自治医科大学医学部整形外科学講座およびデータサイエンスセンターで実施した、医療・介護保険データベースを用いた研究により、高齢者上腕骨近位端骨折における治療選択と予後に関する解析を実施し、その成果が国際学術誌に掲載されました。
本研究は、自治医科大学整形外科(医学教育センター兼務)才津旭弘先生が、自治医科大学データサイエンスセンターで実施した研究です。大規模なリアルワールドデータを用いて高齢者骨折患者の臨床経過を包括的にまとめました。

上腕骨近位端骨折は、高齢者において頻度の高い脆弱性骨折の一つであり、受傷後の機能低下や生命予後に影響を及ぼすことが知られています。しかし、骨折前の全身状態や要介護度が治療選択や予後に与える影響については、これまで十分に検討されていませんでした。
本研究では、栃木県の医療保険および介護保険データベースを用いた後ろ向きコホート解析により、65歳以上の上腕骨近位端骨折患者887例を対象に、手術療法と保存療法の選択およびその後の予後を比較検討しました。特に、骨折前の要介護状態に着目し、治療選択との関連や、1年後の死亡および要介護度の変化を評価しました。
その結果、骨折前から約半数の患者が要介護状態にあり、骨折後1年以内に約26%の患者で要介護度の悪化または死亡が認められました。また、75~84歳で要介護状態にある患者においては、手術療法が保存療法と比較して有意に死亡率の低下と関連することが明らかとなりました。一方で、他の年齢層では治療方法と死亡率との明確な関連は認められませんでした。
本研究は、高齢者上腕骨近位端骨折において、年齢のみならず要介護度といった機能的背景を考慮した治療選択の重要性を示したものであり、今後の治療戦略の最適化に寄与することが期待されます。

自治医科大学整形外科学講座では、リアルワールドデータを活用した研究も行っており、本研究もその取り組みの一環として実施されました。
今後も高齢者整形外科領域におけるエビデンス創出に貢献してまいります。


論文名

Treatment and prognosis of proximal humerus fracture in older adults: a retrospective cohort study using health insurance claims database

著者

Akihiro Saitsu, Hayato Yamana, Yusuke Sasabuchi, et al.

掲載誌

BMC Geriatrics

論文リンク

https://doi.org/10.1186/s12877-026-07269-1