試験管内で刺激した単核球の培養上清中のサイトカインが、どうして予想と全く異なる結果を示したのか。つらつら考えてみたのですが、1つの理由は、刺激の種類がPhorbol myristate acetate (PMA) + ionomycinだったことではないか、と思い至りました。この2つの試薬はT細胞の刺激によく使われます。関節リウマチのように、自己抗原がはっきり分かっていない疾患では、疾患特異的な抗原を使ってT細胞を刺激することは困難です。そのためにPMA + ionoのような非特異的な刺激を入れる以外の方法を思いつかなかったのですが、これは非常に強い刺激です。かなり以前に聴講したシンポジウムで、演者が「PMA + ionoだとエジプトのミイラ由来の単核球からもサイトカインが出るんだよ」というようなことを言っていました。もちろんそれは冗談だったはずですが、全くウケていなかったのを気の毒に思ったことを覚えています。(そのことだけ覚えていて肝心の話の内容を全然覚えていません。) まあ、それほど非生理的な刺激だということです。また、末梢血中のリンパ球の中で、ダイレクトに関節リウマチの病態に関連している細胞の割合はどの程度でしょうか。サンプリングしたのが関節局所であれば頻度は高いかもしれません。しかし末梢血だとかなり頻度は低いのではないかと想像されます。関節リウマチ患者であっても「免疫応答が全て関節滑膜に振り向けられている」訳ではありません。常に身体に侵入してくるウイルスなどの病原体にも応答しなければいけないはずです。ですから、本当は関節リウマチに関係する応答を検出したかったのですが、実際にはかなり薄まった応答、言い換えれば「ノイズの大きなシグナル」を検出しようとしていたのだと思います。

 とは言っても、予想の「逆」だったことはどう説明すれば良いでしょうか。患者の応答の方が比較対照(コントロール)の応答より低かったのです。

佐藤 浩二郎

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