自治医科大学 精神医学講座

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研究紹介

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研究紹介

・社会医学グループ (研究代表者:須田史朗)

 

 精神現象とその背景因子との関連について疫学的手法を用い、社会学的に分析を行うことで精神疾患の理解を深めることが社会精神医学グループの目標です。これまでに東日本大震災、高齢者の死別、終末期医療、喫煙と労働環境との関連、地域社会における精神疾患患者の動向などテーマに研究を行ってきています。また、栃木県は製造業が盛んであり、産業精神医学にも力を入れています。自治医科大学の学内でも様々な活動を続けています。

 活動の範囲が幅広く、アイデア勝負、何でもありです。そんなカオスなあなたにはきっとピッタリの世界です。
 

科学研究費助成事業 

精神科病院における認知症による真の死亡割合の調査

(研究代表者:佐藤謙伍  研究期間:2020-2022年度)

 

地域医療における精神医療ニーズの明確化と効果的な介入手段の探索

(研究代表者:須田史朗  研究期間:2017-2020年度)

 

単科精神科病院における終末期医療ニーズの研究

(研究代表者:小林聡幸  研究期間:2016-2019年度)

 

長時間労働者に抑うつを引き起こす危険要因

(研究代表者:加藤梨佳  研究期間:2016-2019年度)

 

その他の臨床研究

大うつ病性障害患者における電気けいれん療法後の再発因子に関する研究−ケースコントロール研究−

(研究代表者:稲川優多  研究期間:2019年2月22日-2021年3月31日)

 

男性を対象とした配偶者またはパートナーとの家庭生活に関する調査的研究

(研究代表者:須田史朗  研究期間:2020年11月2日-2022年3月31日)

 

・生理学グループ(研究代表者:須田史朗)
 
 こちらのグループでは様々なモダリティを用いて精神現象を数値化し、その解明を目指しています。実験機器としては、研究室専用の光トポグラフィーや、経頭蓋磁気刺激装置を有しており、必要に応じて各種生化学的実験も行います。これまでにうつ病のステートマーカーの探索、睡眠障害とうつ病をテーマに研究を展開してきました。また近年では、摂食障害に対する磁気刺激療法や、”Art × Psychiatry”をテーマに本気で計画を進めています。小児科学講座や心理学講座、中央大学などと交流を行っています。臨床疑問を解決するためには、どのような方法で実験を行えばよいのか、そしてその方法は実現が可能なのか、をひたすら考える、探偵のような作業です。
 
科学研究費助成事業 
自己誘発嘔吐を伴う摂食障害に対する反復性経頭蓋磁気刺激療法
(研究代表者:稲川優多  研究期間:2023-2025年度)

 

精神疾患を有する患者による絵画のdeep learningを用いた画像解析

(研究代表者:須田史朗 研究期間:2020-2022年度)

 
胎生期低栄養によって精神疾患発症脆弱性が生じるメカニズムを探る
(研究代表者:須田史朗  研究期間:2013-2016年度)
 
 
 
 
・精神病理グループ(研究代表者:小林聡幸)
 
 精神の疾患について考えると、否応なく、精神の正常とか健康というのが何かと考えざるを得なくなります。どのようにしてわれわれは、〈私〉という意識を持って、〈いま〉を生きているのでしょうか。精神疾患の様態を記録する記述精神病理学から、人間存在の本質を探る哲学的思考まで、あるいは、われわれが、そして病んだ者がこの世界にどうやって住まっているのかと問う現象学的精神病理学から、言語によって構造化された無意識と主体との関係を考える力動的精神病理学まで、精神病理学の世界は広大です。この曠野をともに進みませんか、神経科学や哲学に橋を架けるまで。この目的のためには手段は選びません。現象学、構造主義、システム論、精神分析、言語学、記号論、論理学、分析哲学、人類学、社会学、民俗学……なんでもありです。
 
<主な活動>
精神病理学会、精神医学史学会、精神病理コロックでの演題発表、論文報告多数あり。
近年では、摂食障害を医学的に初めて記述したとされるシャルル・ラセーグによるフランス語論文を邦訳した。
毎週木曜日は自治医科大学でテレンバッハ研究会、小山富士見台病院でラカンゼミを開催(J, Lacan.著 Séminaireの輪読会)。
教室関連書籍多数あり。
小林聡幸著『音楽と病のポリフォニー』が、2019年の日本病跡学会賞を受賞。
2020年度の第43回日本精神病理学会総会・第67回日本病跡学会総会・精神病理コロックは、当教室が主催予定。
 
<近年の業績>
・2024年
西依康, 稲川優多, 加藤敏:—シャルル・ラセーグ—ヒステリー性拒食症について【第2回】. 精神医学、65(12):1685-1693、2023.  
 
・2023年
Kobayashi, T. “Jikoshu”: Japanese studies in the 1960s and 1970s, and international trends today. Psychiatry Clin Neurosci Rep. 2023; 2:e112.
大塚公一郎:病のレジリアンス ナラティヴにおける虚偽主題. 金剛出版、東京、2023.
小林聡幸:天翔けよ、精神病理学! 臨床精神病理、44:157-158、2023.
小林聡幸:天翔ける精神病理学.臨床精神病理、44:159-163、2023.
小林聡幸:身体症状症は消えず、ただ身体症状になるのみ.精神医学、65:1514-1520、2023.
小林聡幸:うつ病ダイバーシティ. 金原出版、東京、2023.
小林聡幸:自己臭症─1960年代からの日本の研究と最近の国際的動向.栃木精神医学、43:7-21、2023
西依康, 稲川優多, 加藤敏:—シャルル・ラセーグ—ヒステリー性拒食症について【第1回】. 精神医学、65(12):1685-1693、2023.  
 
・2022年
Kobayashi, T.: The significance of mixed states in mania and depression: From the psychopathological viewpoint of Tadao Miyamoto. Psychiatry Clin Neurosci Rep, e53, 2022.
小林聡幸:うつ病患者における同調性と等張性について.精神科治療学、37:1145-1159、2022.
小林聡幸:カロル・シマノフスキ─種族的独自性の古層へ.栃木精神医学、42:46-64、2022.
小林聡幸:病跡学を奏でる.精神科治療学、37:1003-1008、2022.
小林聡幸:病跡学、六段の調べ.最新精神医学、27:251-255、2022.
 
・2021年
小林聡幸:エドガー・ヴァレーズ─空想虚言と座談の空間.栃木精神医学、41:18-33、2021.
小林聡幸:アルテュール・オネゲル─同調性と二律背反.栃木精神医学、41:46-65、2021.
小林聡幸:焦げつく時間─うつ病の時間性を焦躁から見直す.臨床精神病理、42:59-63、2021.
西依康:精神医学におけるラカンの場所. 臨床精神病理, 42:195-203, 2021.
 
・2020年
稲川優多, 小林聡幸:心的容器としての衣服─セネストパチーに衣服による包み込みが有効であった統合失調症─. 臨床精神病理, 41:223-230, 2020.
西依 康, 加藤 敏:精神医学における「意識障碍」概念の全般的検討 ─せん妄(DSM-5)に光をあてる.臨床精神医学 49:311-318, 2020.
Shimizu, K.: Risk factors of severe prolonged grief disorder among individuals experiencing late-life bereavement in Japan: A qualitative study. Death Studies, 2020
 
・2019年
稲川優多, 大西康則, 加藤敏:娘の不在を契機として緊張病状態が繰り返し生じた統合失調症の1例. 臨床精神病理, 40, 127-136, 2019.
小林聡幸:マタイス・フェルミューレン─音楽的狂信者のサルトグラフィー. 臨精医、48:365-373, 2019.
小林聡幸:強迫を腑分けする.臨床精神病理、40:213-223, 2019.
 
 
・精神薬理グループ(研究代表者:塩田勝利)
 

 当グループでは、臨床に根差した薬理学をモットーに研究を行っています。具体的には現在治療法が確立していない急性薬物中毒に対し、すでに臨床で使用されている薬剤の有効性の探索を行っています。これまでにセロトニン症候群やMDMA、覚せい剤であるメタンフェタミンの急性中毒に対して、臨床で使用されている抗精神病薬リスペリドンが有効であることを動物実験で明らかにしています。現在はカフェインやオピオイド系薬剤の中毒症状に対する治療薬の開発を目指しています。

 また、これまで向精神薬による希少な副作用や効果の臨床報告を国内外の医学雑誌に発表しています。今後も実験だけでなく、薬理学的観点からの臨床報告や研究を行っていく予定です。

 もちろんこれら以外の研究を希望する人も大歓迎です。一緒に臨床に研究に頑張りましょう。

 
科学研究費助成事業 
メチルフェニデート中毒の機序解明と治療薬の開発
(研究代表者:塩田勝利  研究期間:2023-2026年度)
 
メタンフェタミン中毒に対するデクスメデトミジンの効果と作用機序の解明
(研究代表者:岡田剛史  研究期間:2022-2023年度)
 
トラマドール中毒の機序解明と治療薬の開発
(研究代表者:塩田勝利  研究期間:2020-2022年度)
 
カフェイン中毒の病態解明と治療法の開発
(研究代表者:塩田勝利  研究期間:2017-2020年度)
 

脱法ハーブ中毒の作用機序の解明とその治療法の開発

(研究代表者:塩田勝利  研究期間:2014-2018年度)

 

コカインによる高体温に対するリスペリドンの有効性の検討

(研究代表者:塩田勝利  研究期間:2012-2014年度)

 
 
 
・移植グループ(研究代表者:岡田剛史)
 
 移植医療においては、移植を巡った抑うつ・不安、術後せん妄、ドナーの臓器提供意思の評価、拒絶反応への不安、終末期医療など、様々な面で精神医学的な介入が必要となります。当院は小児肝移植において全国屈指の施設であり、腎移植も積極的におこなっています。精神科では、ドナーの精神・心理的予後の改善のための臨床的介入を行うとともに、国内の主要な移植施設と共同で移植を巡った精神・心理学的問題についての研究をしています。また、臓器移植では「他者の臓器をもらう」、「他者に臓器をもらう」という極めて特殊な状況にあり、これに直面したドナー・レシピエントの心理について、社会的、文化的、倫理的観点を取り入れつつ、記述的な研究を行っています。
 
<近年の業績>
岡田剛史:【臓器移植前後のメンタルサポート:今日的課題】 生体臓器ドナーに対する心理的介入. 移植, 54: 29-35, 2019.
 
岡田剛史, 安田学, 小林聡幸, 須田史朗:生体移植は日本人の選択なのか 小児生体移植ドナー候補者へのインタビューから. 栃木精神医学, 7: 31-37, 2017.
 
岡田剛史:臓器提供後に生体臓器ドナーに生じる精神・心理学的問題. 総合病院精神医学, 28: 340-344, 2016.
 
 
 
 
・その他
 
 従来、精神疾患と創造性の関係を研究してきたパトグラフィーの分野では、精神疾患の発症ではなく、発症防御に焦点を当てた、レジリアンスや健康生成論の考え方に依拠し、傑出した人々がいかに健康を保ちえたかを論ずる「サルトグラフィー」なる概念を打ち立てて研究を進めています。病棟では絵画やコラージュ、音楽療法を施行し、また集団療法も継続的に行っており、研究へと結びつけてきました。さらに、われわれの臨床の基礎となる精神医学の歴史にも関心を払い、精神医学史の研究にも従事しています。

 このように、私達の教室では、臨床に根ざした薬理学・分子生物学・認知神経科学の研究、また、人文科学に開かれた精神病理学の研究ができます。学内をはじめ、群馬大学、筑波大学、浜松医科大学など、様々な研究機関との交流があります。研究については個人の志向を尊重する伝統があります。教室は幅広い研究領域を持ち、多種多彩な教室員が様々な領域で活躍しています。

(主要論文一覧はこちらから)

 




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