形成外科学部門

リンパ浮腫外来

特色

当科では各種画像診断を含むリンパ浮腫の正確な診断を行ったうえで、医師・医療リンパドレナージセラピスト・看護師・理学療法士・作業療法士によるチームでリンパ浮腫に対する保存的治療と外科的治療を組み合わせた積極的な治療を行います。また、0.5mm未満の超微小血管吻合技術(スーパーマイクロサージャリー)を用いた低侵襲外科治療であるリンパ管細静脈吻合術(Lymphaticovenular Anastomosis: LVA)やリンパ節リンパ管移植術などのリンパ浮腫外科治療を行うことも特色です。これまで治療が難しかったリンパ浮腫、リンパ関連疾患を、超微小外科技術、また再生医療技術なども用いることで、治療を目指します。特に外科的治療においてはこれまで500例以上の症例経験の豊富な医師が担当します。
国内のみならず海外からも患者・医療従事者を広く受け入れて診療いたします。今後のより良いリンパ浮腫診療のために臨床研究や基礎研究にも力を入れております。また当院では、リンパ関連の様々な診断装置、治療法を実施しておりますので、他の医療機関で診断や治療が難しいと言われている患者さまも、あらためて治療方針を考え直すことができます。

パンフレットはこちら

リンパ浮腫とは?

乳がんや子宮癌手術後の腕や脚のむくみ、お困りになっていませんか?
がんの治療では様々な治療法が行われますが、「リンパ浮腫」という腕や脚のむくみを引き起こすことが分かっています。体の中には、動脈と静脈のほかにリンパ管と呼ばれる管があります。リンパ管は、全身の皮膚のすぐ下に網目状に張り巡らされていて、このリンパ管の中にはリンパ液という液体が流れています。
リンパ浮腫とは、異常に貯留したリンパ液により浮腫をきたす疾患のことで、明らかな原因がなく発症する原発性リンパ浮腫と、がん切除後などに発症する二次性リンパ浮腫があります。日本においてはがん治療後の二次性リンパ浮腫が多くを占めています。
二次性リンパ浮腫は、婦人科がん(子宮がん、卵巣がん)や乳がんなどの治療のためにリンパ節郭清、センチネルリンパ節生検、放射線照射を受けた場合、治療後に下肢や上肢のむくみとして自覚されます。脚や腕の付け根にあるリンパ節が傷害されたために、リンパ液が体幹に戻れなくなって脚や腕に貯まってしまった状態です。
リンパ浮腫ではリンパ流のうっ滞により局所免疫能が低下し感染・炎症を生じやすくなります。外傷などの明らかな原因がなくとも、体調がすぐれない時などに患肢が熱をもち赤くなる蜂窩織炎を生じやすくなり、それ以降さらに蜂窩織炎を発症しやすくなる、という悪循環になります。


蜂窩織炎

治療法

従来から行われている保存療法としては、患肢挙上、安静、生活指導、利尿剤などの薬物投与、空気圧マッサージや弾性ストッキングを用いた治療があります。ただ、リンパ浮腫の患者さんたちは弾性ストッキングなどの圧迫療法や安静以外に有効な方法がないという状況に長らく置かれてきました。
このリンパ浮腫に対して、静脈を利用して脚や腕からリンパ液を静脈に戻すリンパ管細静脈吻合術(LVA)という手術があります。脚や腕の皮膚を2~3cm切開して太さ0.5mm前後のリンパ管を探し、顕微鏡で見ながら近くの静脈につなぎます。

リンパ管静脈吻合術(LVA:Lymphaticovenular anastomosis)

この手術法は、足のむくんだ部分のリンパ管を静脈に吻合することで、うっ滞したリンパ液を中枢方向へ流そうという方法です。0.5 mm程度の細いリンパ管を手術用顕微鏡の下で静脈に吻合するので高度な技術を必要としますが、1か所が3cm程度の傷で済むため負担の少ない手術です。
よい手術を行うために、当科では術前にICG蛍光リンパ管造影によるリンパ管のマッピングを行い、できる限り良いリンパ管を見つけておきます。吻合に用いる手術器具や針糸なども専用の繊細なものを使用するため、スーパーマイクロサージャリーと呼ばれる手技が必須となります。基本的には術後1週間の入院ですが、状況により短期入院あるいは入院なしの外来手術で行う場合もあります。


LVAの手術

リンパ節リンパ管移植術
リンパ浮腫の手足に健康なリンパ節リンパ管を移植して、リンパの流れを改善しようとする治療です。移植された部位でリンパ節が生着すると、周囲の組織から新生リンパ管を介してリンパ液を吸収するようになります。LVAによる治療効果が少ない進行例でも効果が期待できる治療法です。


リンパ節リンパ管移植時

脂肪吸収術
美容外科で行われている手術手技である脂肪吸引術を取り入れたものです。全身麻酔に加え、希釈した局所麻酔を併用して術中の出血と術後の痛みを軽減するようにしています。
とくにリンパ浮腫の手足に対する脂肪吸引術は、脂肪が硬く吸引しにくかったり、術後の腫れが長引いたりすることがあり、リンパ浮腫治療に特化したチームによる特別なケアが必要になります。

大事なことは、むくみが生じたら直ちに治療を開始することです。放置していると、皮膚と脂肪が炎症を繰り返して硬くなり、ついにはリンパ管も詰まって閉塞してしまいます。このような状態になると元の状態には戻りませんので、早期の治療開始が非常に重要です。

当院では、患者さま毎の病態に併せて、リンパ管静脈吻合術、リンパ管リンパ節移植術、脂肪吸引術を選択しております。また、保存的治療について、スキンケア、医療リンパドレナージ、圧迫療法、圧迫療法下での運動療法を行います。さらには、減量も重要な要素です。これらの基本的治療法がスムーズに継続できるように、患者さんを囲む治療協力者を含めた環境作りに力を入れています。

再生医療

当科では、再生医療の技術を用いたリンパ管の再生によるリンパ浮腫治療にも力を入れております。脂肪の中に存在する幹細胞が関与するリンパ管再生の研究も行っております。


脂肪組織の分析

検査法

リンパシンチグラフィ・SPECT-CT・ICGリンパ管造影を適宜組み合わせて包括的にリンパ浮腫の評価を行った上で、治療方針を決定しております。


ICGリンパ管造影所見

予約方法(初診)

当院では月曜日・金曜日の午前にリンパ浮腫外来を設けています。自治医科大学形成外科リンパ浮腫外来では、初診患者さまの予約受付を次のとおり行います。完全予約制ですので、必ず予約をお取りいただきますよう、お願いいたします。なお、初診の方は紹介状(診療情報提供書)が必要です。また、リンパ浮腫に伴う蜂窩織炎が頻繁に起こっている場合など緊急を要する方は、かかりつけ医にご相談ください。当院での治療が必要と判断された場合は、かかりつけ医より当院にご連絡ください。

患者様

形成外科で扱う疾患