Th17研究は2006年以降も急速に進みました。右のグラフはPuibMedでTh17を検索した結果です。今では毎年1000以上の論文がpublishされています。
この2006年のJ Exp Med誌に報告した研究は私にとって大変面白いものでした。しかし同時に、答えを出した以上に、分からないことがいっそう増えた時期でもありました。そのいくつかを挙げると、
- IFN-γは確かに破骨細胞分化を強力に抑制します。しかし、関節リウマチの患者さんの関節液を採取するとIFN-γは結構存在するのです。どうしてそんな場所で破骨細胞が分化することができるのか。1つの仮説としては、ヒトでもIFN-γが破骨細胞分化を阻害することは分かっているのですが、マウスに比べてその程度が弱いのかもしれない、ということを考えました。
- この研究は、元々、関節リウマチがTh1型の疾患ではないのではないか、という所から出発しているのですが、では関節リウマチはTh17型の疾患と言えるのでしょうか。
- 下の図は、論文の最後に示した概念図です。ここで、滑膜の線維芽細胞がIL-17の作用で破骨細胞分化因子RANKLを発現するような絵を描いていますが、その証拠は全く無く、この時点では仮説に過ぎませんでした。これはヒトの細胞を使って検証する必要があります。宿題として残っていました。
実はマウスの骨芽細胞にIL-17をふりかけても、フローサイトメトリーという方法でRANKLの発現を見ることはできていませんでした。しかし、本当に知りたいのはヒトの滑膜線維芽細胞でどうなるかということです。
このように色々な謎が残っていたのですが、それを解決するのには、基礎の研究室よりもむしろ臨床の現場に戻った方が良いのかもしれません。この時点で私は、自分の進路について悩むことになりました。
佐藤 浩二郎
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