形成外科学講座

リンパ管奇形

概要

リンパ管奇形は、頸部や腋窩に好発しますが、リンパ管のある部位であれば全身に生じる可能性がある良性疾患です。従来、「リンパ管腫」や「ヒグローマ」と呼ばれてきましたが、最近では「リンパ管奇形」の名称が一般化しつつあります。

 

リンパ管奇形は、1~数個の大型の嚢胞状病変を有する「嚢胞型 macrocystic type」と小さな嚢胞状病変が集まった「海綿型 microcystic type」、および両方のタイプが混在した「混合型 mixed type」に分類されます。いずれのタイプも超音波検査やMRIを用いて診断します。

リンパ管奇形の写真 リンパ管奇形レントゲン写真

症状と経過

通常、リンパ管奇形は無症候性の腫瘤ですが、広範囲の病変では骨変形や嚥下機能障害、関節拘縮、皮膚のリンパ漏などの症状を生じることがあります。また、ときに感染や出血により発熱、疼痛、急速な腫脹が生じます。Macrocystic typeやmixed typeは自然消退することがありますが、microcystic typeは自然消退することはなく、年齢とともに増大することもあります。

治療法

主な治療法として硬化療法と手術治療があり、ときにこれらを組み合わせて治療を行います。硬化療法とは、病変内に硬化剤と呼ばれる薬剤を注入し、病変の炎症や壊死を引き起こすことにより病変を縮小させる治療法です。Macrocystic typeは硬化療法の効果が高く、第一選択の治療となります。しかし、microcystic typeや一部のmixed typeでは硬化剤を小さな嚢胞内に注入することができず、効果が限定的となります。そのため、microcystic typeやmixed typeでは手術治療が必要となることがしばしばあります。

手術治療は外科的切除とリンパ管細静脈吻合があります。外科的切除は確実に病変を切除することができますが、病変が広範囲かつびまん性に広がっている場合は、必ずしも病変を全て切除することはできません。その際は、病変を部分的に切除しますが、手術後に病変が再度増大してくることがあります。また、外科的切除は手術後の瘢痕や神経・血管損傷のリスクが問題となります。

リンパ管細静脈吻合

リンパ管細静脈吻合(LVA: lymphaticovenular anastomosis)とは、超微小血管吻合(スーパーマイクロサージャリー)の手技を用いてリンパ管と静脈を吻合する方法です。この手技は、もともとリンパ浮腫の治療に用いられてきました(詳細はリンパ浮腫のホームページを参照して下さい)。しかし、近年、リンパ管奇形のリンパ液の流入路や流出路のリンパ管を静脈と吻合することにより、リンパ液のドレナージを促し、病変の縮小が得られることがわかってきました。硬化療法が無効で全切除が難しい大きな病変や、病変周囲に重要な神経や血管が走行しており硬化療法や外科的切除のリスクが高い病変などが適応になると考えられます。

リンパ管奇形に対するリンパ管細静静脈吻合は新しい治療法であり、現在も治療成績や手術リスクについては十分に解明されていません。そのため、当院では他の治療法が無効、あるいはリスクが高い方を対象としています。手術は低侵襲のため、年齢や病変部位によっては局所麻酔による治療も可能です。

リンパ管奇形イメージ図 リンパ管細静脈吻合イメージ図
形成外科で扱う疾患