形成外科学講座

顎変形症

顎変形症とは

顎変形症は、かみ合わせの異常を伴う顔面形態の疾患です。かみ合わせが悪いことによる問題は様々ありますが、それがどの程度までなら日常生活や一生の間に病的な状態を引き起こすかについては、まだよくわかっていません。いわゆる”しゃくれた”反対咬合でも問題ないことが多いですし、なかには一流のスポーツ選手の方もいらっしゃいます。ですから多くの方が、美容的な目的も含めて治療されます。 こうした理由から、顎変形症の治療には、かみ合わせだけでなく美容的な要素も必要となってきます。かみ合わせの変化によって顔全体のバランスが変わりますので、それを予測して治療を計画することが重要です。かみ合わせは良くなっても、顔の見た目は改善しなかった・・・ということがないようにしなくては、なりません。 かみ合わせに関する手術は、いくつかのタイプがあり、それぞれに利点・欠点があります。それらをよく検討して、もっとも適した方法を選択することで、かみ合わせと顔の見た目を良くすることができます。

サージャリーファーストアプローチについて


顎変形症の治療には、歯科を受診し矯正治療もあわせて受けていただく必要があります。これまでは、手術を行う前に1年から2年ほどの期間の「術前」矯正が必要でした。ただこの「術前」矯正中は、だんだんかみ合わせがずれてゆき、顔の見た目も悪くなります。そして「術前」矯正が終了してから手術を行うことで、ようやくかみ合わせと見た目が改善されます。 ところが、変形の程度によっては約90%の方が「術後」に矯正を行うことが可能であることが分かってきました。つまり,まず手術を行ってから、その後に矯正を行うというアプローチです。

この「術後」に矯正をするアプローチは「Surgery First Orthognathic Approach: SFOA」と呼ばれここ数年、台湾や韓国で開発された方法です。 ”SFOA”のメリットは、まず見た目が最初に改善されることです。これまでの方法で治療を受けたほとんどの患者さんは、「術前」矯正期間中に見た目が悪化したことを不満に思っています。”SFOA”ではこのような悪化の期間がないばかりでなく、手術を受ける大きな動機のひとつである見た目の改善が早く得られることは、大きなメリットです。 かみ合わせは手術後に矯正しますが、この期間が約6~12ヶ月と従来の「術前」矯正の方法に較べ、約1/2と短く済みます。これは歯自身がよいかみ合わせを求めて移動する、という生理的な特徴を利用して行うからであると言われています。 以上のことから”SFOA”では、ほとんど場合、治療期間が1年以内で完了します。

当科では、従来からの術前矯正治療を前提とした従来法とともに、この”SFOA: サージャリーファーストアプローチ”を積極的に取り入れています。

入院期間及び術後経過

上顎、あるいは下顎単独の骨切り術の場合は3泊4日、上下顎骨切り術では5泊6日前後の入院が必要です。骨切り後はチタンプレートによる固定を行いますので、ワイヤーによる顎間固定は必要ありません。そのかわりに、手術翌日から小さな輪ゴムによる軽い牽引を行います。口を開けることは可能ですので、軽い食事を取ることができます。鼻からチューブをいれることはありません。退院後は、2週後、6週後、4ヶ月後に検診を行います。

形成外科で扱う疾患