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自治医科大学附属病院救命救急センターにおける
大量輸血プロトコール(Massive Transfusion Protocol; MTP)導入の効果

 
本研究の研究対象患者さんとその代理の方へ

研究課題名 当センターにおける大量輸血プロトコール(Massive Transfusion Protocol; MTP)導入の効果
研究対象 2018年度から2023年度の6年間に当院救命救急センターで初期診療を受けて入院した外傷患者さん(=日本外傷データバンクに登録された患者さん)のうち、来院から24時間以内に輸血を開始された方。
研究期間 研究が承認されてから2026年3月31日まで。
研究意義と目的 外傷による大量出血の治療において、迅速かつ十分量の輸血をおこなうことが非常に重要ですが、既に生じている血液凝固障害をいち早く改善させるため、赤血球製剤だけでなく血漿製剤を早期から開始する必要があります。欧米の外傷センターでは、事前に設定した血漿:赤血球比率で先制的に血漿製剤を投与する大量輸血プロトコール(Massive Transfusion Protocol; MTP)というものが標準的な外傷蘇生手順として広く運用されています。MTPは本邦の救命救急センターにおいても近年普及し始めています。

当院では従来から、救急搬送された出血性ショックの患者さんを救命するために、血液型検査結果が出る前にO型赤血球液(RBC)やAB型新鮮凍結血漿(FFP)による異型輸血が必要量に応じて開始可能な「緊急時輸血」体制が整備されていましたが、より一層の救命率向上と後遺症軽減を目指して、当救命救急センターと輸血部の間で協議を重ねてMTPを作成し、2019年2月から運用してきました。運用開始から丸2年経過したことを機に、MTPによって当センターの緊急輸血体制に変化がもたらされたのか、外傷診療成績の向上が得られたのか等を科学的に検証する必要があると考えました。検証によって問題点を明らかにすることで、プロトコールや診療体制の改善が期待できます。

また当院の場合、従来からの「緊急時輸血」とMTPが併存して運用されており、MTP導入前後の比較だけでなく、MTP導入後の体制下で「緊急時輸血」群とMTP群とに分けて比較することで当院の緊急輸血体制の問題点を見つけ出せると考えます。

この研究では、①MTP導入による緊急輸血体制(輸血開始時間、異型輸血単位数、同型輸血単位数、総輸血量、大量輸血症例数、トラネキサム酸使用数、フィブリノーゲン製剤使用数、FFP/RBC比率、輸血製剤廃棄量等)の変化を検討すること、②MTPによって外傷診療成績が向上したのかを検証すること、③MTP導入後の体制下でのMTP群と「緊急時輸血」(=非MTP)群とで症例背景、現場・来院時バイタルサイン、ショックの有無、外傷重症度、予測救命率、輸血開始時間、異型輸血単位数、総輸血単位数、大量輸血症例数、トラネキサム酸使用数、フィブリノーゲン製剤使用数、FFP/RBC比率、輸血製剤廃棄量、生存率、24時間生存率等を比較検討すること、④当院の緊急輸血体制やMTPの問題点を明らかにして改善策を提示することを目的とします。
研究方法 研究対象の患者さんの日本外傷データバンク登録データと、当院電子カルテ内の個人が特定できる情報(氏名、住所、生年月日など)を一切含まない情報を収集し、データの統計処理や解析による研究をおこないます。輸血部門システム内のみで閲覧可能な情報に関しては、輸血・細胞移植部担当者から提供を受けます。日本外傷データバンク登録データに関しては、自治医科大学臨床研究等倫理審査委員会において既に許可を得ています(臨大19-054)。

以下の情報をデータとして収集します。

年齢、性別、抗血栓薬内服の有無、受傷機転(鈍的、鋭的)、現場心停止の有無、現場バイタルサイン(意識レベルJapan Coma Scale;JCS、呼吸数、SpO2、脈拍数、血圧、体温)、現場低血圧(収縮期血圧90 mmHg未満)の有無、現場Shock Index、来院時心停止の有無、来院時バイタルサイン(Glasgow Coma Scale;GCS、呼吸数、SpO2、脈拍数、血圧、体温)、来院時低血圧(収縮期血圧90 mmHg未満)の有無、来院時Shock Index、来院時血液検査値(ヘモグロビン値、ヘマトクリット値、血小板数、プロトロンビン時間;PT、活性化部分トロンボプラスチン時間;APTT、フィブリノーゲン値、Dダイマー、FDP、血液ガス分析、乳酸値)、Abbreviated Injury Scale;AIS(頭頸部・顔面・胸部・腹部と骨盤内臓器・四肢と骨盤・体表の各最大AIS含む)、Injury Severity Score;ISS、Revised Trauma Score;RTS、Trauma Injury Severity Score;TRISS法によるProbability or survival; Ps%、搬送経路(現場直接か転送か)、搬送手段(ドクターカーかドクターヘリか救急車か)、MTP発動の有無、MTPによる輸血実施の有無、病着からRBC/FFP/PC開始までの時間、24時間以内異型輸血量(RBC、FFP、PC)、24時間以内同型輸血量(RBC、FFP、PC)、24時間以内総輸血量(RBC、FFP、PC)、24時間以内廃棄輸血量(RBC、FFP、PC)、24時間以内輸血のFFPのRBCに対する比率、フィブリノーゲン製剤使用の有無、トラネキサム酸使用の有無、24時間以内5%アルブミン250ml製剤使用本数、止血術(外科手術、動脈塞栓術)の有無、止血術の種類と部位、病着から止血術開始までの時間、転帰(院内死亡か生存退院・転院か、24時以内死亡か24時間以上生存か)。

これらの情報は別研究での使用可能性もありますが、その場合には改めて情報公開を行います。

この研究は、自治医科大学附属病院臨床研究倫理審査委員会の承認を受けて行います。
研究機関 自治医科大学 医学部 救急医学講座
個人情報の保護 個人が特定できる情報(病院ID、氏名、住所、生年月日など)は除外し、研究用ID(日本外傷データバンク登録時に自動付与される匿名化IDを使用します)に置き換え、病院IDと研究用IDとの対応表を作成することで匿名化をします。匿名加工された資料と匿名化対応表とは、紙媒体または電子化された情報で保存されますが、許可された職員のIDカードでのみ開錠される救急医学講座内で、鍵付きのデスク引き出し内またはデータベース専用のパスワードロックをかけたパソコン内に保管し、厳重に管理します。本研究終了後もこのデータを別の研究に使用する可能性が高いため、同様の方法で保管します。
結果の公表 この研究の結果は、学術集会総会での発表や学術雑誌での投稿論文として公表する予定です。個人情報が公開されることは一切ありません。
研究に関する情報公開 研究対象者となる方のご希望があれば、他の研究対象者の個人情報や知的財産の保護に支障がない範囲内で、この研究の計画書等の資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。
拒否について 患者さんもしくは患者さんの保護者や代理人の方は、この研究の対象者となることを拒否することができます。研究対象者となることを拒否される場合には研究対象としませんので、下記の研究責任者までお申し出ください。ただし、お申し出いただいた時点で既に解析が行われていたり、研究成果が学会・論文などで発表されていたりする場合には、研究対象から外すことはできません。ご了承下さい。なお、この研究に参加されなくても、患者さんが不利益を受けることは一切ありません。
お問い合わせ先 【研究責任者】
自治医科大学医学部 救急医学講座 新庄貴文
所在地:栃木県下野市薬師寺3311-1
電話番号:0285-58-7395

【苦情の申し出先】
自治医科大学附属病院臨床研究センター管理部電話:0285-58-8933

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