ルシフェラーゼアッセイを体験したすぐ後で、大学生のKS君がラボに遊びに来ました。フリークォーターという実習の制度で夏休みを中心とした活動だったと思います。ジャニーズの長瀬君に似たイケメンという話でしたが、私は当時長瀬君という人の顔を知らなかったので「ふーん」という感じでした(今は分かります。娘と一時「鉄腕ダッシュ」を見ていたので。その後娘の嗜好が「もやサマ」に移ってしまったので見なくなりました)。イケメンだったのは確かです。

話がすぐ逸れてしまいますが、取り組んだのはIL-12受容体のプロモーター解析です。というのは第3回で紹介したImmunity 1997, 6: 673-679には未解決の問題があったのです。確かにIRF-1欠損マウスではIL-12の産生が下がっているのですが、IL-12を補ってもTh1分化が完全には回復しないのです。つまりIL-12応答にも障害がありそうなのです。受容体に注目するのは当然の成り行きでした。Th1細胞の出すIFN-γは、Th1分化を促進する働きがあります。IFN-γ刺激で誘導される重要分子の1つにIRF-1がありました。そこで立てた仮説は、「IFN-γ刺激で活性化されたIRF-1がIL-12受容体のプロモーターにあるISRE配列に結合し、IL-12受容体の発現が増えることでますますTh細胞がTh1細胞に分化しやすくなる」というものでした。このような「ポジティブ・フィードバック」は細胞分化の時によく見られる仕組みです。

オンラインで探してみると、IL-12受容体(2種類の分子によって成り立っているがその内”β1鎖”と呼ばれる方の分子)の遺伝子近傍の配列が既に載っており、そこには予想通りISRE配列がありました。TRAILのISREよりももっと「それらしい」配列でした。TRAILの時は12/14位の一致率でしたが今回は14/14のフルマッチです。そこで型どおりにルシフェラーゼアッセイをしたのですが、習ったばかりの技術を得意げに後輩に指導する先輩・・・今思い出しても顔から火が出そうです。が、屋根瓦式研修というのはそんなものかもしれません。いずれにしろ、やってみたかったTh1/Th2研究にようやく触れられて、ある程度の満足感を得ることができました。論文としてはその後大学院に進学したKS君が粘り強くまとめて、およそ6年後にpublishされました(Nat Immunol. 2008, 9: 34-41)。

佐藤 浩二郎

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