第7回移植患者の会リポート


平成29年8月20日(日)、自治医科大学地域医療情報研修センターに於いて、第7回移植外科患者会が開催されました。104家族/総勢296名の参加を頂き、大いに盛り上がりました。
午前中はレシピエントとドナーそれぞれの体験談。思い出の写真を投影しながら、これまでの苦労や心に残った事柄をいろいろな思いを込めて語ってくださった講師のお二人、本当にありがとうございました。「これからの我が子の人生に希望がみえた」という嬉しいお便りを頂いています。
午後の部は今回初めての試みである年齢別のワークショップ。
開講17年の移植外科、当時赤ちゃんだったみなさんが自身の進路を考える岐路に立っています。「社会」という大海原に漕ぎ出す不安も大きく、沢山の情報が欲しいという声にお答えして開催した高校生以上対象の「みんなで話そう、就職相談会」。
自分自身のからだを正しく理解して欲しい、病気ときちんと向き合い、自分の身体を大切にして欲しいという思いで計画した小中学生対象の「からだ図鑑作り」。
(夏休みの自由研究にも使えるかな...と)
就学前の子ども達とそのご家族は、まだまだ移植初心者で不安もいっぱいです。看護師や保育士、そして沢山の経験を積んできた逞しい移植ご家族の大先輩達とのおしゃべりを通して、少しでも日々の生活の不安を解消できるようにと開催した「おしゃべりカフェ」。
どの会場も盛り上がり、大きな成果があったようです。
たくさんのみなさまにご協力いただき、本当にありがとうございました。

■当日のプログラム

10:00
受付(1階大講堂入口)
託児受付(1階 大会議室前)
10:30 講演会

「レシピエント体験談」10:30~10:45(15分)

現在、子育て奮闘中のNさん。大変なこともたくさんあったけれど、いつも真っ直ぐ前を向いて一歩ずつ歩んできました。たくさんの人たちの支えに感謝の日々。Nさんの体験談はたくさんの方に希望と勇気を与えてくれました。

質疑応答10分

「ドナー体験談」10:55~11:10(15分)

いつも明るく家族を支えてきたYさん。母として、ドナーとして、我が子の成長を改めて振り返り、感無量。まだまだ心配もたくさんあるけれど、ひとつひとつに感謝をしながらの毎日。これまでの様々な思いに会場のみなさんも共感。

質疑応答10分

11:20 午後の部のご案内
お昼ごはん

おたのしみイベント開催

13:30
年齢別ワークショップ

A.「みんなで話そう就職相談会」高校生以上(職種毎のグループ別で)・大会議室

参加した皆さんの真剣なまなざし・活発な意見交換、この企画を実施して本当によかった、というスタッフ皆の思いです。アドバイスを下さった先輩患者さん達に心より感謝です。
午後の1時間半では時間が足りず、もっと聞きたいこともあったのではないかと思います。
今後も継続して支援していけると良いと考えています。

進路・就職Q&A

(質問の答えを知りたい方はコーディネーターにお声掛けください)

既に社会に出て活躍している皆さんにアドバイザーになっていただき、最初は就職に関する15の質問からスタート。
  • 進路や就職活動をする際誰に相談をしたか?移植後の体調についても相談したか?
  • 就職試験の面接で健康面での質問を受けたか?
  • 職場ではどのタイミングで肝移植を受けたことを伝えたか?
  • 病気を隠して就職したらどうなるか?普段困ることが無いので言う必要はあるのだろうか?
  • 肝移植後ドクターストップのかかる職種はあるか?職場には病気のことを話すべきでは?
  • お薦めの就職ナビはあるか?
  • 移植後の体調を気にかけ、なりたい仕事をあきらめたことはあるか?
  • 障がい者雇用枠での就職の場合、一般との差はあるか?元気すぎて障がい者雇用枠を使うことに後ろめたさを感じることがある。
  • 就職後、外来通院時には休みをもらえるか?職場に理解してもらうにはどうしたらよいか?
  • 看護師になりたいが体力的に不安。看護師になることは可能か?
  • 看護師の夜勤はつらくないか?
  • 一人暮らしや残業・人付き合いなどで生活が不規則にならないか?免疫抑制剤内服の習慣に変化はあったか?
  • 遠隔地勤務の場合、通院はどうすれば?移植後の管理は全国どこの病院でも大丈夫?
  • 移植後とは思えないくらい元気。反面、周囲の人に病気のことを気づかれず苦労したことはあるか?そんなときはどうする?たとえばお酒を勧められるとか。
  • 肝移植後の体調と上手に向き合いながら進学・就職するにはどうしたらよいか?努力すべき点は?周りの環境はどのように充実するのが理想なのか?

体験談

既に社会で活躍している先輩の就活体験談に、みなさん真剣に耳を傾けていました。

交流会

希望する職種に分かれてグループ毎にアドバイザーを交えての進路就職相談会。質疑応答も活発に行われ、時間はあっという間に過ぎました。

B.「学ぼう!身体しくみと働き」小学1~4年・小学5年~中学生の2グループ・大講堂

低学年グループ

パズル形式でからだのしくみについてお勉強。移植後のからだの中についても先生達から教わりました。
ちょっぴり難しいところもあったけれど、みんな真剣に、楽しく学びました!

子ども達からは、「夏休みの宿題にできてよかった!」「食べ物がどんなふうに身体の中を通ってうんちになるのかわかって面白かった!」等、嬉しいコメントが届いています。自分の中で頑張って働いている新しい肝臓について、おぼろげながら理解はしてもらえたのではないかと思のですが、参加された保護者のみなさまいかがだったでしょうか?
夏休みの宿題としての役割も果たせたようでひと安心^_^

高学年・中学生グループ

大きいお兄さん・お姉さん達は、自分のからだの中を自分達で描いてみました。 それぞれの臓器の働きも詳しく先生達から教わり理解を深めました。ちょうど中学校で学習する内容だそうですよ。 ~企画した井原先生【談】~
移植後の薬についてもお勉強。新しい肝臓、大切にして欲しい、というみんなの思い、しっかり受け止めてくれたでしょうか...

描いてみるとなかなか難しい内臓の配置図。みんな真剣に描いていました。
移植後の肝臓の大きさや位置を初めて知ったという子ども達も。

今回の企画を通して、改めて自分の身体に興味を持ち、そのしくみについて見直す機会になったのでしたら嬉しいです。
少し難しい内容でしたが、一生懸命考えて回答してくれてありがとうございました。
普段不思議に思っていることや悩んでいることがあったら、外来時を利用してどんな小さなことでも遠慮無くどんどん質問して下さい。

C.「おしゃべりカフェ」乳幼児(就学前の子ども)とその家族・研修室1~3

地域・移植後経過年数・就学前後などのグループに分かれておしゃべり。
看護師を中心に、先輩パパ・ママにもアドバイザーとして参加していただき、普段誰に相談して良いかわからず困っていることや、心配事を話し合いました。同じ思いを経験しているからこそ理解できること、必死でくぐり抜けてきたこれまでの道のり、若葉マークの保護者の皆さんに様々な体験を伝えてくださいました。
特に集団生活への不安は皆が抱えている悩みであり、先輩保護者の体験は貴重なアドバイスになったのではないでしょうか。
小さなお子さんを持つ保護者のみなさんは、これからどのようにして病気のこと、移植のことを我が子に伝えていったらよいのかも大きな心配のひとつです。先輩保護者の方々のアドバイスを参考にみんなで一緒に考えていきましょう。
今回の交流がきっかけとなって、更なる交流の輪が広がることを期待して。

日頃、心配に思っていること、これから、どうしたらよいか、活発に意見交換がなされました。
おとうさん・おかあさんが交流をしている間、小さい子ども達は、別室で保育士さんと楽しく遊びました。

15:00 記念撮影後閉会
病気であることを受け入れ、社会の中でどのように自分を生かすか、周りの人たちとの関わりをどんなふうに保っていくか、口で言うのは簡単ですが、想像以上に大変なことです。そんな毎日を懸命に頑張る子ども達は本当にスゴイ!!
親の願いはただひとつ、いつも子ども達に笑顔でいて欲しい。そのために私達大人ができること、移植医療に関わるスタッフ皆が子ども達に寄り添い、一緒に考えていきたいと思っています。
でも、頑張るばかりでは疲れてしまうから、時にはゆるりと歩みを止めて考えたりすることも大切です。患者会はそんなホッとする場になればと考えて開催しています。
「こんなことして欲しい」などのアイデア、いつでもお寄せ下さい。

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