自治医科大学 精神医学講座

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教授のひとりごと

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2017-09-07 某雑誌に投稿した巻頭言がrejectされてしまった理由についての考察と反省

 先日、某雑誌からの巻頭言執筆の依頼がありました。内容は何でも良い、ということであり、同封されていた号の巻頭言も(失礼ながら)かなりざっくばらんな感じでしたので、思いつくままに原稿を書き上げ投稿しました。その後、編集部からは「半年後の◯月号に掲載しますので校正をお願いします」という連絡が来たのですが、一向に校正依頼が来る気配がありません。そのうちに、例の号は巻頭言なし、という形で刊行されてしまいました。まあいわゆるeditor rejectというやつですね。

 

 斯くして私はあまり前例のなさそうな名誉をいただいた訳ですが、せっかくの機会ですので、この件について少し考察を進めてみたいと思います。まずは問題となった原稿の全文を晒しますので皆様もご一緒に考えていただければ幸いです。

 

「腹筋は、割れていなくてもよい」

 

 わが国では近年、若年女性の低体重傾向が著しい。その背景には美としての痩せを支持する社会的風潮があり、TVではダイエットによる引き締まった肉体の美しさを強調するような映像が連日流されている。スリムな体型=美しいというコンセンサスはもはや揺るぎのないものとなっており、筆者も鏡の前のたるんだ腹を見る度に力を入れて無理に凹ませようとする無駄な努力をやめられない。さらに、最近ではメタボリック症候群が医学的にも問題視されるようになり、肥満に対する風当たりは一層強くなっている。

 

 しかし筆者は「近頃の若者」の痩身ぶりについて、これはいかがなものか、と感じることが多い(注:小生は「近頃の若者」という言葉を使うのがかねてからの夢であった。ここに初めて使わせていただくが、実に感慨深い)。厚生労働省の国民健康・栄養調査報告によると、戦後日本人の体格は大きく変化し、平均身長は男女共に10 cm程高くなっている。平均体重も男性は増加傾向にあるが、女性に関しては微増にとどまり、特に20代女性の平均体重は一貫して50 kg前後と70年間ほとんど変化がない。当然の結果としてBMIの低下傾向は著しく、2009年の調査では20代女性の22.3%が一般的なやせの基準であるBMI 18.5以下と報告されている。一日平均エネルギー摂取量も1,650 kcal程度と必要エネルギー量の2000 kcalを大きく下回り、若年女性の栄養状況は戦後最悪の事態を招いている。

 

 さらに、こうした食生活の変化は単なる体型だけの問題にとどまらず、次世代にまで影響を及ぼしかねない大きな懸念にもなっている。低栄養傾向は妊婦でも同様であり、2011年の調査報告ではわが国の妊婦の一日平均エネルギー摂取量は1,665 kcalと非妊娠時とほとんど変わりがない。妊娠中、特に妊娠後期の必要エネルギー量は一日2,500 kcalと見積もられているため、いかにこの問題が危機的であるかはお分かりいただけるかと思う。その反映として、わが国では低出生体重児の増加傾向が際立っている。1980年代には5%であった低出生体重児(2,500 g以下)の出生率はその後上昇を続け、2005年以降では9%台後半を維持している。OECD加盟国の平均が6%台であることを鑑みると異常な事態である。低出生体重は疫学研究から心血管障害、糖尿病などの生活習慣病の危険因子であることが明らかにされており、近年では統合失調症やうつ病などの精神疾患との関連も注目されている。したがって、現在の状態が続くのであれば、わが国では生活習慣病のみならず、精神疾患の罹患者数が将来的に増加することが危惧される。低出生体重児の増加については、低栄養以外の他の因子として高齢出産、多胎出産、喫煙、子宮内胎児発育遅延児(IUGR)の生存率上昇などの関与も考えられるが、妊孕世代女性の食生活の現状は決して看過してはいけない重大な問題である。

 

 今思うと、筆者が青春時代を過ごした80年代のアイドル達はもう少しふくよかであった。ところがどうだろう、昨今のTVや雑誌で見かけるモデルやアイドル達は、筆者に言わせると少しウエストが引き締まりすぎている気がする。一時期、ダイエットの成果として女性タレントが見事に割れた腹筋を披露する、というCMが放映されていたが、彼女のBMIは一般的なやせの基準を明らかに下回っている。若年女性の極端なやせ志向に関しては、マス・メディアの姿勢がそれを助長しているという指摘があり、EU諸国ではBMIが基準を下回るモデルのファッションショーへの起用を禁止する法案が相次いで成立しているが、残念なことにわが国では対応が立ち後れている。低出生体重児の増加という問題を抱えるわが国でこそ、より積極的な介入が必要ではないだろうか。(文字数1578字)

 

 いかがでしょうか。改めて読み直してみると、タイトルからして少し調子こいてる感じが鼻につきますね。80年代への回帰も強すぎます。一丁前にマスコミ批判なんかしちゃっているあたりはブイブイ言わしたいのでしょうか。先日、「し◯じり先生」という番組を見ていましたところ、昔「夢が◯リ◯リ」という番組で天下を取り、S◯APを顎で使っていた◯脇◯児氏が勘違いして人生を誤らないための教訓を語っておられました。氏は調子に乗って勘違いの修正が利かなくなり、結果的に様々な大御所を怒らせてしまった訳ですが、私も少し注意した方が良さそうですね。

 

 初心を忘れず、常に謙虚な姿勢で精進していきたいと思いますので、これからも皆様には忌憚のないご意見、ご指導、ご鞭撻をお願いできればと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。


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