NK細胞にIL-18をふりかけると確かにIFN-γがmRNAレベルで10倍以上に増えるのですが、そこにIL-6を加えても上乗せ効果が全く見られないのです。ところが、IL-18にIL-10を加えると明らかに相乗効果が認められました。それだけではなく、NK細胞の培養上清中のIFN-γを定量すると、IL-18とIL-10を共に加えた場合でしかタンパクレベルのIFN-γは検出できませんでした。

思ったのと真逆と言ってもよいくらいの結果です。何が起こっているのか・・・。大学院生時代にNK細胞上のTRAILという分子の挙動を研究していたので、一応TRAILも定量してみましたが、そっくりの挙動を示しました。やはりIL-18 + IL-10刺激によりタンパクレベルで最も高い発現が見られたのです。あまりにもIL-6に対する応答が乏しいため、IL-6の受容体(IL-6Rとgp130)の発現を調べたところ(患者ではなく健常人ではありますが)、NK細胞の表面にはどちらも発現がほとんどないことが分かりました。一方IL-10受容体のα鎖とβ鎖はちゃんと発現していました。IL-6Rは必ずしも細胞表面になくても、細胞の近傍に可溶性IL-6Rが存在すればIL-6シグナルが細胞に入る可能性はあるのですが、gp130がないとシグナルは基本的に入りません。NK細胞にはIL-6シグナルは入らないのか!知らなかった・・・。調べてみると好中球にもgp130がなく、IL-6シグナルは入らないという論文がありました(Wilkinson et al., J. Immunol. 2018)。今回患者由来のNK細胞を調べた訳ではないので確定的なことは言えませんが、IL-10という抗炎症性サイトカインの代表格と考えられている因子が状況によってはIFN-γやTRAILの発現を誘導して炎症を惹起するという逆(=催炎症性)の役割を果たす可能性があるのだということが分かりました。ただし、IFN-γで刺激した単球からの炎症性サイトカイン産生はIL-10によって明らかに抑制されるので、細胞種による違いは非常に大きいようです。サイトカインの性質も、ヒト個人と同じように単純に善悪二分できるものではないことを実感しました(Aizaki et al., Clin Exp Rheumatol. 2021)。AOSDについては、分かったことよりも増えた謎の方が多いという(よくあるパターンですが)結果になっています。今後日本でもAOSDに対してIL-1阻害薬が使えるようになると思いますが、その使用経験からまた新しいことが分かってくるのではないかと期待しています。

佐藤 浩二郎

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