肝移植について


肝移植とは、機能が低下してしまった病気の肝臓を取り出し、健康な肝臓を移植することです。
肝移植には2つの種類があります。

■脳死移植

1997年に臓器の移植に関する法律が制定され、日本でも脳死と判定された方からの臓器提供が可能になりました。2010年7月から改正臓器移植法が全面的に施行され、これまでできなかった、親族優先提供、家族の承諾による臓器提供、15歳未満の脳死後の臓器提供が可能になりました。
1999年に1例目の脳死移植が行われてから現在2016年7月までに387例の手術が施行されています。
そのうち肝移植が施行されたのは339例です。
改正臓器移植法後は1年間で約50件の脳死臓器提供があります。
今後、日本でも脳死移植が普及することで、生体ドナーへの問題=「健康な方への手術」という身体的・論理的問題が解決されます。
当院も2010年7月から18歳未満の脳死肝移植認定施設になっております。詳しい説明をご希望の方は医師、コーディネーターへご相談ください。

■生体移植

世界では慢性的な臓器不足の状況下で緊急避難的手段として行われてきましたが、日本では脳死者からの臓器提供が進まず、肝不全に対する治療法のひとつとして確立してきました。
健康な方から肝臓の一部を提供していただき移植をする方法です。
国内では1991年から現在まで全国約65の施設で行われており、7000例以上の患者さまがこの手術を受けています。
『手術の必要ない健康な方への手術』という倫理的問題を含んでいます。

肝移植を受けることによって疾患が改善し、幼稚園や学校に通えるなど、
QOL(=生活の質)の向上が期待できます。
臓器移植は根治療法ではありませんので、手術終了が治療の終わりではありません。
手術後生涯にわたり免疫抑制剤を服用することから、新たな治療の始まり と言うことができます。
  • 生体肝移植と脳死肝移植における累積生存率

    生体肝移植と脳死肝移植における累積生存率

  • 生体肝移植における年齢別の累積生存率

    生体肝移植における年齢別の累積生存率

  • 生体肝移植における年齢別の累積生存率(10歳毎の年齢群比較)

    肝静脈の形成

※肝移植症例登録報告(日本肝移植研究会) 移植 51巻2・3号 Page145-59 より抜粋

■レシピエント手術

手術は全身麻酔をかけて行います。手術時間は約12~16時間です。手術中、ご家族の方には新館2階家族控え室フロアで待機していただきます。手術中何時でも連絡がとれるように必ずお部屋で待機されるようお願いします。
個室を利用希望の方は入院後忘れずに病棟クラークへ声をおかけ下さい。

  • 皮膚切開

    縦と横にこのような形で切開します。

    皮膚切開

  • 肝臓の摘出

    左中右肝静脈、門脈を肝臓から切り離し病変肝を摘出します。

    肝臓の摘出

  • 肝静脈の形成

    肝静脈の間の壁をそれぞれ切り離し縫い合わせ、一本の血管を作ります。

    肝静脈の形成

  • 肝臓を移植

    肝臓を移植

  • 閉腹

    閉腹

■ドナー手術

欧米ではドナーの死亡例が8例報告されています。
国内でも死亡例が1例報告されました。その他、術後の痛みをコントロールするために硬膜外麻酔を導入し、その合併症で下半身麻痺をきたしたという報告が1例あります。
当院ではそれらの合併症を回避するために点滴、内服で痛みのコントロールを行っています。手術は全身麻酔をかけて行います。
お子様の手術の進行状況で手術室への入室時間が決まります。
手術時間は約5~7時間です。

  • 皮膚切開

    傷はみぞおちからおへそまでの大きさです。右様グラフトの場合には横切開を加えることもあります。

    皮膚切開

  • 胆のう摘出・肝臓の分割

    肝臓の左側, または右側を切除します。また、手術後に胆のう炎、胆石になる確立が高いため同時に胆のうの摘出を行います。

    胆のう摘出・肝臓の分割

  • グラフト肝

    グラフト肝

  • 静脈の形成

    静脈の形成

    2本に分かれている場合は1本に形成します。この血管とレシピエントの血管を縫い合わせて、肝臓を移植するのです。
  • 閉腹

    ドレーンを入れ、手術創を縫い合わせます。
    傷跡は生涯消えることはありません。また、傷の神経も切断をしているので、手術の後、皮膚の感覚が鈍く感じられます。
    肝臓の再生スピードは速く、3ヶ月で約80%の復元率があるといわれています。

    閉腹