自治医科大学 循環器内科学部門

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不整脈


不整脈

 不整脈治療として背景となる器質的心疾患の有無についての評価および存在する場合の治療介入、リスク因子の管理・血栓リスクがある症例における適切な薬物療法を行った上で、必要な症例に非薬物療法:カテーテルアブレーション、植込み型電子デバイス(ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)、心室再同期療法(CRT))手術を実施しております。現在、本邦で認可された不整脈手技はほぼ全て実施可能となり、地域の患者さんに最善かつ最適な診療を提供出来る体制を確保しております。若手も複数名が不整脈を専攻、奥山貴文先生が2020年から不整脈を専門として多くの手技を習得しアブレーション・デバイス症例を重ね心房細動アブレーションも独立した術者として手技を行えるようになりました(2022年4月から新小山市民病院へ異動)。2021年春からは佐藤雅史先生・三玉唯由季先生が加わり、2022年7月からはドイツ・デュッセルドルフ大学病院に留学・不整脈の統括責任者をされていた牧元久樹先生もさらに我々のグループの診療に加わって頂きました。また長年にわたり南会津病院 佐藤彰洋先生が毎週火曜日にご来学頂き侵襲的手技のサポートを頂いております。
 今後さらに地域の診療ニーズに応えるべく不整脈チーム一丸となって取り組んで参る所存でおりますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。

臨床アクティビティ 2021年度~2022年度

●心臓電気生理検査・カテーテルアブレーション
 年間279例(内訳)
  心房細動180例(クライオバルーン31件)
  心房粗動・心房頻拍65例
  上室頻拍/WPW症候群43例
  心室頻拍・期外収縮32例   他

 全てのタイプの頻脈性不整脈に対しての心臓電気生理検査・カテーテル治療を実施しており、2016年11月からクライオバルーンを導入、この頃から全体の6-7割を心房細動治療が占めるようになりました。クライオバルーンシステムが大半の症例で使用される時期がありましたが、最近では、心房細動のカテーテルアブレーションの中に占める持続性心房細動の比率が増加、加えて再発例・難治例などが相対的に増加し、高周波アブレーションが現在の治療の主体となっています。
 Covid19感染遷延下にありますが、病院全体での診療抑制の影響は比較的低く抑えられ、例年通りあるいはそれ以上の手技を実施出来ております。
 上室頻拍、WPW症候群、特発性心室頻拍・多発する心室期外収縮には大きな変化はありませんが、陳旧性心筋梗塞・心筋症などの器質的心疾患に合併する心室頻拍についても心内膜側からのアプローチのみならず心外膜側からのアプローチを適宜選択しながらアブレーションを行っております。
 不整脈チームのホームグラウンドは2カテ室ですがCARTO(Johnson & Johnson), EnSite(Abbott), Rhythmia(Boston Scientific)という3社の3-Dマッピングシステムを擁しており、症例毎に適切な機材を選択しながら治療成績のさらなる向上と難治例・先天性心疾患・心臓外科術後症例などの複雑例へも積極的に取り組んでおります。しかし一方、医師のみならず看護師、臨床工学技士、放射線技師など全ての職種における働き方改革が進められつつあり、夕方を超えての長時間手技・勤務を抑制することに取り組んできたのがこの2021年―2022年でありました。主たる手技日は月曜日、火曜日終日でその他、木曜午後、金曜午前にも手技が可能です。月曜、火曜日は従来は一日3件としていて夜20-21時ごろまでかかることが多くありましたが、現在は月曜、火曜ともに2件に制限し夕方17時を超過することが大幅に縮減されました。
 現在、不整脈グループ全員が電気生理・カテーテルアブレーションに参画しておりますが、特にその手技に専従するメンバーをご紹介させて頂きます:渡部智紀先生(土浦共同病院 にて修練)がカテーテル室での電気生理検査治療手技を統括しておられますが、筑波大学で 研鑽を積んで2019年に戻られた渡邉裕昭先生、2020年4月から福島県立医大(不整脈グループのチーフ)から異動して上岡正志先生、そしてこの7月ドイツ御留学から戻られた牧元久樹先生(上岡先生と牧元先生はドイツ・ハンブルクに同期に留学されており旧知の関係)と4人の専門医・術者を擁する充実の体制となっております。
 今日のこのような状況がありますのも本邦のカテーテルアブレーションのリーダーのお一人でおられる土浦共同病院循環器内科部長 蜂谷仁先生のご指導・ご支援の賜物です。2013年から現在に至るまで毎月ご来院頂き、当科の不整脈チームの経験・診療体制等、折々の状況に応じて懇切丁寧にご指導頂き、アブレーションの診療体制が整い充実させることが出来ました。2020年9月から循環器内科客員教授にご就任頂き現在もご指導頂いておます。今後も更なるご指導ご鞭撻を賜りたくよろしくお願い申し上げます。

●植込み型電子デバイス植込み・管理
  ペースメーカー 年間95例(新規63、交換30)
  ICD/ CRT手術 年間60例(新規39、交換21)

 植込み手技は主に小森孝洋先生(現・医局長)、横田彩子先生が担当されていますが、甲 谷先生が成人先天性心疾患センター長としての業務で多忙な中、難易度が高い手技について術者あるいは指導的術者として加わっておられます。
 さらにリード・デバイス感染に対してはリード抜去を含む全システム抜去が推奨されておりますが、エキシマレーザーを用いたリード抜去 について筑波大学で研鑽を積んだ渡邉裕昭先生を主軸に据え2019年度から心臓血管外科・麻酔科のご支援のもと実施しており、その治療成績も良好です。このリード抜去は栃木県内では当院が唯一実施可能な施設となっております。当院の麻酔科医師数の減少、手術室治療枠の制限など多くの障壁がありますが、それを乗り越え今後さらに拡充して参りたいと思います。
 また植込み型除細動器は従来、経静脈リードによるものが唯一の選択肢でありましたが、 ペーシングが必要ない方には皮下ICDという選択肢が現在あり、渡邉先生、上岡先生、甲谷先生が積極的に関与し当院でも実施しております。また除細動器(ICD あるいはs-ICD)植え込みまでのつなぎとしての着用型除細動器WCDを積極的に導入しており致死的不整脈のハイリスク症例においてブリッジ治療として積極的に適用しております。
 コロナ感染下にあってデバイスの点検は従来、半年程度に1回外来に通院頂いて点検をするというのが通常のスタイルでしたが、患者の来院回数を減らしつつ高品質なマネージメントを達成すべくICD/CRT/ペースメーカーの機種によらず積極的に遠隔監視(機械の情報を専用の小型通信機を用いてウェブ上に情報送信)を導入し不整脈デバイス担当スタッフが管理業務を行っています。
 最近、ヒス束ペーシングあるいは左脚ペーシングなど刺激伝導系を直接ペーシングする手法が学会でも話題になっておりますが、今後の課題として取り組んで参りたいと思います。

研究アクティビティ2021年度~2022年度

 COVID19感染拡大の影響で学会が中止・延期あるいはweb開催になるなど大きな制約がありましたが、日本循環器学会、日本不整脈心電学会および関連学会(アブレーション、デバイス)等で不整脈疾患・手技に関する症例報告・臨床研究、不整脈と血圧・血行動態に関する臨床研究について学術発表を行っており、植込み型電子デバイスに関する疫学的研究、カテーテルアブレーション手技にかかる臨床研究・症例報告、血圧計の開発にリンクした形での心房細動検出アルゴリズム開発など多岐に渡る研究成果が論文化されております。
 毎週月曜日夕方に不整脈カンファランスを開催し症例検討会を行い、不定期ですが研究についてのミーティングを行っております。基礎研究としましては東京医科歯科大学古川教授が主任研究者として統括される心房細動原因遺伝子の全ゲノム領域を検索する研究に自治医大病院不整脈グループも参画し2021年12月登録作業が完了しました。今後、この集積臨床データおよび遺伝子解析情報から心房細動発症・進行に関与する新たな疾患感受性遺伝子群が捉えられることが期待されます。
 後進の指導については発作性心房細動も含めた主に上室性不整脈に対するカテーテルアブレーションおよびペースメーカー植え込みを責任もって実施できる若手医師を育成できる指導体制を敷いています。また小児科・心臓血管外科とも連携しつつ、心臓手術術後、先天性心疾患合併の不整脈にも対応しております。

今後の目標

 新館南棟の新しいカテーテル室に移り3年となりますが、今後この環境を有効活用し放射線の被ばく量を低減化に努めるとともに、カテーテルアブレーション手技のさらなる安全性と治療成績さらなる向上を図りたいと考えております。また心室頻拍は時として致死的となる可能性が高い重大な不整脈であり、その治療成績の向上は国内外を問わず不整脈診療の課題でありますが、さらなる研鑽を積みたいと思います。
 植え込みデバイスについては全国的に見ましてもハイボリューム施設の一つで、かつリード抜去可能となっておりますが、この体制を維持さらに強化し、デバイス植込みに関して外部からの見学・研修の受け入れなどCOVID19感染が抑制された近い将来に実施出来る体制を構築したいと考えます。
 また近年増加する成人先天性心疾患の関連した頻脈性不整脈に対しても最新の3次元マッピングを用いて複雑な頻拍回路の同定が可能となり、積極的にアブレーション治療を進めてきました。加えて小児科・循環器チームと密に連携し小児頻拍性不整脈に対するカテーテルアブレーション治療にも取り組んでおります。小児科から循環器内科に継承される先天性心疾患術後症例が近年著増し、成人先天性心疾患患者のQOL/予後改善のため不整脈という専門性を通じて診療へ積極的に参画したいと思います。
 最後になりますが、不整脈グループとして重ねた診療実績も臨床データとして集積され、我々にとって大きな財産となりました。今後この診療データを活用した臨床研究、血液検体を活用したバイオマーカー研究・心電図/血圧あるいは新たな生体情報収集のモニタリング、更にそれらを遠隔的に統合集積・管理する応用研究を2021年度広く展開して参りたいと思います。今後もご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。



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