センターのご案内

センターの特色

ドクターに聞く


第1回 自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科ならではの「強み」とは



第2回 高度・先端技術を提供し地域に貢献する「一般・消化器外科」



第3回 低侵襲手術・他科との連携・先進技術の導入で目指す、患者さんのQOLを最大限に考えた治療


泌尿器科 准教授 宮川友明

自治医科大学附属さいたま医療センターの医師が、医療現場の実態や最新研究結果を分かりやすく解説する連載 “ドクターに聞く”。 第3回でご紹介するのは泌尿器科です。

科長である宮川准教授に、自治医科大学附属さいたま医療センターの泌尿器科を選ぶメリットを伺いました。

そもそも泌尿器科とは?

泌尿器科は、尿路や男性生殖器の疾患・異常を扱う診療科です

超高齢化社会の進む日本において、泌尿器科のニーズは年々高まっています。2015年には、前立腺がんが「男性の人口10万人あたりの罹患数」で1位となりました。

泌尿器科は非常に専門性の高い外科系診療科であると同時に、排尿障害や男性更年期障害を含めた内科的診療まで幅広い領域をカバーする診療科として発展してきました。



対象疾患領域は、泌尿器がん(前立腺がん、腎がん、尿路上皮がん、精巣がんなど)、腎移植や人工透析などの腎疾患、尿路感染症、前立腺、副腎、精巣などに関連した内分泌疾患、排尿障害、男性更年期、生殖医療、小児泌尿器科など多岐にわたっています。

「多様性」と「高い専門性」が泌尿器科の大きな特徴と言えるでしょう。




ロボット支援手術・腹腔鏡手術など、低侵襲手術の推進


当科では患者さんへのメリットを最大限に考え、積極的に低侵襲手術を推し進めています。



ひとこと解説 ~低侵襲手術とは?~


低侵襲手術とは?
従来行われていた手術に比べて「患者さんの体に対する侵襲(負担)を減らした、体に優しい手術」のことです。
一般的に「傷が小さく痛みが少ない」・「開腹手術と比較して回復が早い」など、患者さんへのメリットが大きいと考えられています。
泌尿器科分野での低侵襲手術として、腹腔鏡下手術とロボット支援手術があります。

◆ 腹腔鏡下手術
お腹の皮膚に1-2cm程度の小さな穴を数箇所開け、腹腔内への炭酸ガス注入により手術操作を行うスペースを確保しながら、腹腔鏡用手術器械を用いて行う手術です。
切開した穴からカメラや細い手術器具を挿入し、拡大した画像を大きなモニターに映しながら臓器摘出などを行います。なお臓器を体外へ摘出する際には、臓器の大きさに合った切開創が必要になります。
現在は年間50件前後の腹腔鏡手術を行っています。


◆ ロボット支援手術
腹腔鏡手術は傷を小さくして患者さんへの負担を少なくしますが、その分、鉗子の操作には技術を必要とします。その欠点を克服したのがロボット支援手術です。術者は、拡大された立体3次元画面を見ながら手術を行います。ロボットの操作アームは非常に器用に動き、狭い空間での可動域が広いため、腹腔鏡の器具に比べて確実・精緻な手術操作が可能です。これらの特徴を生かして、より細かい、低侵襲の手術を行うことができます。

泌尿器科で最も行われている、前立腺がんに対する手術である「ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術」は、近年は前立腺全摘除術の約80%以上を占めています。
私は日本の泌尿器科医の中ではかなり早い時期からロボット支援手術に携わっており、前任地で2011年から手術支援ロボットda Vinciを用いた手術を行っています。
現在は年間150件前後のロボット支援手術を行っています。






当科では2014年より腎細胞がん・腎盂尿管がん・副腎腫瘍において、腹腔鏡下手術を施行しています。

手術支援ロボットdaVinci Siを用いた手術は、2015年より前立腺全摘除術(RARP)、2018年より膀胱全摘除術(RARC)、2019年より腎部分切除術(RAPN)手を行っています。2020年3月には、当科でのロボット支援手術件数が500件に到達しました。当院では日本泌尿器内視鏡学会認定ロボット支援手術プロクターの指導下に手術を行っており、安全で確実な手術を心がけております。

一方、病気の種類や進行度によってはどうしても開腹手術が必要になる場合もあります。
開腹手術において体に優しい手術を実現させるためには「できるだけ小さな傷で、出血量を減らし、手術を短縮する技術」が必要です。これはかなり難易度が高く、経験が豊富で高い専門性を持った医師やスタッフが必要となります。






腎腫瘍などに代表される、他科との連携による総合力の高さ


腎細胞がん・腎盂尿管がんなど、腎臓に関しては特に、ほぼ全ての治療が可能です。中でも腎細胞がんに対する治療は埼玉県内でも症例数が比較的多いことが特長です。

他科との連携が取れた総合力の高さも、患者さんにとっては大きなメリットと言えるでしょう。

例えば下大静脈腫瘍血栓を伴う進行性腎細胞がんに対しては、消化器外科・心臓血管外科・麻酔科といった他科との連携を図って安全な手術を心がけています。
また副腎腫瘍では、内分泌科と良い連携を取っています。他病院の泌尿器科が当院の内分泌科に質問することがあるほどで、スムーズな連携による恩恵は計り知れません。

科が違っても、患者さんにとっては同じ医師。従来の各科別・縦割りの弊害を取り除いたスピード感のある診療を心がけています。


また科長であっても周りとフラットに接し、意識して「何かあったら遠慮なく聞ける環境」を作り出しています。トップから若手まで、科全体の医師の実力を底上げする心意気で取り組んでいます。
安心安全なだけでなく、大学病院ならではの「質の高い医療」を提供できている現状を誇りに思います。

先進的な技術も取り入れ、患者さんに寄り添う診療を目指す

病気の治療ももちろん大切ですが、患者さん自身のQOL(クオリティ オブ ライフ、「生活の質」「人生の質」の意)も重要です。

前立腺生検や各種手術においては、抗凝固薬・抗血小板薬といった心臓疾患・脳血管疾患のために内服されている薬剤を極力中止せず、また中止する場合も最小限にしています。

尿禁制(排尿を自分の意図した通りコントロールでき,尿失禁のない状態)も良い数字が出ています。また時代と共にアップデートされる先進的技術もいち早く取り入れ、患者さんの選択肢を増やす努力をしています。

術後尿失禁の少ない「レチスウ腔温存ロボット支援前立腺全摘(RS-RARP)」もその1つで、 2017 年から術式を導入し 100 例近くの手術を行ってきました。

切除断端陽性が少し多くなるデメリットがありながらも、70-80%の患者さんが手術終了 1 週間後の尿失禁がほとんどない状態・失禁があっても回復が早い傾向にある、という大きなメリットがあります。この手術の適応となるかどうかは前立腺がんの部位や大きさなどで異なりますので、詳しくは担当医にご相談下さい。

膀胱がんでやむなく膀胱全摘除術し尿路変更を強いられる患者さんに対しては、尿路変更について自排尿式の尿路変更術(回腸新膀胱)を含め、患者さんのQOLに合わせた術式を行うように努めております。


泌尿器科の外来は、前立腺肥大症・前立腺がん・膀胱炎・膀胱がん・腎がん・尿路結石・尿失禁など、様々な疾患の患者さんが受診されます。
中でも前立腺がんは高齢者のがんであり、種々の合併症を有している方も多いのが現実です。手術療法・放射線療法・ホルモン治療・化学療法といった治療法を充実させ、それぞれの患者さんに適した選択ができるように工夫しています。


今後も「病気を治す」視点だけでなく「患者さんの生活の質の維持・向上」の視点を持ちながら、患者さんに寄り添う泌尿器科を目指していきます。




泌尿器科
准教授 宮川友明

筑波大学2000年卒。筑波大学麻酔科研修後、筑波大学腎泌尿器外科所属。
同大学関連施設での勤務を経て、2014年より当院講師・科長、2019年より現職。

日本泌尿器科学会専門医・指導医、泌尿器内視鏡技術認定医、
ロボット支援手術プロクター、がん治療認定医機構がん治療認定医、麻酔標榜医

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