自治医科大学 循環器内科学部門

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論文・症例報告


論文・症例報告

最新の論文・症例報告等の掲載をご紹介いたします。

43.Comparison of morning vs bedtime administration of the combination of valsartan/amlodipine on nocturnal brachial and central blood pressure in patients with hypertension.
J Clin Hypertens. 2017 Nov 5. in press.
高血圧患者に対するバルサルタン/アムロジピン配合錠の時間降圧療法による夜間末梢/中心血圧へ及ぼす効果の比較検討

Takeshi Fujiwara/藤 原 健 史

【概要】
夜間末梢/中心血圧の低下度をアウトカムとしたときに、長時間作用型の降圧作用を有するバルサルタン/アムロジピン配合錠の朝食後投与は、同薬剤の就寝前投与と比較して、劣らないのではないか、という仮説を設定した。CPET試験は、16週前向き無作為化オープンラベルクロスオーバー非劣性試験である。23名の本態性高血圧患者に対して、バルサルタン/アムロジピン配合錠の朝食後投与または就寝前投与を8週間行い、その後投与方法をクロスオーバーし、さらに8週間の治療を行った。中心血圧が測定可能であるABPM機器(Mobil-O-Graph)を用いて、朝食後投与と就寝前投与が有する夜間血圧低下作用を比較した。

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【コメント】
夜間中心血圧に対する時間降圧療法の効果を検討した最初の試験である。夜間末梢/中心血圧低下度を評価したときに、バルサルタン/アムロジピン配合錠の朝食後投与は就寝前投与に対して非劣性であった。夜間血圧および中心血圧はそれぞれ心血管予後と強く関連するため、バルサルタン/アムロジピン配合錠を治療薬として選択する時に、本試験結果は有益なエビデンスであると考える。

42.Relationship Between Blood Pressure Variability and Cognitive Function in Elderly Patients With Well Blood Pressure Control
American Journal of Hypertension 2017 Aug 25. in press.
血圧コントロール良好な高齢者の血圧変動と認知機能の関連

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Natsuki Cho/長 捺 希

【概要】
南三陸病院内科外来にて心血管リスクファクターを一つ以上もつ232人の高齢者に対してambulatory BP monitoring (ABPM)の測定値と、認知機能検査Japanese version of the Montreal Cognitive Assessment (MoCA-J)の結果の関連を調べた。 平均年齢は77.7歳、85.3%が1つ以上の降圧薬を内服していた。24時間平均血圧は118.7/68.3mmHgであった。24時間の血圧変動(weighted SD of systolic BP)の大きさで4群に分け、年齢、24時間の平均SBPで補正すると最も高い群で優位にMoCA-Jスコアが低かった(P = 0.001) 。またMoCA-Jを認知機能別に7グループに分類したところvisuoexecutive, abstraction, attention, namingの低下が血圧変動性の増大と関連があった。


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【コメント】
過去の論文では日本人においてMoCAと血圧変動性を検討した論文はなく、認知機能分類別に分けてMoCAとの関連を検討した論文はない。またDーCAP研究に登録している患者が多く厳格な血圧コントロール下に置かれている集団を対象としたため、平均血圧レベルの因子を除外し血圧変動と認知機能低下の関連が見やすくなった。今回、平均血圧コントロール良好な患者群において血圧レベルではなく血圧変動の大きさと認知機能低下に関連があるという結果が得られた。



41.Imatinib dramatically alleviates pulmonary tumour thrombotic microangiopathy induced by gastric cancer.
BMJ CaseRep. 2017 Sep 7.in press.
イマチニブは胃癌による肺腫瘍血栓微小血管症(PTTM)に著効する

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Kana Kubota/久 保 田 香 菜

【概要】
肺腫瘍血栓性細小血管症(PTTM)は進行性肺高血圧(PH)により致命的となる、悪性腫瘍に稀に起こる合併症である。血小板由来増殖因子(PDGF)受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるイマチニブは、PTTM患者の重症PHを改善することができることが国内で数件報告されている。 症例は56歳の女性。来院時の平均肺動脈圧(mPAP)は47mmHgであり、呼吸困難症状は数日間で急速に悪化した。造影CTでは肺塞栓症は認められなかったが、傍大動脈リンパ節の多発性腫大が認められ、上部消化管内視鏡検査で胃の印環細胞癌が判明した。臨床経過からPTTMと診断し、イマチニブ内服による治療を開始した。投与5日後、mPAPは12mmHgと劇的に改善を認めた。その後、イマチニブ投与を継続したまま独歩退院し、約7か月後に癌の全身転移により死亡するまでPHの再発は認めなかった。PTTM症例では、イマチニブはPHの有効な治療選択肢となる可能性がある。PTTMは急激に進行し死に至る疾患であるため、診断した場合にはできるだけ早期にイマチニブの投与を検討すべきである。

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【コメント】
PTTMは進行が速い致死性の疾患であるが、保険適応外使用ではあるもののイマチニブを用いることで、急性期の右心不全死を回避できた症例を経験した。キースライドに示した通り、数日で最重症まで増悪してしまったPHに対し、イマチニブの投与によってわずか数時間で劇的なmPAPの改善を認めたことは筆者にとって衝撃であった。PTTMへのイマチニブ投与は現時点では日本国内でしか試されておらず、急性期に救命できたPTTMとして本症例は3例目の報告となる。ただこれまでの2症例はInternal medicine、International Herat Journalと国内紙での報告であったため、国内6症例のreviewを含む本報告が海外誌に掲載されることで、イマチニブ投与の有効性について世界に発信することができると考える。



40. Diagnostic accuracy of a new algorithm to detect atrial fibrillation in a home blood pressure monitor.
J Clin Hypertens. 2017 Sep 1. in press.
家庭血圧によるAF検出アルゴリズムの開発

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Tomoyuki Kabutoya/甲 谷 友 幸

【概要】
心房細動患者16人、洞調律患者20人で新しいAF検出アルゴリズムを搭載した血圧計で脈波を収集し、 AF検出の妥当性について検討した。 





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【コメント】
自動血圧計によるAF検出のための新規アルゴリズムは特異度、感度ともに良好であった。今後は高血圧患者や一般住民の無症候性のAFの発見や、AFのカテーテルアブレーション後の治療判定などに役立てたいと考えている。




39.The relationship between a blunted morning surge and a reversed nocturnal blood pressure dipping or "riser" pattern.
J Clin Hypertens. 2017 Aug 20.in press.
“blunted morning surge”と“riser pattern”の関連

Takeshi Fujiwara/藤 原 健 史

【概要】
“exaggerated morning surge”は24時間血圧レベルとは独立して、臓器障害や心血管イベントリスクとなることが、これまでの前向き観察研究で報告されている。しかし、その後、“blunted morning surge”が心血管予後と関連する、という相反する結果の論文が発表された。そこで、我々は、“blunted morning surge”を呈する患者の心血管イベントリスクは、同様に心血管イベントリスクであることが報告されている“riser pattern”を反映しているのではないか、という仮説を検証した。ABPMを実施した501名の高血圧患者のsleep-trough morning BP surgeを十分位し、各分位に含まれるdipping patternの割合を検討した。その結果、十分位最低群(D1, blunted morning surge群と定義)に含まれるriser patternの割合は、他の群(D2-10)に含まれるその割合よりも5.8倍高かった(D1: 56.0% vs. D2-10: 10.4%, p<0.0001)。また、blunted morning surgeに対するロジステック回帰分析では、riser patternはオッズ比73.3で有意なリスク因子であった。sleep-trough morning BP surge ではなくpre-waking BP surgeを用いた解析においても、同様な結果であった。

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【コメント】
“blunted morning surge”と“riser pattern”の関係を明確にした初めての臨床研究である。「the greater the morning BP surge, the greater the nocturnal BP dipping, and vice versa」であることは当初より予想はされたが、“blunted morning surge”と“riser pattern”の関連は予想以上に強固であった。この結果は、「“blunted morning surge”が心血管予後と関連する」という過去の論文の結果を、「“riser pattern”が心血管予後と関連する」という解釈に変更することをsupportする内容であった。“riser pattern”がそうであるように、やはり“exaggerated morning surge”こそ心血管イベントリスクであると我々は考える。

38.Role of ambulatory blood pressure monitoring for the management of hypertension in Asian populations.
J Clin Hypertens. 2017 Aug 22. in press.
アジア人の高血圧管理におけるABPMの役割

Satoshi Hoshide/ 星 出 聡

【概要】
アジア人と欧米人では、心血管イベント発症の有病率やその割合(心疾患が欧米で多いなど)が異なります。また、アジア人では欧米人と比較して、心血管イベントへの血圧の寄与が高いとされています。ABPMは診察室血圧と異なり、様々な血圧に関する指標を得ることが可能であり、そのどれもが診察室血圧レベルと独立して心血管イベントに関連することが報告されています。以前に、我々はABPMで捉えられるモーニングサージの程度が、24時間血圧レベルが同等でも、ヨーロッパの高血圧患者より日本人の高血圧患者の方が有意に大きいことを報告しました (Hoshide et al. Hypertension 2015)。このように、単に血圧レベルだけでなく、ABPMで捉えられるような血圧変動の特徴に人種差がある可能性があります。本論文は、ABPMで捉えられる血圧変動の指標を人種差の点から着目し、アジア人高血圧患者に特徴的なものがあるかどうかをレビューしました。

37.Catheter-based renal denervation in patients with uncontrolled hypertension in the absence of antihypertensive medications (SPYRAL HTN-OFF MED): a randomised, sham-controlled, proof-of-concept trial
Lancet 2017 Aug 28. in press.
降圧療法を行わないコントロール不良高血圧患者において、腎デナベーションとシャム手技を比較したランダム化比較試験:SPYRAL HTN-OFF MED Trial

Townsend RR, Kario K, et al.

【概要】
腎デナベーションとシャム手技を比較した過去のランダム化試験において、腎デナベーションは一貫した降圧効果を示せなかった。今回、診察室収縮期血圧(SBP)≧150 mmHgかつ<180 mmHg;診察室拡張期血圧(DBP)≧90 mmHg;24時間自由行動下 SBP≧140 mmHgかつ<170 mmHgを満たす未治療あるいは降圧療法を中止した症例を対象として、多施設、国際、単盲検(患者、医療従事者[caregivers]、血圧評価者を盲検化)ランダム化シャム対照、概念実証試験を行った。2回目のスクリーニング時の腎造影で解剖学的に適格であるものを、腎デナベーション群あるいはシャム対照群にランダム化した。主要エンドポイントは3か月後の24時間血圧値の変化。降圧療法中止のコンプライアンスを確かめるため、薬剤調査を行った。
腎デナベーション群(38例)の診察室SBP/DBPおよび24時間 SBP/DBPは、ベースラインに比較して3か月後に有意に低下したが(診察室SBP (-10.0 mmHg [95%信頼区間: -15.1, -4.9]),診察室DBP (-5.3 mmHg [-7.8, -2.7]);24時間SBP (-5.5 mmHg [-9.1, -2.0]), 24時間DBP (-4.8 mmHg [-7.0, -2.6]))、シャム対照群(42例)では有意差はなかった(診察室 SBP (-2.3 mmHg [-6.1, 1.6]),診察室 DBP (-0.3 mmHg [-2.9, 2.2]);24時間 SBP (-0.5 mmHg [-3.9, 2.9]), 24時間DBP (-0.4 mmHg [-2.2, 1.4]))。 ベースラインと比較した3か月後の診察室SBP/DBPならびに24時間SBP/DBPの変化の群間差は、いずれも腎デナベーション群に好ましい結果であった(診察室 SBP (-7.7 mmHg [-14.0, -1.5])、診察室 DBP (-4.9 [-8.5, -1.4]));24時間血圧の変化(24時間SBP-5.0 mmHg [-9.9, -0.2]), 24時間DBP (-4.4 mmHg [-7.2, -1.6]))。両群ともに主要有害イベントはみられなかった。
SPYRAL HTN-OFF MED試験によって、腎デナベーションの降圧作用が証明された。

【コメント:苅尾七臣】
これまで専門家が長らく有効と考えてきた腎デナベーションの有効性が、ヒトを対象とした臨床試験で最も客観的とされるシャム手術を用いた無作為比較SPYRAL HTN OFF-MED試験で証明された(ヨーロッパ心臓病学会2017. August 28日発表、Lancet 2017 同時掲載)。 本試験は我が国を含むヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアが参加したメドトロニック社主導の国際feasibility試験であり、診察室血圧150mmHg以上(拡張期血圧90mmHg以上)、自由行動下血圧測定 (ABPM) で評価した24時間血圧140 mmHg以上の未治療高血圧患者を対象とした。シャム手術群に比較して、腎デナベーション群では主要エンドポイント・24時間収縮期血圧の3か月後の低下が5.0mmHg有意に大きかった。
2014年のHTN-3の失敗から学んだ本試験企画の秘訣は、患者選択、手技、評価の3点を的確に改良し、全ての「ばらつき」を最小限に抑えた点にある。1)焼灼手技は4点同時焼灼が可能な多電極焼灼デバイス・Symplicity SpyralTMカテーテル」により腎交感神経が集束する腎動脈遠位部をより詳細に焼灼するプロトコールに変え、施設を限定し、均一化した。2)評価法は主要エンドポイントを変動が大きい診察室血圧から、測定手技のばらつきの少なく循環器リスクとの関連がより強い24時間血圧に変えた。さらに、3) 対象者は診察室血圧に上限を設けて血圧変動のばらつきを下げる一方、24時間血圧高値群とし、さらに拡張期血圧90mmHg以上を登録基準に加え、血管硬化が進行したStructural hypertensionを除外することにより、対象者のばらつきを排除した。
循環器ニューロモジュレーション治療の実用化で最先端を行く腎デナベーションは、SPYRAL HTN OFF-MED試験を再起点として、学術的にはレスポンダー探索、技術的には手技・評価法の開発、臨床的には臨床導入へ向けたpivotal 試験が加速されることになる。


36.症例報告
A drug-coated balloon effectively treated in-stent restenosis due to a stent fracture.
Int J Cardiovasc Imaging.2017 Aug 14. in press.
ステントフラクチャーによるステント内再狭窄にDCBが有用であった一例

Yusuke Oba/大 場 祐 輔

【概要】
74歳男性。 労作性狭心症の診断で回旋枝に薬剤溶出性ステントを留置したが、 33ヵ月後にステント完全断裂による再狭窄を認めた。 心拍動に伴う血管の動きが大きい部位にステントが留置されたことによる持続的なmechanical stressがステント断裂の原因と考え、 敢えてステントの再留置は行わず、 薬剤溶出性バルーンによる薬剤塗布を施行した。 8ヵ月に確認カテーテル検査を行ったところ、 再狭窄は認めず、 OFDIでも線維性被膜の増大を認め、 安定した内膜に修復されたことを確認した。

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【コメント】
ステント留置後33ヵ月の経過でステント断裂による再狭窄を経験した。 DCBによる治療で、 再々狭窄はなく経過は良好である。 第2世代DESになり、 ステント内再狭窄の頻度は減少したものの、 本症例のようにStent fractureは未解決の問題である。 OFDIによりステント内再狭窄の病態を把握することが重要であり、 ステント完全断裂に伴う再狭窄にDCBによる治療が有用である可能性がある。


35.症例報告
Successful hybrid treatment with endovascular aorto-iliac revascularization and coronary bypass surgery in a patient with an advanced complex polyvascular disease.
jccase 2017;15: 201-205.
EVTによる下肢血行再建術を先行することで冠動脈重症多枝病変に対するall arterial graftsによるCABGが可能となったLeriche syndromeの一例

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Yukako Ogoyama/小 古 山 由 佳 子

【概要】
症例は72歳男性、労作時胸痛と両側下肢の間欠性跛行のためカテーテル検査を施行したところ、LMT+3VDと遠位大動脈~両側外腸骨動脈閉塞を伴うLeriche syndromeを合併していた。両側内胸動脈から良好な側副血行路を認めていること、待機的CABGが施行可能な状態であること、上行大動脈や頸動脈が石灰化やプラークで性状が悪いこと(≒off pump CABGが望まれる状況)から、CABGに先立ちLeriche syndromeに対するEVTを先行した。

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【コメント】
冠動脈疾患を合併する患者には末梢動脈疾患を併発することが多く、その逆の場合も臨床の現場では多く経験する。血行再建は長期開存と、非侵襲性が求められており、今回EVTを先行することにより冠動脈バイパス術は開存率がよいとされている動脈グラフト(LITA、RITA、GEA)をすべて用いることができ、また生理的血行再建術を行うことでIABPやPCPS等の使用も可能となった。EVTの進化に伴い、このような患者に対しては侵襲性の低いEVTとCABGのハイブリット治療も今後選択枝の一つとなるだろう。



34.症例報告
Daytime blood pressure surges following hypoxic episodes in a case of pneumoconiosis with lacunar stroke recurrences.
Blood Press Monit. 2017;22:175-177
ラクナ梗塞を繰り返した塵肺患者において、日中の低酸素に続く血圧サージをとらえた一例

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Yuki Imaizumi/ 今 泉 悠 希

【概要】
症例は70歳男性、元炭坑夫。ADL自立。2年前から高血圧症に対してカンデサルタン8mg1×夕食後、アムロジピン5mg1×朝食後で治療していたが、4回目となるラクナ梗塞を発症した。血圧は、安静時130/80mmHg程度で推移し、SpO2も96%程度と保たれていたが、活動時には軽度の呼吸困難感を自覚していた。ラクナ梗塞の責任血管はすべて穿通枝で、深部白質病変を認めることからも、血圧が本症例の最大のリスク因子であったと推察された。血圧レベルが低いにもかかわらずラクナ梗塞を繰り返す原因として、どこかに血圧サージが残存すると考えた。活動時に呼吸困難感を自覚していたことから、間欠的な低酸素に伴って血圧変動性が亢進している可能性を疑い、患者の協力を得てABPMと24時間SpO2モニターを二回にわたり同時装着した。その結果、日中の活動時に最低SpO2が70%代後半まで低下し、それに引き続いて血圧変動性が亢進しており、最高でSBP 192mmHgの血圧サージを認めた。

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【コメント】
慢性呼吸器疾患の患者では血圧変動性が亢進していると報告されているが、その機序を明らかにした報告はない。今回我々は、慢性呼吸器疾患の患者において、身体活動に伴う間欠的な低酸素発作に引き続く血圧サージをとらえた。慢性呼吸器疾患の患者に心血管疾患が多い原因の一つに、日中活動時の間欠的な低酸素発作により交感神経が亢進し、血圧サージを生じることで血管障害を引き起こしている可能性が示唆された。



33. Comparison of ambulatory blood pressure-lowering effects of higher doses of different calcium antagonists in uncontrolled hypertension: the Calcium Antagonist Controlled-Release High-Dose Therapy in Uncontrolled Refractory Hypertensive Patients (CARILLON) Study.
Blood Press. 2017:1-10.
コントロール不良高血圧患者に対する高用量カルシウム拮抗薬の24時間自由行動下血圧における降圧効果の比較:CARILLON研究

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Hiroyuki Mizuno/水 野 裕 之

【概要】
 CARILLON研究は高用量ニフェジピンCR(NCR)と高用量アムロジピン(AML)の24時間血圧における降圧効果と臓器保護効果を比較した多施設ランダム化比較試験である。常用量のカルシウム拮抗薬と常用量のレニンアンジオテンシン系阻害薬を含む2剤以上の降圧薬で治療されていたコントロール不良の高血圧患者を、NCR群とAML群に無作為割り付けした。両群ともに、治療期間中カンデサルタン8mgを併用し、その他の降圧薬は変更せずに継続した。ニフェジピンCRを常用量の40mgから80mgに増量し、同様にアムロジピンを5mgから10mgに増量した。増量から8週間後の24時間血圧とベースラインの24時間血圧を比較した。治療を終了したNCR 25例とAML 26 例を解析した。ベースラインの患者背景ならびに外来血圧、家庭血圧、24時間平均血圧(NCR 140.1±12.4 mm Hg vs. AML 144.3±13.5 mm Hg, p=0.25)に2群間で有意差はなかった。主要エンドポイントである24時間平均血圧は、両群ともにベースラインから有意に低下したが、降圧量は両群間で有意差がなかった(NCR -22.0±10.5 mm Hg vs. AML -17.3±15.3 mm Hg, p=0.93) (図)。臓器保護効果の指標であるUACRはNCR群で 有意に低下し、NTproBNPはAML群で有意に低下したが、両群間比較で有意差はなかった。

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【コメント】
 実臨床で、コントロール不良の高血圧患者に対してカルシウム拮抗薬が高用量に増量される場合が多い。しかし高用量のNCRとAMLの24時間血圧における降圧効果に関するデータは少なかった。本研究でNCRとAMLの高用量療法は、コントロール不良の高血圧患者に対して有効な治療であり、降圧効果が同等であることが示された。


32.Comparative Effects of an Angiotensin II Receptor Blocker (ARB)/Diuretic vs. ARB/Calcium-Channel Blocker Combination on Uncontrolled Nocturnal Hypertension Evaluated by Information and Communication Technology-Based Nocturnal Home Blood Pressure Monitoring - The NOCTURNE Study.
Circ J. 2017 Mar 17.in press.
コントロール不良の夜間高血圧患者において、ARBを基礎とした2種類の併用療法(ARB/利尿薬、ARB/カルシウム拮抗薬)の効果を、情報通信技術(ICT)を利用した夜間血圧計を用いて評価し比較する:NOCTURNE研究

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Kazuomi Kario/ 苅 尾 七 臣

【概要】
NOCTURNE研究は、夜間高血圧の日本人患者411例にARBを基礎とした2種類の併用療法を行い、ICTを利用した夜間血圧計を用いて夜間血圧低下効果を評価・比較した多施設ランダム化比較試験である。ARB 100mg/日を投与しても、夜間血圧が≧120/70 mmHgの患者を登録。ARB/CCB併用療法(イルベサルタン 100mg+アムロジピン 5mg)は、ARB/利尿薬併用療法(イルベサルタン 100mg+トリクロルメチアジド1mg)に比較して主要エンドポイントである登録8週後の夜間収縮期家庭血圧が有意に低く(-14.4 vs. -10.5 mmHg, P<0.0001)、この結果は尿中ナトリウム排泄や夜間血圧下降状況(dipping status)とは独立していた。一方Post-hoc解析の結果ではあるものの食塩感受性が高いグループ(糖尿病、慢性腎疾患、高齢者)の夜間家庭収縮期血圧は、両併用群間に有意差はなかった。 本試験はICT技術を利用した夜間家庭血圧計の臨床活用可能性を示した最初のランダム化比較試験である。コントロール不良夜間高血圧患者へのARB/CCB併用療法はARB/利尿薬を上回ることが示されたが、食塩感受性の高い患者群においては2つの併用療法の夜間血圧低下効果に有意差はなかった。


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【コメント】
本試験の新規性は3点ある。1つ目は、初めて夜間高血圧患者をターゲットにし、エンドポイントを夜間血圧にした臨床試験である。これまでの臨床研究においても、降圧療法中の高血圧患者における夜間高血圧は最大のリスクとなることが明らかになっている。2つ目は、我々が開発を進めるICT夜間家庭血圧モニタリングシステムを用いて、ABPMではなく家庭血圧で夜間血圧を測定した点、3つ目が患者宅よりダイレクトにデータを取得した点である。アンジオテンシン受容体拮抗薬をベースにしたコンビネーション治療として、利尿薬に比較してカルシウム拮抗薬が優れることが明らかになった。高齢者、慢性腎臓病、糖尿病など食塩感受性高血圧群では、いずれの併用療法も降圧効果に差がないことから、いずれの併用療法も有用である。循環器イベントゼロを目指した近未来の高血圧管理は、早朝・夜間血圧をターゲットにしたICTベースの個別予見医療である。

31.症例報告
A lack of day-by-day variability in blood pressure in a case of Cushing’s disease.
J Hum Hypertens. 2017 Mar 23. in press.
血圧変動性が消失したクッシング病の一症例

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Kazuo Eguchi/江 口 和 男

【概要】
症例は64歳 男性、主訴は下肢のむくみ、血圧高値で3年前より高血圧にて治療中だったが、数か月前より腋窩から黄色い皮脂分泌、頭髪の脱毛に気づき、近医で降圧治療をしていたが、血圧が下がらず、下腿浮腫もあるため紹介された。初診時、血圧182/113mmHg, 脈拍91/min、身体所見では足関節以下に著明な浮腫あり。ACTH 277.4pg/ml (9-52)、コルチゾール53.8μg/dl (4.5-21.1)、頭部MRIにてトルコ鞍部に腫瘍を認め、下垂体性クッシング病と診断した。Hardy手術を行い、病理所見は下垂体腺腫であった。手術後、血圧コントロール、血糖値は正常化した。家庭血圧で評価した収縮期血圧の変動係数(CV)は術前2.7%から術後 4.2%、拡張期血圧のCVは3.2% から5.4%へ増加した。

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【コメント】
本症例は、2次性高血圧における病的状態では血圧変動性が変動するという例であり、血圧変動性が消失する場合、何らかの基礎疾患を考慮しなくてはならない。


30.Difference in evening home blood pressure between before dinner and at bedtime in Japanese elderly hypertensive patients.
J Clin Hypertens. 2017 Mar 14. in press.
家庭血圧測定における夕食前血圧値と就寝前血圧値の比較

Takeshi Fujiwara/藤 原 健 史

【概要】
国内外の主要高血圧ガイドラインを比較すると、夜の家庭血圧測定のタイミングとして、欧米では夕食前、日本では就寝前、がそれぞれ推奨されている。しかし、これらの測定値の差を比較した臨床研究はない。48名の本態性高血圧患者に対して、夕食前と就寝前含めて、14日間家庭血圧測定を行い、それら全ての測定値を評価対象とした。就寝前血圧値は夕食前血圧値と比較して、8.7 mmHg低値であった。マルチレベル分析を用いて、これら2つの測定値の差に影響を与える因子を検討したところ、入浴後120分以内と飲酒、の2つの因子は夕食前血圧値と比較して就寝前血圧値を有意に低下させる独立した因子であり、さらにこれらの2つの因子は相加的な就寝前血圧値の低下作用を示した。

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【コメント】
就寝前血圧値は夕食前血圧値と比較して大きく低値であった。JSH2014ガイドラインで推奨されている就寝前血圧測定は、入浴や飲酒の影響を受けることによって、本来の血圧値を過小評価する可能性がある。患者の生活スタイルを適切に把握し、夜の家庭血圧測定のタイミングを状況に応じて個別に指導する必要がある。


29.Association between nondipper pulse rate and measures of cardiac overload: The J-HOP Study.
J Clin Hypertens. 2017 Feb 3. in press.
Non-dipper PRと心容量負荷との関連

Yusuke Oba/大 場 祐 輔

【概要】
高血圧患者において, Non-dipper PRと心血管イベントの関連が知られているが, 臓器障害との関連については不明である。そのため, Non-dipper PRと高血圧性臓器障害の関連について調べた。 Non-dipper PR群(n=213)はdipper PR群(n=727)に比べ, 有意にBNP≥35 pg/mlの割合が高かった(39.9% vs 26.1%, P<0.001)。 女性においては, Non-dipper PR群はdipper PR群に比べ, 有意にLVMIが高値であった(mean LVMI: 111.3±32.4 vs 104.2±26.7 g/m², P=0.03)。 一方, UACR, baPWVとの関連は認めなかった。

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【コメント】
Non-dipper PRと高血圧性臓器障害との関連を調べると, 心・腎・血管の中でも, 心臓特異性があると考えられた。 Non-dipper PRとCardiac overloadとの関連を示した初めての報告である。


28.症例報告
Intra-Plaque Hematoma and Minor Intimal Disruption Detected by Optical Frequency Domain Imaging in a Case of Acute Coronary Syndrome.
Int Heart J. 2016; 57: 760-762.
OFDIによって冠動脈プラーク内血腫と微小な内膜亀裂が観察された急性冠症候群の一例

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Motoki Fukutomi/ 福 冨 基 城

【概要】
急性冠症候群 (ACS) を発症した39歳男性に対して緊急カテーテルが施行されたところ、左前下行枝近位部に75%狭窄を認めた。同部位を光干渉断層撮影 (Optical Frequency Domain Imaging: OFDI) で観察したところ、内膜の微小な亀裂と少量の血栓を伴うプラーク内血腫が観察された。同部位にステント留置して手技を終了した。

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【コメント】
これまでOFDIで観察された冠動脈の血腫についていくつか報告されているが、多くはカテーテル手技に伴う医原性の血腫や、特発性冠動脈解離に伴う中膜-外膜間の血腫である。しかしながら本症例の血腫は内膜-中膜間に存在しており、かつ内膜の微小な亀裂と血栓を伴っていたことから、プラークラプチャーの非常に早期の段階における、プラーク内への血流流入を見ている可能性がある。あるいはプラーク内のvaso vasorumの破綻によるプラーク内出血の可能性も考えられる。現時点で病態の詳細を特定することはできないが、プラーク内血腫がACS発症に関与している可能性を示す興味深い症例であった。




27.Riser Pattern Is a Novel Predictor of Adverse Events in Heart Failure Patients With Preserved Ejection Fraction.
Circ J. 2016 Dec 23 in press.
Riser型血圧変動パターンはHFpEFの新しい予後因子である

tkomori

Takahiro Komori/ 小 森 孝 洋

【概要】
血圧日内変動異常がHFpEFの予後不良と関連するかどうかを検討した。自治医大附属病院へ入院した516名の心不全患者に対し、ABPMを施行して20か月予後を追跡したところ、220名に複合エンドポイントが生じた。多変量解析を行ったところ、HFpEFではriser型血圧変動は予後規定因子であった(HR 3.01 95%信頼区間1.54-6.08, p<0.01)が、HFrEFでは予後と関連がなかった。

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【コメント】
本研究はHFpEFにおいて血圧日内変動異常が予後不良と関連していたことを示した初めての報告である。HFpEFの予後を改善させる治療薬は未だ明らかになっていないが、本研究をふまえると血圧日内変動パターンへの介入がHFpEFの予後改善につながる可能性が考えられた。


26.症例報告
Usefulness of three-dimensional optical frequency domain imaging for diagnosing in-stent restenosis due to a stent fracture.
EuroIntervention. 2016 Dec 10; 12 :e1438.
ステントフラクチャーによるステント内再狭窄の診断に3D-OFDIが有用であった一例

Yusuke Oba/大 場 祐 輔

【概要】
74歳男性。 労作性狭心症の診断で回旋枝に薬剤溶出性ステントを留置した。 33ヵ月後に同部位の再狭窄を認めた。 前拡張した後OFDIで観察したところ、ステントの完全断裂を認めた。断裂部ではマクロファージの集積を思われる所見や壁在血栓を疑わせる所見を認めたことから、 ステント断裂部の持続的なmechanical stressに伴う再狭窄が疑われた。 薬剤溶出性バルーンで薬剤塗布し、 治療を終了した。

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【コメント】
本症例は、OFDIによりStent fractureを明瞭に可視化することに成功した。第2世代DESになり、ステント内再狭窄の頻度は減少したものの、 本症例のようにStent fractureは未解決の問題である。 OFDIによりステント内再狭窄の病態を把握することは、治療方針の決定に有用と考えられる。


25.Locomotive syndrome is associated with large blood pressure variability in elderly hypertensives: the Japan Ambulatory Blood Pressure Prospective (JAMP) substudy.
J Clin Hypertens. 2016 Nov 15. in press.
ロコモティブシンドロームは高齢高血圧患者において血圧変動性増大と関連する
―JAMP研究サブ解析―

yimaizumi

Yuki Imaizumi/ 今 泉 悠 希

【概要】
ロコモティブシンドローム(LS)とは運動器の障害により要介護リスクの高い状態である。ADLが自立した高齢高血圧患者ではLSが昼間の血圧変動性増大に関連している、との仮説を明らかにするため、本研究を実施した。大島在住の高齢者85名において、LSスケール、抑うつ状態の指標self-rating questionnaire for depression(SRQD)、ABPMの昼夜別の収縮期血圧平均値(SBP)、SBPの標準偏差(SD-SBP)と変動係数(CV:SD/平均値)との関連を検討した。対象者の平均年齢は79.2歳(女性62.4%)で、LSスケールは昼間のSD-SBPとCV-SBP、および夜のSBPと関連した(すべてp<0.05)。一方でSRQDはABPMと関連しなかった。LSスケールとSRQDをそれぞれ4分位(Q1-4)に分けると、LSスケールのQ4ではQ1と比較して有意にSD-SBPが高値であり、関連因子で補正後も有意であった(p=0.041)(図)。LSのコンポーネント毎(疼痛、移動機能の低下、生活活動制限、社会参加制限、認知機能低下)では、移動機能の低下が昼間のSD-SBPと(β=0.24, p<0.05)、生活活動制限が昼間のSD-SBP(β=0.32, p<0.01)およびCV-SBP(β=0.27, p<0.05)と関連した。高齢高血圧患者において、LSは昼間の血圧変動性増大と関連した。ロコモティブシンドロームは血圧変動性の重要な規定因子となる可能性が示唆された。

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【コメント】
・高齢化社会では、高齢者特有の病態を理解し、個別の心血管イベント予防策が重要です。
・Frailな高齢者で心血管リスクが上昇するとの報告は散見しますが、その背景は明らかになっていません。Frailの進行度別(ADL自立/寝たきり)の考察や、昼夜別の血圧変動性についても報告がありません。本研究では、比較的初期のFrail(ADL自立)ではLSが血圧変動性増大と関連することを、ABPMを用いて初めて報告しました。
・高齢者では、古典的心血管危険因子に加えロコモティブシンドロームも、血圧変動性増大を介して心血管疾患のリスクとなりうる可能性が示唆されました。


24.Impact of Renal Denervation on Patients With Obstructive Sleep Apnea and Resistant Hypertension - Insights From the SYMPLICITY HTN-3 Trial.
Circ J. 2016; 80:1404-12.
治療抵抗性高血圧と睡眠時無呼吸症候群の合併患者における腎デナベーション:SYMPLICITY HTN-3 Trial

kkario

Kazuomi Kario/ 苅 尾 七 臣

【概要】
治療抵抗性高血圧患者への腎デナベーションをシャム手技群と比較した大規模ランダム化比較試験SYMPLICITY HTN-3 trial のデータを、睡眠時無呼吸症候群(OSA)の有無で層別化して後付け解析した。OSAは腎デナベーション群の26%(94/367例)、シャム群の32%(54/171例)であった。ベースラインの診察室収縮期血圧と夜間収縮期血圧は両群で同等。OSA患者の6ヵ月後の診察室収縮期血圧は、シャム群との比較において腎デナベーション群で有意に低下したが(-17.0±22.4 vs. -6.3±26.1 mmHg, P=0.01)、OSAのない患者では有意差はみられず。さらに最大・夜間収縮期血圧および平均ピーク・夜間収縮期血圧も腎デナベーションでシャム群との比較において有意に低下した。

【コメント】
OSA患者に対し腎デナベーションは奏効すると考えられる。 今後、前向きの検討を要する。

23.Dose Timing of an Angiotensin II Receptor Blocker/Calcium Channel Blocker Combination in Hypertensive Patients With Paroxysmal Atrial Fibrillation.
J Clin Hypertens. 2016 Mar 16. in press.
発作性心房細動を合併する高血圧患者へのARB/CCB配合剤投与のタイミング:ACROBAT研究

kkario

Kazuomi Kario/ 苅 尾 七 臣

【概要】
発作性心房細動を合併する高血圧患者において、テルミサルタン/アムロジピン配合錠の朝投与と就寝前投与の降圧効果を、ABPMおよび家庭血圧計で測定した血圧値および血圧変動性によって評価したオープンラベル多施設共同ランダム化比較試験の結果の報告。ABPMで測定した24時間血圧、夜間血圧、起床前血圧、早朝血圧は両群ともにベースラインとの比較において12週時点で有意に低下したが、群間に差はなかった。家庭収縮期血圧の日間変動性(SD)や最大家庭収縮期血圧もベースラインに比較して12週時点で有意に低下したが、群間に差はなかった。NT-proBNP、HsTnT、UACR値は就寝前投与群のみでベースラインと比較して有意に低下した。

【コメント】
発作性心房細動を合併する高血圧患者に対する長時間作用型CCBとARBの合剤では就寝前投与と朝投与では、投与時間に差がなく24時間血圧、早朝家庭血圧、家庭血圧変動性は有意に低下した。心房細動再発リスクの抑制効果については大規模ランダム化比較試験が必要であろう。

22.Long sleep duration: a nonconventional indicator of arterial stiffness in Japanese at high risk of cardiovascular disease: the J-HOP study.
J Am Soc Hypertens. 2016; 10: 429-437
長時間睡眠:心血管疾患ハイリスク群での血管スティッフネスの新たな指標

sniijima

Satoshi Niijima/ 新 島 聡

【概要】
加齢や高血圧、短時間睡眠などは血管スティッフネス増加の重要な危険因子であることは良く知られている。また、長時間睡眠も血管スティッフネス増加の危険因子であることが最近明らかにされたが、まだまだ報告は少なく心血管疾患ハイリスク群での報告はない。本研究では、心血管疾患ハイリスク群での睡眠時間と脈波伝播速度・高感度CRPとの関連を調べた。心血管リスクを1つでも有する患者(n=2304、平均年齢64.7歳、男性49.6%)を対象に、睡眠時間の調査と脈波伝播速度・高感度CRPの測定を行った。睡眠時間を3群(<6hr, ≧6 to <8hr, ≧8hr)に分けて解析した結果、睡眠時間は脈波伝播速度の上昇と有意に関連していた (1594 vs 1644 vs 1763 cm/s, p<0.0001)。この関係は年齢・血圧・BMI・HbA1cで補正後も保たれていた。また、高感度CRPの上昇も脈波伝播速度の上昇と有意に関連しており(p<0.05)、睡眠時間が長く高感度CRPが高値である群で脈波伝播速度は最も上昇していた。

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【コメント】
心血管疾患ハイリスク群での睡眠時間と血管スティッフネスの関連を明らかにした初めての報告である。 長時間睡眠で血管スティッフネスが増加するメカニズムは短時間睡眠とは異なる可能性があり、解明のための更なる研究が必要と考える。


21.Morning Home Blood Pressure Is a Strong Predictor of Coronary Artery Disease: The HONEST Study.
J Am Coll Cardiol. 2016 Apr 5;67(13):1519-27.
早朝家庭血圧は冠動脈疾患の強力な予測因子である:HONEST研究

kkario

Kazuomi Kario/ 苅 尾 七 臣

【概要】
冠動脈イベント発生の予測因子として診察室外血圧を検討した試験は少ない。本試験では早朝家庭血圧が冠動脈心疾患(CAD)イベント発生の予測因子であるかを検証した。 HONEST研究のデータを用いて脳卒中あるいはCADと、早朝家庭血圧との関連を調査。治療中の高血圧患者21591例(平均年齢64.9歳、平均追跡期間は2.02年)において脳卒中イベント127件(2.92/1000人年)、CADイベント121件(2.78/1000人年)が発生。脳卒中イベントは早朝家庭収縮期血圧(HSBP)≧145 mmHgの患者のほうが同<125 mmHgよりも有意に多く、診察室収縮期血圧(CSBP)でも同≧150 mmHgの患者のほうが<130 mmHgよりも有意に多かった。早朝HSBP<125 mmHgと比較した≧155 mmHgのハザード比は6.01(95%CI 2.85~12.68)であり、CSBP<130 mmHgと比較した≧160 mmHgの患者のハザード比は5.82 (95% CI: 3.17 ~10.67)であった。早朝HSBPはCSBPと同様に脳卒中イベントを予測することが明らかになった。 早朝HSBP<125 mm Hgに比較して、同≧145 mm Hgの患者ではCADイベント発生率が有意に高く、またCSBP<130 mmHgに比較してCSBP ≧160 mm Hgの患者でも同様に高かった。早朝HSBP≧155 mmHgのハザード比は6.24 (95% CI: 2.82 ~ 13.84)、CSBP ≧160 mm Hgのハザード比は3.51(95% CI: 1.71 ~ 7.20)であった。このようにCSBPは、早朝HSBPとの比較においてCADリスクを過小評価する可能性がある。適合度検定では、早朝HSBPのほうがCSBPよりもCADイベント予測能が高いことが示された。

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【コメント】
血圧と冠動脈疾患との関連は脳卒中に比べて弱いことは広く知られている。今回の研究の新規性は、治療中の高血圧患者において、早朝家庭血圧と冠動脈疾患の関連は、脳卒中との関連に勝るとも劣らないことを初めて示した点にある。また、脳卒中あるいは冠動脈疾患と、早朝家庭血圧との間にJカーブ現象はみられない。早朝家庭血圧を指針にした高血圧治療の重要性を示す研究成績である。


20.症例報告
A Cushing's syndrome patient's severe insomnia and morning blood pressure surge both improved after her left adrenal tumor resection.
Blood Press Monit. 2016 Jul 25. in press.
副腎腺腫摘出術により睡眠障害と著明なモーニングサージが改善したクッシング症候群の一例

yimaizumi

Yuki Imaizumi/ 今 泉 悠 希

【概要】
クッシング症候群では高血圧や心血管疾患のリスクが高いことが知られている。しかし、その背景の病態は十分に解明されていない。今回我々は、高血圧と睡眠障害を主訴に来院した若年女性において、コルチゾール産生性の左副腎腺腫によるクッシング症候群と診断した。術前は、ABPMにおける24時間血圧レベルは156/91 mmHg、早朝血圧は174/98 mmHgであり、著明なモーニングサージを認めていた(図)。しかし術後は、降圧薬を減量したにも関わらず、24時間血圧レベルは131/84 mmHgへ改善した。中でも早朝血圧は127/93 mmHgへ改善し、モーニングサージは消失した。さらに、ピッツバーグ睡眠質問票で評価した睡眠の質は、術前7点(睡眠障害あり)から術後2点(睡眠障害なし)へ改善した。 本症例では術前術後に睡眠の質の評価とABPMを行い、術後に睡眠の質と著明なモーニングサージがともに改善した。クッシング症候群で心血管リスクが多い背景のひとつに、睡眠障害が著明な早朝高血圧を引き起こし、イベントのトリガーとなっている可能性も示唆された。

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【コメント】
・クッシング症候群における血圧日内変動異常パターンとしては、夜間血圧降下の欠如が報告されているのみです。本報では、クッシング症候群における血圧日内変動異常パターンとして著明なモーニングサージを認めたこと、さらにそれが術後に改善したことを初めて報告しました。
・クッシング症候群では睡眠障害が報告されていますが、本報では術後に睡眠障害が改善したことを初めて報告しました。
・術前術後に睡眠の質と血圧日内変動リズムの評価を行うことで、クッシング症候群における高血圧や心血管疾患発症の病態解明につながると考えられたため、症例報告としてまとめました。

19.Novel Triggered Nocturnal Blood Pressure Monitoring for Sleep Apnea Syndrome: Distribution and Reproducibility of Hypoxia-Triggered Nocturnal Blood Pressure
J. Clin. Hypertens. 2016 Jul 14. in press.
SASの血圧サージを検出する夜間トリガード血圧計の開発 -トリガード血圧指標の再現性と分布-

mkuwabara

Mitsuo Kuwabara/桑 原 光 巨

【概要】
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、国内罹患者数が数百万人と推定され、また治療抵抗性高血圧となる二次性高血圧の最も多い要因であり、夜間発症の心臓突然死や脳血管疾患の重大な危険因子とされている。OSASは、夜間睡眠中に周期的な低酸素血症を繰り返すが、この低酸素血症発作時に、急峻で甚大な血圧サージ(スリープサージ)を起こす。夜間血圧測定のゴールドスタンダードとされる自由行動下血圧計(ABPM)では、無呼吸の時相に同期して血圧測定ができないため、スリープサージを検出できずリスクを過小評価する可能性がある。我々は最近、無呼吸発作時の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の低下をトリガーにしてスリープサージを検出する夜間低酸素トリガード血圧計を開発した。本研究では、OSASの疑いのある147名に夜間低酸素トリガード血圧計を2晩連続で適応した。夜間低酸素トリガー血圧計は、SpO2がベースライン時から10%低下した時に血圧計測を実施するトリガー計測モードとABPMと同様に一定間隔で血圧計測を実施するインターバル計測モードを搭載した。トリガー計測モードで計測された夜間血圧の中で最も高い値を低酸素ピーク血圧と定義し、インターバル計測モードで計測された血圧平均値(インターバル平均血圧)と血圧レベルおよび再現性を比較検討した。低酸素ピーク血圧はインターバル平均血圧と比較して有意に高値であり、その分布も大きかった(平均値±標準偏差: 148.8±20.5 vs. 123.4±14.2 mmHg)。中にはインターバル平均血圧が120mmHg程度であっても低酸素ピーク血圧は200mmHgまで上昇している症例も観測された。低酸素ピーク血圧とインターバル平均血圧の再現性は同等であった。

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【コメント】
本研究において、世界で初めて睡眠時無呼吸に伴う血圧上昇を反映した血圧指標と従来のABPMによる血圧指標の血圧レベルおよび再現性の比較検証が行われた。睡眠時無呼吸に同期して計測された低酸素ピーク血圧は従来のインターバル平均血圧に比較して有意に高く、従来の計測手法では捉えきれなかったリスクのある血圧情報を捉えることが可能になったと考えている。またその再現性も比較的良好であったことから、臨床応用し得る指標と捉えている。


18.The measurement of orthostatic blood pressure as  a screening tool for masked hypertension with abnormal circadian blood pressure rhythm.
Hypertens Res. 2016 Jun 16. in press.
起立時の血圧測定は、異常な血圧日内変動リズムをもつ仮面高血圧のスクリーニングに役立つ

tkomori

Takahiro Komori/ 小 森 孝 洋

【概要】
本稿は健常人で仮面高血圧と起立性高血圧の関連性を論じたTabaraらの論文へのコメントである。仮面高血圧は心血管リスクの高い状態であり、そのスクリーニングが問題となる。Tabaraらは仮面高血圧と起立性高血圧は有意に関連していたことを示した。起立性高血圧患者ではモーニングサージ型の血圧変動パターンをとることが知られている。起立性高血圧の有無を調べることでモーニングサージ型の血圧上昇を来す仮面高血圧を同定することができる。しかしこの方法の問題点としては、血圧測定方法が確立されていないことと、起立性低血圧を来す夜間高血圧型の仮面高血圧を同定できないことが挙げられる。

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【コメント】
起立性血圧変動を示す患者には、仮面高血圧の診断のために24時間血圧測定を行うべきである。


17. Prognostic significance of on-treatment home and clinic blood pressure for predicting cardiovascular events in hypertensive patients in the HONEST study.
J Hypertens. 2016;34:1520-7.
追跡中に測定した家庭血圧と診察室血圧の心血管イベント予測能を高血圧患者において検討する:HONEST研究

kshimada

Kazuyuki Shimada/ 島 田 和 幸


 ベースラインと追跡中の早朝家庭収縮期血圧と診察室収縮期血圧の予後予測能を、降圧療法中の高血圧患者において検討した。オルメサルタン治療中の日本人高血圧患者2万人以上を対象としたHONEST研究において、心血管イベント発症を2年間追跡。ベースラインと追跡中に早朝家庭収縮期血圧(MHSBP)と診察室収縮期血圧(CSBP)を測定し、心血管イベント予測能を比較。
 21591例(女性50.6%、平均年齢64.9%、平均追跡期間2.02年、心血管イベント280件)を解析。MHSBPとCSBPの平均値はベースラインで各151.2、153.6 mmHg、追跡中で135.2、135.2 mmHgであった。1 mmHg 上昇に伴うハザード比の上昇は1.011(95% 信頼区間1.004~1.019)であった。
 ベースラインと追跡中のMHSBPとCSBPを同じモデルに入れると、追跡中のMHSBPが予測因子として有意であった。すべての血圧変数に関するconcordance indexは妥当であり、同indexは追跡中の平均SBPのほうがベースラインのSBPよりも高かった。net reclassification improvement解析では追跡中のMHSBPのほうが追跡中のCSBPよりもreclassification abilityが高いことが明らかになった。

結論:日本人高血圧患者を2年間追跡した結果、追跡中のSBP(ベースラインSBPとの比較)、特にMHSBP(CSBPとの比較)の心血管イベント予測能が高いことが明らかになった。

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【コメント】
降圧薬オルメサルタンの市販後臨床調査(フェーズⅣ)の一環であるHonest studyのサブ解析論文です。我が国でも、最近は企業主導の大規模臨床試験が科学的に実施されるようになり、企業の統計部門専門家との共同研究は勉強になります。診察室血圧と家庭血圧を比較して、どちらがイベントに関連するかを数量的に解析するのに、幾つかの方法があることを学びました。



16. Evidence and Perspectives on the 24-hour Management of Hypertension: Hemodynamic Biomarker-Initiated 'Anticipation Medicine' for Zero Cardiovascular Event.
Prog Cardiovasc Dis. 2016 Apr 11. in press.
パーフェクト24時間血圧コントロール:心血管イベントゼロを目指す「予見医療」

kkario

Kazuomi Kario/ 苅 尾 七 臣

【概要】
アジア人は欧米人よりも過度の血圧モーニングサージが多くみられるうえに、高血圧と心血管疾患イベント発症の関連が強いため、早朝・夜間を含めた「パーフェクト24時間血圧コントロール」の達成が極めて重要である。「パーフェクト24時間血圧コントロール」とは24時間血圧レベルのコントロール、夜間血圧低下、血圧変動抑制からなる。達成への第一歩は、家庭血圧、特に早朝血圧を基礎とした血圧管理である。夜間血圧管理のため、我々は夜間家庭血圧計を開発した。血圧変動については先頃我々が提唱した「血圧共振仮説」がある。血圧変動は1心拍ごと、体位、日内、日間、受診間、季節、年ごとにみられるが、これらの変動が一度に「共振」することで、心血管イベントをトリガーするダイナミック血圧サージ が起こりうるというものである。これは全身血行動態アテローム血栓症候群(SHATS)のある患者において特にリスクとなる。最近、1心拍ごとの血圧を測定するウェアラブル・サージ血圧計(WSP)を企業と共同開発した。この機器を、情報通信技術(ICT)を利用した解析システムとともに用いることで血圧管理を点からシームレスへとパラダイムシフトし、さらに個人レベルの予見医療を実現することで、心血管イベントゼロを達成したい。

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【コメント】
1心拍ごとの血圧値を連続で測定する世界初の血圧測定機器(WSP)を用いて血圧変動をとらえ、「パーフェクト24時間血圧コントロール」を達成し、さらに個人レベルの「予見医療」実現によって心血管イベントゼロを目指す。



15. Morning and Evening Home Blood Pressure and Risks of Incident Stroke and Coronary Artery Disease in the Japanese General Practice Population: The Japan Morning Surge-Home Blood Pressure Study.
Hypertension. 2016 May 9. in press.
外来通院患者における家庭血圧での早朝、就寝前血圧と心血管イベントの関連

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Satoshi Hoshide/ 星 出 聡

【概要】
JHOP研究は、2005年から開始された日本全国の実地医科、一般病院、大学病院の先生方(71施設、75名)の協力により、心血管リスクを一つ以上もつ外来通院患者4310名を登録し、ベースライン時において家庭血圧を2週間測定(早朝、就寝前、一機会3回)し、予後追跡を行いました(平均フォローアップ4年)。期間中、脳卒中発症が74イベント、心イベント(PCIを要する狭心症、心筋梗塞発症)が77イベント発生しました。脳卒中イベントに対する、診察室血圧を含んだフラミンガムスコア予測モデルに、早朝血圧レベルを入れることで予測能は統計学的に有意に改善し、就寝前血圧と早朝、就寝前血圧の平均値についてはこれらの傾向は認めませんでした。心イベント発症に関しては、早朝、就寝前血圧レベルのいずれも関連を認めませんでした。

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【コメント】
家庭血圧測定は、日本の高血圧診療において当たり前のように行われています。日本人のリスクが高い集団において、早朝血圧による血圧管理を、古典的な危険因子の管理に加えることで脳卒中発症抑制につながる可能性があることを明確に示すことができた初めての報告です。


14. Effect of Intensive Salt-Restriction Education on Clinic, Home, and Ambulatory Blood Pressure Levels in Treated Hypertensive Patients During a 3-Month Education Period.
J Clin Hypertens. 2016 May;18: 385-92.
高血圧患者における積極的な減塩指導に対する外来血圧、家庭血圧、自由行動下血圧への効果

mnakano

Masahiro Nakano/ 中 野 真 宏

【概要】
食塩の過剰摂取により血圧が上昇することはよく知られており、INTERSALT 試験をはじめとした多くの介入試験で減塩による降圧効果が証明されている。本研究では、治療中の高血圧患者を対象に、通常の外来診療に加えて、栄養士による積極的な減塩指導を行うことにより、降圧効果が得られるかどうかについて検討した。この研究のデザインは前向き無作為非盲検化試験とし、栄養指導群(3か月間に5回の指導)とコントロール群(管理栄養士による栄養指導なし)の2群に分けて効果を比較した。
外来通院中の本態性高血圧患者において、管理栄養士による積極的な減塩指導によって、推定食塩摂取量は有意に減少し(6.8 ± 2.9g/24h vs. 8.6 ± 3.4 g/24h、P<0.01)、家庭血圧は低下傾向(P=0.051)、自由行動下血圧の各指標は有意に低下した(P<0.01)。12週間という比較的短期間であっても減塩の効果が確実に現れており、減塩の栄養指導を積極的に行うことは、降圧治療中の高血圧患者において更なる血圧降下作用をもたらす。

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【コメント】
これまでに、高血圧患者に対する減塩の降圧効果を検討した研究は数多く存在するが、管理栄養士による減塩効果を外来、家庭、自由行動下血圧を用いて評価した研究は調べた限り皆無と思われる。高血圧治療ガイドライン2014においても、減塩が降圧治療の基本であると述べられているが、減塩の栄養指導については言及されていない。
本研究では、医師が外来で減塩の指導を行うのとは対照的に、管理栄養士が専門職を生かし、塩分嗜好調査票などを用いて患者の嗜好を分析した上で減塩指導を行ったことで、患者の好みと実際の食塩摂取量に応じた個別の減塩指導が可能となり、患者の食塩摂取に対する行動変容がもたらされ、減塩に繋がったことが考えられた。


13.症例報告
Electron Microscopy of Contact Between a Monocyte and a Multinucleated Giant Cell in Cardiac Sarcoidosis.
Can J Cardiol. 2016 Feb 23. in press.
心サルコイドーシスにおける非乾酪性類上皮肉芽腫の電顕所見

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Yuki Imaizumi/ 今 泉 悠 希

【概要】
心臓サルコイドーシスの病態や肉芽腫の形成過程には不明な点が多い。今回我々は、心臓サルコイドーシスの症例における心筋生検において、光顕と電顕の両方で肉芽腫を同定した。症例は78歳の男性、完全房室ブロックと左心不全で入院となり、両側肺門部リンパ節腫脹と心エコー上心室中隔の菲薄化より心臓サルコイドーシスを疑い、右室心内膜下心筋生検を施行した。光顕にて6個中2個に多核巨細胞を伴う非乾酪性類上皮肉芽腫を認め(画像A)、電顕でも典型的な類上皮肉芽腫の形成を認めた(画像B)。さらに肉芽腫辺縁の単球(画像B矢印)が巨細胞(☆)とGap junctionを介して接触していた(画像Cの赤枠、画像D矢印)。今まで、In vitroでは単球が巨細胞へ融合する所見の報告があるが、in vivoで肉芽腫や巨細胞の形成過程をとらえた報告はない。心臓サルコイドーシスの病態解明に向けて、この単球と巨細胞間の細胞間コミュニケーションが免疫的な機序によるものか細胞融合によるものかを明らかにすることが必要と考えられた。

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【コメント】
本症例は心臓サルコイドーシスの心筋電顕所見で肉芽腫および巨細胞の形成過程をとらえた世界で初めての報告である。いまだ不明な点が多い、難病 心臓サルコイドーシスの病態解明に寄与する一所見であると考えられ報告した。





12.症例報告
Life- and limb-saving endovascular therapy in a patient with acute abdominal aortic occlusion.
Cardiovasc Interv Ther. 2016 Apr 18. in press.
腹部大動脈の急性動脈閉塞症に対して血管内治療を行い、救肢救命し得た1症例

storiumi

Shinichi Toriumi/ 鳥 海 進 一

【概要】
今回我々は、腎動脈分岐下腹部大動脈から両側総腸骨動脈にかけての急性血栓性動脈閉塞症例に対し、血管内治療を行い救肢救命し得たので報告する。患者は79歳、男性。日常生活活動は自立しており、症状はなかったが、突然両下肢の重症虚血症状が出現し当院へ救急搬送された。胸腹骨盤部造影CT検査で、胸部大動脈瘤の壁在血栓遊離が原因と考えられる腎動脈分岐下腹部大動脈から両側総腸骨動脈にかけての急性動脈閉塞症と診断された。Fogartyによる外科的血栓除去術が検討されたが、あいにく当院心臓血管外科も周辺の医療機関も対応中であったため、救肢救命のための緊急的措置として血管内治療を試みる方針となった。幸い、治療は成功し、外科的治療を追加することなく良好な経過を示し、後日リハビリ施設へ軽快転院した。

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【コメント】
腹部大動脈を含む急性の血栓性動脈閉塞症例に対して、血管内治療のみで救肢救命したとする世界で初めての報告である。 重篤な急性の血栓性動脈閉塞症例に対する血管内治療は、確立された治療法ではないため、確かに挑戦的である。しかし、今回のような“外科医が今すぐには対応できないが、現行の手術が終わり次第、対応可能となり得る”というような状況においては、外科の追加治療を見据え、緊急措置的な治療法として、血管内治療が一つの選択肢になり得るかもしれない。

11. Riser Pattern: Another Determinant of Heart Failure With Preserved Ejection Fraction.
J Clin Hypertens. 2016 Apr 3. in press.
Riser型血圧変動:収縮能の保たれた心不全(HFpEF)の一つの規定因子

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Takahiro Komori/ 小 森 孝 洋

【概要】
夜間血圧の上昇するRiser型血圧変動は心血管予後不良と関連しているが収縮能の保たれた心不全(HFpEF)における意義は明らかでない。本研究ではHFpEFにおける24時間血圧の意義について検討した。508名の心不全患者(232名のHFpEF, 276名のHFrEF)に対し24時間血圧測定を行ったところ、HFpEFの28.9%、HFrEFの19.9%がRiser型血圧変動を示していた。HFpEFに関連する因子を多変量解析で検討すると、Riser型血圧変動は有意な関連因子であった(オッズ比1.73、P=0.041)。Riser型血圧変動はHFpEFと有意に関連していると考えられた。

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【コメント】
HFpEFに夜間の血圧上昇が強く関連していた。HFpEFはHFrEF同様予後不良の疾患である。夜間の血圧上昇が認められる場合、HFpEFへの進展を注意すべきである。


10. Development of a Triggered Nocturnal Blood Pressure Monitoring which Detects Nighttime Blood Pressure Surges in Sleep Apnea Syndrome.
Curr Hypertens Rev. 2016; 12 : 27-31
SASの血圧サージを検出する夜間トリガード血圧計の開発

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Mitsuo Kuwabara/桑 原 光 巨

【概要】
閉塞性睡眠時無呼吸は、無呼吸発作時に急峻で甚大な血圧上昇(スリープサージ)を引き起こし心血管系に深刻な圧負荷をもたらす。この圧負荷が脳卒中をはじめとする心血管疾患進行の有力な候補機序とされており、心血管系リスクの層別化には、このスリープサージの検出が有用であると考えられる。我々は最近、無呼吸発作時の経皮的動脈血酸素飽和度の低下をトリガーにしてスリープサージを検出する夜間低酸素トリガード血圧計を開発し、臨床応用に向けた取り組みを開始した。これまでに、入院時のSASを対象とした検査において、同程度の無呼吸・低呼吸指数であっても、本血圧計を用いて検出したスリープサージには、著明な個人差があることを見出している。また、このスリープサージは、経鼻的持続気道陽圧療法 (CPAP)で抑制されること、さらに、CPAPのコンプライアンスが不良な夜間高血圧患者11名のOSASに対するαβ遮断薬とカルシウム拮抗薬との効果の比較試験では、就寝前の両薬剤投与により、夜間血圧平均値のみならず無呼吸に伴うスリープサージが有意に低下することが確認できている。夜間低酸素トリガー血圧計を用いることで、これまで観測し得なかったリスクのある血圧変動の実態を検出でき、SASにおける高血圧管理に貢献する有力なツールとなることが期待される。

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【コメント】
夜間血圧の計測は、従来、一定時間間隔で血圧計測を行う自由行動下血圧計測(ABPM)がゴールドスタンダードであった。しかし、無呼吸の時相に同期して血圧計測ができずスリープサージを検出できない課題があった。我々が開発した夜間低酸素トリガー血圧計によって、これまで捉えることのできなかったリスクのある血圧上昇が初めて検出することができるようになった。今後は、本血圧計を実臨床に応用すべく、スリープサージと臓器障害および予後との関連エビデンスの集積を行い、同機の価値の実証を進めていきたい。


09. Differing Effects of Aliskiren/Amlodipine Combination and High-Dose Amlodipine Monotherapy on Ambulatory Blood Pressure and Target Organ Protection.
J Clin Hypertens. 2016; 18: 70-8.
アリスキレン/アムロジピン併用療法と高用量アムロジピン単独療法の24時間血圧と臓器保護に対する効果の違い

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Hiroyuki Mizuno/水 野 裕 之

【概要】
直接的レニン阻害薬アリスキレンは降圧効果と臓器保護効果を有するが、アリスキレン/アムロジピン併用(ALI/AML)療法と高用量アムロジピン単独(h-dAML)療法の24時間血圧における降圧効果と臓器保護効果を比較した研究は過去にない。我々は前向き、ランダム化、オープンラベル、2群間比較試験を施行した。AML 5mgで外来血圧140/90 mmHg以上の105例(平均年齢77才)を無作為にALI 150-300 mg/AML 5 mg併用群(n=53)と高用量AML 10 mg単独群(n=52)に分け16週間治療した。ベースラインの外来血圧、24時間血圧、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)、脈波伝播速度(baPWV)は両群間で差がなかった。外来収縮期血圧、24時間収縮期血圧、昼間の収縮期血圧、夜間収縮期血圧における降圧度、およびbaPWV改善効果は両群間で差がなかった。h-dAMLはALI/AMLと比較して有意にUACRを増加させた(P=0.02)。h-dAMLはALI/AMLよりも有意に早朝収縮期血圧を低下させ(P=0.002)、ALI/AMLはh-dAMLよりも有意にモーニングサージを上昇させた(P=0.001)。

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【コメント】
アリスキレンは過去の研究で降圧効果や臓器保護効果を示したにもかかわらず、従来療法にアリスキレンを追加する治療はプラセボと比較して心血管イベントを抑制できなかった。ALI/AML併用療法が早朝血圧とモーニングサージを抑制できなかったことが本研究の新規的発見であり、これがアリスキレンが心血管イベントを抑制できなかった原因である可能性がある。


08.症例報告
Recurrence of stroke caused by nocturnal hypoxia-induced blood pressure surge in a young adult male with severe obstructive sleep apnea syndrome.

J Am Soc Hypertens. 2016; 10 :201-4
夜間低酸素が夜間血圧サージをきたし30代で三度の脳卒中を睡眠中に発症した重症閉塞型睡眠時無呼吸の1例

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Tetsuro Yoshida/吉 田 哲 郎

【概要】
症例は37歳男性。10代の頃から高血圧を指摘されていたが特に降圧療法は受けていなかった。32歳時にラクナ梗塞を発症し、降圧療法を開始されている。その後35歳時に左被殻出血を発症している。いずれも睡眠中の発症であった。かかりつけの他院脳神経外科より血圧コントロール不良(SBP 160-200mmHg前後)とのことで当科紹介受診となった。内分泌学性・腎血管性高血圧のスクリーングを施行したが、有意な所見は認められなかった。降圧剤の調整をし、数か月後には診察室血圧は132/82mmHgまで低下した。以前より日中の眠気が強く、いびきもあるとのことで終夜パルスオキシメータにてスクリーングしたところ、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われたため、終夜睡眠ポリグラフを施行した。AHIは75.5と最重症のSASであり(閉塞型)、minimum SpO2は53%まで低下していた。またトリガー血圧計(SPREAD Registry)を用いた夜間血圧の評価では、無呼吸発生時の血圧サージは最大でSBP 200mmHg前後まで上昇しており、測定した異なる3日間とも同様の夜間血圧サージを認めていた。CPAPの適応があるため導入を試みたが、忍容性なく継続困難であった。最終診察日は特に自覚症状なく診察室血圧値も問題なかったが、その3日後就寝中に突如頭痛を発症し救急搬送され精査の結果、左被殻出血を発症したことが診断された。

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【コメント】
重症SASによる夜間血圧サージが若年にも関わらず複数回の脳卒中を発症したトリガーになったと考えられた。夜間高血圧、特に重症無呼吸症候群に伴う夜間血圧サージは強力な脳血管イベントのリスクとなる可能性がある。しかし同程度の無呼吸による低酸素状態となっても血圧サージをきたさない症例も経験し、この差が何に起因するのかの検討がリスクの層別化には必要である。またこのような著明な夜間血圧サージをきたす症例に対してどのようなストラテジーで介入していくか今後検討したい。

07. Evaluation of day-by-day variability of home blood pressure using a home blood pressure telemonitoring system.
Blood Press Monit. 2016; 21: 184-8.
遠隔モニタリングシステム搭載型血圧計と従来型血圧計における家庭血圧日間変動性の検討

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Toshiki Kaihara/貝 原 俊 樹

【概要】
家庭血圧の日間変動が心血管系予後を予測することが示されているが,本研究では,家庭血圧の日間変動が遠隔モニタリングシステム搭載型血圧計(HEM-7251G)と従来型血圧計(HEM-7080IC)で異なるかどうかを検討した。対象は57名の高血圧あるいは高血圧が疑われる患者で,平均年齢は64歳であった。患者を遠隔群と対照群に分け,両群ともまず観察期として従来型血圧計で2週間血圧を測定し,その後遠隔群のみで血圧計をHEM-7251Gに変更して,両群ともさらに2週間血圧を測定した。家庭収縮期血圧の変動性指標としてSD(standard deviation),CV(coefficient of variation),RMSSD(root mean sum square differences),ARV(average real variability)を使用した。その結果,両群間でこれらの指標に有意差は見られなかった。しかし対照群の早朝収縮期血圧で見ると後半2週間のSD,RMSSD,ARVが前半2週間と比較して有意に大きくなった(それぞれp<0.01,p<0.001,p<0.001)。それに対して遠隔群では有意な変化が見られなかった(それぞれp=0.162,p=0.185,p=0.092)。家庭血圧遠隔モニタリングシステムが患者の血圧に対する認識を高めることが報告されているが,本研究では同システムが家庭血圧日間変動性の増大を抑制する可能性が示唆された。より長期に観察した場合,同システムには家庭血圧日間変動性を改善させる効果があるかもしれない。
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【コメント】
遠隔モニタリングシステム搭載型血圧計を使用した遠隔群と従来型血圧計を使用した対照群とで家庭血圧日間変動性に有意差は出なかったが,対照群の早朝収縮期血圧で見ると後半2週間の日間変動性が前半2週間と比較して有意に大きかった。遠隔群では有意差が見られなかった。


06. Riser Blood Pressure Pattern Is Associated With Mild Cognitive Impairment in Heart Failure Patients.
Am J Hypertens. 2016; 29: 194-201.
Riser型の血圧変動パターンは心不全患者の軽度認知機能低下と関連している

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Takahiro Komori/ 小 森 孝 洋

【概要】
Riser型の血圧変動は夜間血圧が上昇する異常な血圧変動パターンで脳卒中のリスクとなる。心不全患者におけるRiser型の血圧変動の意義や、Riser型血圧変動と認知機能低下との関係も明らかでない。本研究では心不全患者において軽度の認知機能低下とRiser型血圧変動の関連を検討した。対象は444名の当院へ入院歴のある心不全患者である。入院中にABPMとMMSEによる認知機能検査を行った。MMSEスコアはRiser群 23、Non-dipper群25、Dipper群26でありRiser群で有意に低下していた。多変量解析ではRiser型血圧変動は軽度の認知機能低下と有意に関連していた(オッズ比2.38、95%信頼区間 1.29-4.42, P<0.01)。心不全の血圧変動異常は脳の障害の指標として臨床的に重要であると考えられた。

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【コメント】
心不全の血圧変動異常は認知機能低下と関連している。心不全患者において、脳の障害のひとつである認知機能低下の発症には、血圧変動異常が関係していると考えられる。


05. Hypertension: Benefits of strict blood-pressure lowering in hypertension.
Nat Rev Cardiol. 2016; 13: 125-6.
厳格降圧のベネフィット

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Kazuomi Kario/ 苅 尾 七 臣

【概要】
613,000例あまりの高血圧患者をメタ解析したEttehadらの研究において、降圧療法は収縮期血圧<130 mmHgの患者を含む全患者において心血管イベントならびに死亡を減少させ、さらにベースライン時の合併症の有無は同結果に影響を及ぼさないことが明らかになった。特にリスク低下がみられたのは、脳卒中と心不全で、心不全には利尿薬が、脳卒中にはカルシウム拮抗薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬がより特異的に抑制した。この結果と、2015年に発表されたSPRINT試験、さらに高血圧患者21,000例あまりを2年間前向きに追跡した我々のHONEST研究で得られた結果を併せて考慮すると、白衣高血圧を除外した収縮期血圧<125 mmHg(診察室血圧<130 mmHg相当)を達成することがリスク抑制には重要であろう。すなわち、家庭血圧や24時間血圧測定値に基づいた個別降圧療法を、患者一人ひとりを注意深く観察しつつ実践することが望ましいと考えられる。

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【コメント】
より良い血圧管理を行うには、厳格な診察室血圧管理のみならず、白衣効果、血圧変動性、夜間血圧を考慮した個別血圧管理が重要である。現在の降圧目標値である140/90 mmHgを、130/85 mmHgにし、低血圧や腎不全などの有害事象を注意深くモニターし、一人ひとりに合わせた個別の「パーフェクト24時間降圧治療」を行うことで、より良い心血管リスク管理につながるであろう。

04.Why the radial augmentation index is low in patients with diabetes: The J-HOP study.
Atherosclerosis. 2016; 246: 338-343
なぜ糖尿病患者における脈波増幅指数(augmentation index:AI)は低いのか? J-HOP研究より

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Kazuo Eguchi/江 口 和 男

【概要】
橈骨動脈のaugmentation index (rAI)は大動脈の反射波の指標であるが、糖尿病患者ではAIが増加しているという報告とむしろ低下しているという報告がある。本研究では、自治医科大学が行ったJ-HOP研究のサブ解析を行い、糖尿病患者では、非糖尿病患者よりもrAIが低いことを示した。対象は、少なくとも1つの心血管リスクを有する1787名の患者である。患者の平均年齢は66歳であった。rAIは、糖尿病の方が非糖尿病患者より低かった(83.3±14.1 vs. 87.3±15.7%, p<0.001)が, 上腕血圧の脈圧 (62±14 vs. 59±14mmHg, p<0.001)や中心血圧の脈圧(51±15 vs. 49±15mmHg, p=0.019) は糖尿病のほうが高かった。rAIの関連因子としては、糖尿病群ではeGFR (β=0.17, p<0.001) で、非糖尿病群ではHOMA-IR (β = −0.15, p<0.001) であった。糖尿病患者における低いrAIは中心脈圧が大きい、すなわち、大動脈近位部の大動脈硬化によるインピーダンスミスマッチにより、末梢における反射部位における反射係数が低下するためと思われた。特に腎機能が低下するに従って中心脈圧の増加がaugmentation pressure (AP)の増加を上回ることがその機序に関与していると思われた。

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【コメント】
糖尿病と非糖尿病における血行動態の比較。糖尿病ではrAIが低いのに対し、中心脈圧は有意に高い。


03.症例報告
Cardiac sarcoidosis, the complete atrioventricular block of which was completely recovered by intravenous steroid pulse therapy

Jccase 2016; 13: 21-24.
完全房室ブロックに対してステロイドパルス療法が著効した心サルコイドーシスの一例

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Hiroaki Watanabe/渡 邉 裕 昭

【概要】
完全房室ブロックを伴う心サルコイドーシスの53歳女性に、ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1g/日×3日間)を施行したところ、パルス療法開始後2日目の夕方よりI°房室ブロックに改善し、以後PSL内服により正常洞調律に復した。現在もPSL内服下に正常洞調律を維持され、ペースメーカー植え込みを回避できている。

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【コメント】
一般的な心サルコイドーシスの治療はPSL内服であるが、より抗炎症作用の強いステロイドパルス療法を行うことで速やかに刺激伝導系の機能を回復させた可能性がある。本症例のように比較的心機能が保たれており、完全房室ブロック発症からステロイド治療までの期間が短いと、より有効なのかもしれない。



02.症例報告
A Case of Useful Short-Spaced Bipolar Pacing of a Left Ventricular Lead to Avoid Phrenic Nerve Stimulation.

Int Heart J 2016; 57: 118-120.
心室再同期療法の左室リードの狭い極間刺激で横隔神経刺激を避けえた1例

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Tomoyuki Kabutoya/甲 谷 友 幸

【概要】
心室再同期療法(CRT)の植え込み時の合併症として横隔神経刺激がある。長い極間よりは狭い極間で刺激するほうが横隔神経刺激の閾値が高いといわれている。本症例では1本しか冠静脈を選ぶことができない症例で、そこへ左室リードを入れると通常の極間では横隔神経刺激が起こったが、狭い極間では横隔神経刺激を避けることができた。

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【コメント】
横隔神経刺激閾値が狭い極間で高いことは知られているが、臨床の症例で有効であった症例報告はなかった。CRTのトラブルシューティングは技術、道具の両面から可能であり、狭い極間の左室ペーシングは横隔神経刺激を避けるために良いオプションであると考えられる。


01.症例報告
Case of Adult-Onset Acute Rheumatic Fever With Long-Lasting Atrioventricular Block Requiring Permanent Pacemaker Implantation.

Int Heart J 2015; 56: 664-667.
持続性完全房室ブロックを合併し永久ペースメーカー植込術を要した成人発症リウマチ熱の一例

Yusuke Oba/大 場 祐 輔

【概要】
発熱、吸気時の心窩部痛、完全房室ブロック、多関節炎を来した45歳女性。アンチストレプトリジンO (ASO)高値でありリウマチ熱の診断に至った。NSAIDS内服は臨床症状の改善に有効であったものの効果は部分的であり、アダムストークス発作を生じたことから永久ペースメーカー植込術を施行した。プレドニゾロンの内服を開始したが、3年経過後も完全房室ブロックは持続している。日本を含めた先進国において、リウマチ熱は好発年齢である小児においても稀な疾患であり、ましてや成人例の報告は極めて少ない。完全房室ブロックを合併した成人発症の症例報告は12例入手可能であったが、本症例はその中でも最高齢であり、完全房室ブロックが持続し永久ペースメーカー植込術を要した唯一の症例であった。

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【コメント】
稀少疾患であると同時に、さらに稀な表現型を呈したこの症例は報告の価値が高いと考えました。しかし同様のケースに遭遇することはありうることであり、このような症例を臨床医で広く情報共有することは大変重要と思います。またこの症例報告は単なる一例報告ではなく関連症例についてシステマティックレビューを行っており、このような症例報告の形式があることも是非参考にしていただければ幸いです。