2026年6月4日(木)〜7日(日)に福岡市で開催された、第63回日本リハビリテーション医学会学術集会に参加しました。
本学術集会はリハビリテーション医学に関わる医師・医療者・研究者が全国から集まり、運動器疾患、脳血管疾患、循環器疾患、がん、サルコペニア・フレイル、地域医療など、幅広い領域について最新の知見を共有する国内有数の学術集会です。
今年度は当科からも複数の演題が採択され、一般口演およびポスター発表を通じて、日頃の診療・研究成果を全国へ発信しました。
整形外科診療におけるリハビリテーション医学の重要性を再認識するとともに、多職種連携や機能予後改善に向けた取り組みについて、活発な議論が行われました。
学会公式ホームページ:
第63回日本リハビリテーション医学会学術集会 公式サイト
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当科からの発表演題
〇井上泰一 先生 ポスター発表
「肺癌による脊椎転移術後の歩行状態について」
肺癌による脊椎転移に対して手術を行った症例を対象に、術後歩行状態と術前因子との関連を検討した研究です。SINSやTokuhashiスコアに加え、PNI、GNRI、CRP/ALBなどの栄養・炎症指標を評価し術後歩行可能群と歩行不能群で比較しました。
本研究では、術後歩行可能であった患者ではGNRIが有意に高い結果が示されました。脊椎転移に対する手術では、生命予後だけでなく術後の移動能力やADL維持が重要な治療目標となります。栄養状態を含めた全身評価が手術適応や周術期リハビリテーションを考えるうえで重要であることを示す発表でした。

〇西村貴裕 先生 一般口演
「骨盤右側挙上と脚長差を伴う右人工股関節全置換術後のマーカーレス三次元歩行解析による1年間の追跡」
人工股関節全置換術後の歩行変化をマーカーレス三次元歩行解析により1年間縦断的に評価した症例報告です。術前に骨盤側方傾斜と脚長差、非対称歩行を認めた症例に対し術後の股関節・膝関節運動、骨盤傾斜の変化を定量的に解析しました。
マーカーレス三次元歩行解析を用いることで、術後の機能改善過程を客観的に可視化できる点が特徴的であり、今後のリハビリテーション評価や手術後の機能予後予測にもつながる興味深い発表でした。

〇水沼悠太 先生 一般口演
「当院における頚椎症性脊髄症手術患者の心機能の検討」
頚椎症性脊髄症が循環器系に及ぼす影響について心臓超音波検査を用いて検討した研究です。頚椎症性脊髄症では脊髄圧迫に伴う交感神経系の亢進により高血圧や不整脈などへの関与が示唆されていますが、本研究では腰部脊柱管狭窄症手術患者と比較し、心機能の構造的・機能的変化について検討しました。
整形外科疾患を単に運動器の問題として捉えるだけでなく、全身状態や周術期管理との関連から評価する視点が示された発表でした。

〇清水貴弘 先生 ポスター発表
「地域在住高齢者における嚥下障害と筋量および身体機能低下との関連」
地域在住高齢者を対象として、嚥下障害と筋量・筋力・身体機能との関連を検討した研究です。Eating Assessment Tool-10を用いて嚥下障害の有無を評価し、骨格筋量、握力、歩行速度、血清バイオマーカーなどとの関連を解析しました。
本研究では嚥下障害を有する高齢者では骨格筋量、握力、歩行速度が有意に低下している一方で、血清アルブミンなどの栄養指標には有意差を認めませんでした。この結果は嚥下障害は明らかな低栄養が出現する前の段階でも、筋量・筋力低下や身体機能低下を反映する可能性が示唆されました。
整形外科領域においても、フレイル、サルコペニア、嚥下機能、栄養状態を包括的に評価する重要性が高まっており、多職種連携による高齢者診療の発展につながる発表となりました。

学会参加を通して
今回の学術集会では整形外科診療とリハビリテーション医学が密接に関わる多様なテーマについて、当科から発信する機会となりました。
当科では、外傷、関節、脊椎、小児、骨軟部腫瘍、リハビリテーション、地域医療など幅広い分野に取り組みながら、日常診療で得られた疑問を研究へと発展させる姿勢を大切にしています。また、若手医師が学会発表や研究活動に積極的に参加できる環境があり、指導医のサポートのもとで臨床と研究の両面から成長できることも当医局の大きな魅力です。
整形外科診療においては、手術手技や画像評価だけでなく、術後機能、歩行能力、栄養状態、フレイル、嚥下機能、ADLといった包括的な視点がますます重要となっています。
今回の学会参加を通じて、運動器疾患を全身機能の中で捉え、患者さんの生活機能の改善を目指すことの重要性を改めて実感しました。
今後も当科では、地域医療に貢献しながら、臨床に根ざした研究活動を継続し、全国へ発信できる診療・研究成果を積み重ねてまいります。
