Rag2KOマウスにはT細胞やB細胞がありませんので、造血幹細胞移植の後で分化してくるT, B細胞はドナー由来の細胞ということになります。ですからその細胞の機能解析をすればよいわけです。しかし、単球/マクロファージが全く存在しないようなマウスは寡聞にして知りません。だから造血幹細胞移植を行っても、単球/マクロファージ系の細胞はドナー(造血幹細胞提供側)とレシピエント(受け手側)の細胞が混ざったものになってしまいます。破骨細胞研究において、これは結構問題になります。そもそも細胞が融合して多核細胞になる性質があるので、2種類のマウス由来の細胞が融合してしまう可能性が高いのです。面白い形質(表現型)が出たとしてもそれがどちらのマウスに由来するのかの判断が難しい(というよりほとんど不可能)でしょう。

Asagiri et al. のJ Exp Med. 2005ではこの問題を解決するために、レシピエントをc-Fos KOマウスにしていました。このマウスは破骨細胞が分化できずに大理石骨病になる表現型を持っているので、そこにNfatc1遺伝子改変マウス(KOあるいはヘテロ)の造血幹細胞を移入して大理石骨病が改善するかどうかを見たのです。しかしその実験は傍から見ていても大変なものでした。手伝おうにも手出しができないレベルです。確か朝霧先生は徹夜でやっていたような記憶があります。

そもそもc-Fos KOマウスを新たに動物施設に搬入するだけでも書類仕事など大変で、時間がかなりかかりそうです。新たに研究のプロトコールを委員会に提出し、許可をもらってマウスを手配し、更に搬入の際の微生物検査・・・など考えるだけでも気が遠くなります。できれば回避したいものですが、他に手がないならやるしかないのか?

そんなことを考えながらネットで色々調べている時に、ちょっと興味深いネットニュースの記事を見つけました。それは「のり」に関係する記事でした。「海苔」ではなく「糊」の方のノリです。

佐藤 浩二郎

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