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 本研究室では、新たな自然炎症経路である“インフラマソーム(Inflammasome)”を軸に、有効な治療法のない様々な疾患の病態を解明し、新たな治療法を開発することを目標に、疾患横断的な研究を行っています。

【研究の背景】
 心血管病や生活習慣病と聞かれて皆さんが思い浮かべるのは、狭心症や心筋梗塞、動脈硬化、メ タボリック症候群(いわゆる“メタボ“)、肥満、高血圧、糖尿病などでしょうか。これらの病気はそれぞれいろいろな原因で生じますが、最近、これらの病気が起こってくる共通の機序に「炎症 」が重要な役割を果たしていることがわかってきました。「炎症」とは、「感染や異物といった有 害な刺激が生体に入った場合に起こる局所反応」ですが、感染や異物の関与しない心血管病や生活 習慣病で、どうして炎症(無菌性炎症反応といいます)が起こるのかは、よくわかっていません。 私たちの研究室では、この無菌性炎症がどのようにして起こってくるのかを研究しています。そして、その分子機序を解明することで患者さんへの治療に応用できるのではないかと考えています。

【インフラマソームという概念】
 私たちは最近、心血管病で生じる初期の無菌性炎症が、インフラマソームと呼ばれる新しい自然 炎症経路を介していることを見出しました。インフラマソームとは、いろいろな炎症刺激で形成さ れる細胞内の分子複合体であり、その活性化によってカスパーゼ-1というインターロイキン (IL)-1βの成熟化を司る酵素が活性化されて炎症が惹起されます。IL-1βと言えば、炎症性サイ トカインという炎症の原因因子の代表格であり、これが放出されると強い炎症が起こります。特に 、その後の研究で、これまでなぜ炎症が起こるのかが不明であった痛風やアスベスト肺、珪肺症での炎症が、このインフラマソームを介していることが報告されたことから、心血管病や生活習慣病での無菌性炎症もこの新しい炎症経路を介しているのではないかとの仮説を立て、研究しています 。

【これまで明らかとしてきたこと】
 これまで、インフラマソームの各構成分子を欠損させたマウス(ノックアウトマウス)を用いた研究により、心筋梗塞や動脈硬化、血管傷害、大動脈瘤、メタボといった病気の病態にインフラマ ソームが働いており、その制御が新たな治療に繋がることを報告しています。特に、心筋梗塞のモデルでは、その無菌性炎症がインフラマソームを介していることを初めて示し、これまで白血球( 炎症細胞)と考えられていた炎症の場が、実は非炎症細胞である心線維芽細胞であったことを明らかとしました。なかでも、心臓では心筋細胞と比べて線維芽細胞は完全な脇役でしたが、炎症においては主役を演じていることを示したことは、とても重要な知見と考えられています。




【今後の展望】
これらの知見から、私たちは最近、炎症を生体におけるストレス反応の破綻・異常と捉えて「ス トレス誘導性炎症仮説」を提唱しています。そして、これによって誘導された無菌性炎症が、心血 管病や生活習慣病を含む様々な非感染性疾患(NCD:Non-communicable Disease)を引き起こしているのではないかと考えています。現在、このストレス誘導性炎症仮説を検証しつつ、これらの炎症を起こす責任ストレス本体の解明や、他の様々な疾患でのインフラマソームの役割、インフラマソームの制御による新たな治療法の開発などに取り組んでいます。

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