研究内容

耳科学研究

耳科学分野では以下の研究を行なっています。

  1. マウスにおける内耳遺伝子導入の検討
  2. 片側難聴モデルにおける内耳炎症とその抑制についての検討
  3. ディープラーニングを用いた片側難聴モデルマウスにおける行動解析
  4. 顔面神経切断モデルマウスにおける、V1bの神経保護についての検討
  5. めまい遠隔医療における、症状モニタリング・眼振記録の検討

1)マウスにおける内耳遺伝子導入の検討

自治医科大学では、AAV(アデノ随伴ウイルス)による遺伝子導入が神経系など幅広く活用されてきました。私が赴任してから、遺伝子遺伝子治療学の村松教授と連携をとり、内耳遺伝子導入についての研究を開始しました。
当初は、試薬や研究申請から始め、検討する条件を検討することに半年から一年以上を要しましたが、まず内有毛細胞やらせん靭帯への遺伝子導入確認できました。(下図) 最初に導入が確認された時は、一緒に研究を行なっていた島田先生と夜中に大声で喜ぶほどでした。
現時点では、様々な条件で導入効率を検討し、論文を投稿している段階です。さらに、新規技術を加えて、よりよい医療に貢献できるような研究に繋げてまいります。

2)片側難聴モデルにおける内耳炎症とその抑制についての検討

これまで私は、難聴モデルにおける内耳や聴覚中枢の炎症について検討してきました。自治医科大学では、片側内耳難聴モデルマウスを作成し、内耳と聴覚中枢における炎症について研究を行なっています。これまでの報告では、難聴形成後必ず内耳で炎症がおきており、その役割について議論が行われてきました。当科ではさらに、炎症を抑制することにより、難聴や内耳の機能、形態についてどのような影響があるのかをマウスを用いて検討しています。私と島田Dias助教、甲州臨床助教が主として行なっています。本年度中に研究成果を報告致します。

3)ディープラーニングを用いた片側難聴モデルマウスにおける行動解析

さらに、片側難聴における行動異常についてディープラーニングを用いた解析を行なっています。私の研究の一つとして、データサイエンスがあり、それを行動解析に応用しました。片側難聴は、生活上大きな問題はないですが、音源定位やスケルチなど一部支障があるはずです。肉眼ではわからないような異常について、深層学習を用いた解析を行っております。あきらかな異常があれば、臨床に応用し、早期に難聴の発見につながるようなモデルを作成して参ります。

4)顔面神経切断モデルマウスにおける、V1bの神経保護についての検討

これまで私が行なってきた研究の一つとして、顔面神経切断モデルにおける神経や神経核の検討があります。神経を保護や変性を促進する遺伝子の検討が、神経障害後の戦略に重要となります。自治医科大学では、神経系の様々な基礎研究が行われており、まずは薬理学教室におけるバソプレッシン受容体の一つV1bに注目しました。V1bはV1aやV2など他のバソプレッシン受容体と比較し、注目されていないですが、神経の恒常性維持に重要な働きをしています。神経障害の神経変性や脱髄について解析し、それを保護できるような介入ができないか検討をおこなっています。私と島田Dias助教、甲州臨床助教が主として行なっています。

5)めまい遠隔医療における、症状モニタリング・眼振記録の検討

これまで私が行なってきた研究の一つとして、めまい遠隔診療の研究があります。これは、埼玉県の目白大学で主として行なっています。

  • 症状モニタリングデバイス
  • 眼振記録機器の開発
  • 遠隔リハビリテーション

を開発しており、継続して学会や論文発表をおこなっています。

頭頸部癌研究

ソマトスタチン受容体2型(SSTR2)は多くの頭頸部癌では発現が抑制されています.頭頸部癌細胞に,SSTR2を遺伝子導入するとソマトスタチン刺激によりアポトーシスを誘導することが可能です.現在は,SSTR2の情報伝達経路を解明するとともにセツキシマブの耐性化との関連も調べています.また,ソマトスタチンには様々なアゴニストが知られており,このような薬物の頭頸部癌に対する作用を調べると同時に受容体の発現が予後因子として重要であることも確認しています.