プリオン遺伝子変異により難治性食道アカラシアが発症することを発見し、Am J Gastroenterol誌 (IF=10.171) に報告しました
プリオン遺伝子変異により難治性食道アカラシアが発症することの発見
(論文はこちら)
これまでプリオン遺伝子の変異では、脳や脊髄を中心とした中枢神経に限局して病気が起こると考えられてきました。しかし、松薗助教らは2013年にプリオン遺伝子変異D178Efs25Xで遺伝性の自律感覚末梢神経障害が起こることを当時世界で初めて報告しました。その後、イギリスやイタリアでも様々な種類のプリオン遺伝子変異により、同様の病態が起こることが分かりました (参考論文)。
2016年に松薗助教らが「PrP systemic deposition disease」として新たに提唱したこの病態 (論文リンク) は、特定のプリオン遺伝子変異により発症し、全身に異常なプリオン蛋白が沈着することが分かっています。しかし、国内での報告数が少なく、その詳細な病態や治療法は未だ確立していません。
今回、東北大学大学院医学系研究科病態神経学分野 北本哲之 教授、九州大学大学院医学研究院神経病理学 岩城徹 教授、本田裕之 准教授らとの共同研究により、当科の松薗助教、金蓮姫元医局員らはプリオン遺伝子変異Y162Xにより難治性食道アカラシアが発症することを新たに発見し、米国消化器病学会 (ACG) の機関誌である『American Journal of Gastroenterology』 (IF=10.171) にて報告しました。
本発見により、これまで原因不明とされてきた食道アカラシアなどの消化管運動障害の一部で、特に治療抵抗性で家族性を認める場合にはプリオン遺伝子変異による可能性があり得ることが示唆されました。この「PrP systemic deposition disease」と呼ばれる病態は、様々な臨床像を呈することから依然不明な点が多い難治性の疾患ですが、その詳細な病態解明とドラッグ・リポジショニングを利用した進行を抑制する薬物の同定を目指して、現在私達は取り組んでいます。