IL-10は抗炎症性サイトカインとしてTGF-βと並んで有名なサイトカインですが、AOSD患者の血清でも測定できることがしばしばあります。炎症を抑えるために産生されているのだろうという素直な(ナイーブな)仮説を立てました。IL-6の働きに対抗しているのではないかということです。それを検証するためにナチュラルキラー(natural killer, NK)細胞に注目しました。この細胞は「自然免疫系」に属する細胞と考えられています。免疫担当細胞は、抗原特異性が高く、免疫記憶を維持できるような「獲得免疫系」の細胞と、特異性が低く免疫記憶も基本的には持たないと考えられている「自然免疫系」の細胞に大別できます。前者の代表はT細胞とB細胞であり、後者には単球/マクロファージや顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、NK細胞などが含まれます。AOSDは最近、自己免疫疾患というよりも自己炎症性疾患ではないかと考えられるようになってきました(自己炎症性疾患は獲得免疫系よりも自然免疫系が大きな役割を果たす疾患の一群です)。実際、AOSDでは獲得免疫系の関与を強く示唆する「自己抗体」が知られていません(自己抗体は、例えば関節リウマチであればリウマトイドファクターや抗CCP抗体です)。そこでNK細胞で実験することにしました。NK細胞は活性化するとインターフェロン(IFN)γを産生します。予想したのは「IL-18で刺激するとIFN-γを産生し、IL-6を上乗せすると更にIFN-γが増えるだろう、そしてIL-10がそれを阻害するのではないか」と予想して実験してみました。すると・・・驚くほど異なる結果が出ました。

佐藤 浩二郎

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