私がとても不思議に感じたのは、この成人発症Still病(AOSD)患者が「血清IL-18が高値なのに、IL-6経路を抑制しておけば何の自覚症状も示さなかった」という事実です。IL-6の下流にIL-18があるということはなさそうだ、ということは分かりました。しかしIL-18は元々、IL-12と共働してIFN-γを誘導する因子として同定されたサイトカインです。IL-18が高値なのに悪さをしないということがあるものなのか・・・。他にも謎はあります。AOSDの治療薬として、海外ではIL-1の阻害薬が使われており、かなり効くようなのです。日本では適応がなく、非常に高価で限られた疾患(たとえば家族性地中海熱)でしか使われない、いわゆる「オーファン・ドラッグ」であるため私自身は使ったことがないのですが、IL-6阻害薬が著効を示し、しかもIL-1阻害薬が著効を示すとすると、これらのサイトカインの位置関係はどうなっているのか?またIL-18とIL-1との関係はどうか?この2つのサイトカインは非常に近縁であることが分かっています。 

AOSDに対するトシリズマブの有効性は広く知られるようになり、最近ではAOSDに対する保険適応もちゃんと通るようになりました。血球貪食の副作用には気をつけなければいけませんが、私自身はまだその経験はありません。

 私は埼玉医大からこの患者さんのケースを報告したのですが、私の知る限り、トシリズマブを最初にAOSDに使ったのは、実は自治医大、すなわち当科のようです。私は気づいていませんでしたが、ある総説に載っていて驚きました。トシリズマブやその商品名であるアクテムラという言葉が使われていなかったので、以前調べたときに検索で引っかからなかったのですが(まだ開発中の薬剤だったのでトシリズマブではなく、”MRA”というコードネームのような表記がされています)、2002年のArthritis and Rheumatism誌に報告されていました。世の中狭いものだと思います。

 色々な謎の一環に迫れないものかと思い、in vitro(試験管内)の実験を細々とやっていました。注目したのは抗炎症性サイトカインとして知られるIL-10です。

佐藤 浩二郎

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