば、Th1ならIFN-γ, Th2ならIL-4, Th17ならIL-17 というのはあまり異論の無いところだと思います。そこでEnzyme-Linked Immuno Sorbent Assay (ELISA)という方法でそれらのサイトカインを試しに測定してみました。すると意外なことに、ほとんどのサンプルでその3種類のサイトカインは「測定感度以下」だったのです。3種類共、とは・・・。

 とにかくこれではダメだということが分かりました。次の手は何でしょう。有名なホトトギスの歌に例えれば

①測れないなら 殺してしまえ サイトカイン
②測れないなら 測ってみよう サイトカイン
③測れないなら 測れるまで待とう サイトカイン ということになるでしょう(?)。

①はちょっと意味不明なので置いておくとして、③は意外と良い作戦なのかもしれません。技術革新は結構早い分野ですし、なんと言っても家康公の実績があります。しかしいつまで待てば良いのか分かりませんから、現実的には「とりあえず②で」ということになります。

すぐに思いつくのはフローサイトメトリーを使う方法です。血清ではなく、末梢血の単核球を回収してきて、刺激した後で細胞の表面マーカーを染め、更に固定して細胞に穴を開けることで、細胞内のサイトカインを免疫染色することを可能にします。Intracellular stainingという方法です。あとは機械にかけるだけ。とは言っても、結構手の掛かる方法です。血清はいったん分離すれば凍結しておくことにより結構保存がききます。まあ細胞も凍結する手があるようですが、その過程で細胞にダメージが加わるのは必至です。生ものとして処理する必要がありました。

 当時私が使っていた機種はFACSCantoというもので、使い勝手は良いと思っていました。しかし4色くらいしか染め分けられなかったと思います。CD4陽性細胞(=ヘルパーT)とCD8陽性細胞(=キラーT)に染め分けて、あとは細胞の内部のIFN-γおよびIL-4あるいはIFN-γおよびIL-17を染め分けるというやり方でした。

佐藤 浩二郎

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