専門診療
口腔腫瘍
口腔がん
「口腔がん」は、口の中つまり口腔に発生する「がん」の総称です。
「口腔がん」は、がん全体の1〜2%程度に発生し、毎年国内で1万人程度罹患します。
「舌がん」が一般的ですが、頬・歯肉・顎骨にも発生します。
私たち自治医科大学歯科口腔外科・矯正歯科は、毎年たくさんの患者様を受け入れて治療する国内有数の施設です。
舌がんの写真
頬粘膜がんの写真
なかなか治らない口内炎、大きくなってくる「できもの」の中には、あなたの命をおびやかす「口腔がん」が潜んでいるかもしれません。変だな?おかしいな?と感じたら歯科医院で相談してください。必要があれば当科を紹介してくれると思います。
私たち自治医科大学歯科口腔外科には、口腔がん治療に長く携わっており経験豊かな歯科医師がたくさんいます。複数の医師が力を併せて皆様の治療に親身に携わります。 口腔がん治療は、長年にわたって世界中でおこなわれた研究成果により構築された、もっとも治療成果が高いとされる標準治療(手術、抗がん剤治療、放射線治療)を基本として行います。私たちは、国内でも有数の治療実績を有しているだけでなく、自治医科大学は総合病院ですので、院内に多数ある診療科の先生のご協力を得て日々診療しております。そのため安心して患者様は治療を受けることができます。抗がん剤治療を専門とする「臨床腫瘍科」、放射線治療を専門とする「放射線科」をはじめ、頭頸部領域の治療を専門とする「耳鼻咽喉科」、再建・整容のスペシャリストである「形成外科」の先生の協力も得ながら日々診療に携わっています。
口腔がん治療の原則は、早期発見・治療です。患者様の病気を少しでも早く治療できるよう、努力しております。口腔がん治療は歯科医師・スタッフが頑張るだけでは成立しません。患者様、御家族のご協力が大切です。受診される皆様は、お仕事などお忙しい中、足を運ばれることは承知しております。ご家族様の介護や家庭的な事情もあり、悩まれている患者様は、たくさんいらっしゃいます。社会的、心理的な面についても、専門とするスタッフとともに、悩みを解決できるようサポートさせていただきます。
口腔がん治療
「口腔がん」の治療をご紹介させていただきます。
切除できる「がん」は手術が最も効果的です。また、「口腔がん」が進行すると、がん細胞は首のリンパ節に転移します。「口腔がん」本体の切除に加えて、頸部郭清術といわれるリンパ管を周囲の脂肪組織を含めて癌細胞を取り除く手術が必要となることがあります。肩を上げる神経や、呼吸の神経、脳を栄養する大事な血管がたくさんある場所ですので、可能なかぎり患者様の機能を温存するよう配慮して手術しています。
進行した「口腔がん」を切除すると口腔・頸部に大きな欠損が生じます。そのままにしておくと、大きな顔貌の変化に加えて食べる機能が低下してしまいます。そのため患者様の整容性や口腔機能を最大限温存できるよう再建手術をおこなっています。口腔がん治療後は入れ歯を装着することが難しくなりますが、私たちは口の中を生理的な形態に回復できるよう、適した体の部分から最も適する組織を移植して機能回復に努めています。足や肩の骨も含めて移植するような手術も毎月のように行なっており治療実績は十分です。患者様の機能低下を最小にできるよう「口腔がん」の切除から失われた整容や口腔機能の回復まで、経験豊かなスタッフが対応します。また術後の看護やリハビリテーションにおいても、経験のあるスタッフがたくさんおりますので、ご安心ください。
切除できる口腔がんの治療は手術が第一選択となります。
口腔がんの手術の実際を示します。
舌がんの手術
明らかな、がんの部位よりも、安全域といわれる正常な部分も含めて大きく切除する必要があります。
ポリグルコール酸(PGA)を利用した吸収性材料とフィブリン糊で創部を被覆して治癒を促進し治癒が得られました。
歯肉がんの手術
歯肉がんでは歯を支える顎骨も含めて切除する必要があります。
頬粘膜癌の手術
頬粘膜がんでは切除後に頬の脂肪を上手く使って機能障害を予防します。
頸部リンパ節転移の手術
口腔がんは首のリンパ節に転移することが多く、進行癌では、リンパ節を周囲脂肪など含んで摘出する頸部郭清術を施行します。癌の進行により範囲が異なりますが、可能な限り機能を温存します。
摘出した組織です。この中にリンパ節が複数、含まれます。
進行口腔癌の手術
がんが大きくなると、切除しただけでは、食べる機能と整容性が大きく損なわれます。体の他の部分から組織を移植することで、なるべく本来の形に近くして入れ歯も装着できる機能的な状態を目指して治療します。
腹部や四肢などから組織を採取して、頸部に移植します。
舌再建
上顎再建
下顎再建
移植する組織の血管と頸部の血管を、顕微鏡を使って吻合します。
進行舌がんの手術
舌の約半分の切除を行い(写真中)、首のリンパ節を取り除く頸部郭清術(写真右)を行いました。口腔機能を改善するために、今回は大腿部から組織を移植しました。
進行下顎歯肉癌の手術1
左下の歯肉に癌があり(写真左)、下顎骨を切除して腸骨を移植しました(写真右)。
Bare bone graftと呼ばれる技法を用いて、義歯の装着しやすい顎の形ができました。
進行下顎歯肉癌の手術2
長い下顎骨の欠損では、足の骨(腓骨)を移植することが多いです。また足の皮膚を利用して、がんの切除でできた口の中の粘膜の欠損を補うことができます。腓骨を採取しても、術後1週間後には、歩けるまで回復する患者さんが多数です。
レジンフレームという、顎の形を正確に再現する装置を作成・装着(写真左)して、腓骨を移植しました(写真右)
口の中に出来た大きな欠損は、足の皮膚で補填しましたが、義歯が装着できました。
モールド照射
「口腔がん治療」において、私たちは、整容や機能温存、患者様の負担を考慮して、放射線治療の中でもモールド照射(小線源治療の一種)という特殊な治療を当院放射線治療部の先生方と協力し提案させていただくことがあります。この治療法は主に合併症や超高齢者で全身麻酔の管理が行えない患者様などに適応しています。
放射線を「がん」の部分に限定的に照射するための特殊な装置を使用します。
密封した小線源をナイロン製の細いチューブに通し、目的の腫瘍部位へ到達し、放射線を「がん」の部分に照射にします。
口蓋がん治療前後の写真
左口蓋に「がん」があり(写真左)、装置を装着して放射線治療(写真中)をしたところ、「がん」は消失しました(写真右)。
舌がん治療前後の写真
舌の右側に「がん」があり(写真左)、装置を装着して放射線治療(写真中)をしたところ、「がん」は縮小しました(写真右)。
下唇がん治療前後の写真
左下唇に「がん」があり(写真左)、がんを挟み込むよう装置を装着して放射線治療を行い、さらに残存した部分に線源を刺して放射線治療をしたところ(写真中)、「がん」は消失しました(写真右)。
私たちは、患者様の「想い」を尊重しながら、できてしまった「口腔がん」に対して、最も望ましいと考えられる治療を提案します。
「口腔がん」の治療は、少しでも早く治療することが良好な治療成績につながりますが、患者様それぞれの「想い」があることを忘れずに、日々努力していきます。
口腔がんの治療成績
5年全生存率(OS)
疾患特異的生存率(DSS)
Stage別5年DSS
口腔がんの治療を志す
歯科医師・学生の皆様。
熱い思いを持って飛び込んで来て下さい。情熱を持って指導します!
最高の治療を提供できるよう私たちと頑張りましょう!!