さて、TRAILのプロモーターにはISRE配列がありそうですが、本当にIRFがくっつくのかどうか、検証する必要があります。TN先生がつきそうだとおっしゃった、では、ラボの中では良くても論文レベルでは通用しません。大学院生レベルでもできる比較的容易な方法としてルシフェラーゼアッセイがあります。ISRE配列(仮)をふくむ配列と、ルシフェラーゼ(ホタルの蛍光を司る酵素)遺伝子を繋げて、それを培養細胞の中に入れる(トランスフェクション)。その細胞をI型IFNで刺激し、その結果IRF-9がISRE配列(仮)に結合するとルシフェラーゼ遺伝子が読まれて酵素蛋白ができる。細胞を回収して溶かし、ルシフェラーゼの基質(ルシフェリン)を加えると、誘導されたルシフェラーゼの量に応じて蛍光を発するのでそれを定量する。という流れです(蛍光は、見て分かるほどの強いシグナルではありません)。遺伝子を切ったり貼ったりするだけでとても楽しかったことを覚えています。

出来上がった遺伝子(環状のDNA=プラスミド)を入れる培養細胞については、I型IFNに反応する細胞であれば何でも良いのですが、TT研では”IRF-9を欠損した線維芽細胞”も利用できたので、「野生型の細胞の場合はI型IFNの刺激で蛍光シグナルが出るが、IRF-9欠損細胞では刺激しても蛍光が出ない」ことを示せば「確かにIRF-9が関係しているんだなあ」と説得力が上がります。

佐藤 浩二郎

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