診療科のご案内

リンパ浮腫の治療


 当センター形成外科では、隔週水曜日にリンパ浮腫外来を開設しています。
   ➡初診外来担当表
 浮腫の原因精査・リンパ浮腫の診断から行っておりますので、リンパ浮腫かどうか不明でもご紹介いただいて問題ありません。

リンパ浮腫とは

 むくみ(浮腫)には様々な原因があります。その中で乳がんや子宮がん、卵巣がん、前立腺がんなどの治療として行うリンパ節の切除や、放射線治療、薬物療法などによってリンパ液の流れが滞って生じる「リンパ浮腫」という病気があります。リンパの流れ(リンパ系)とは、血管から滲み出た余分な水分や老廃物を回収する経路です。リンパには免疫の細胞も多く含まれており、細菌や病気から身体を守る大切な役割も担っています。
 リンパ浮腫はむくみによる患肢の周径増大、重さや動きにくさといった日常生活の質の低下だけでなく、浮腫を生じている部位に細菌感染(蜂窩織炎)を起こしやすくなります。細菌感染(蜂窩織炎)を起こすと、さらにリンパの流れが滞り、リンパ浮腫は増悪します。適切な治療がなされないと、最終的には象の皮膚のような固く分厚い皮膚(象皮病)となります。

リンパ浮腫の診断

 腕や足がむくむ病気はリンパ浮腫だけではありません。心臓や腎臓と言った内臓の病気や、静脈などの脈管の病気でもむくみが生じるため、むくみの原因を診断することが非常に重要です。
 長らくリンパ浮腫の診断は他の臓器にむくみの原因がないことを確認(除外)し、病歴と合わせて診断とする「除外診断」とされてきました。しかし2018年9月より、リンパ浮腫を直接診断する「リンパシンチグラフィ」という検査が保険適応となりました。また、インドシアニングリーン(ICG)という医療用の色素を用いた蛍光リンパ管造影法も診断価値が高いとされています。当院ではいずれの検査も施行可能です。
 当科では「浮腫の診断」を重要視しています。一通りの他の臓器のむくみの原因を除外したのちに、リンパシンチグラフィおよびICG蛍光リンパ管造影を組み合わせて、リンパ浮腫の診断および重症度の判定を行い、治療方針を立てるための判断材料としています。むくみの原因がリンパ以外にあることがわかった際には、適切な診療科へ治療を依頼します。

リンパ浮腫の治療

 リンパ浮腫は残念ながら現在の医学では根治が見込める疾患ではありません。しかし、適切な治療を受けることでリンパ浮腫の進行をおさえたり、症状を軽減することができます。
 リンパ浮腫の治療は長らく、専門の研修を終えたセラピスト(リンパ浮腫療法士)が行う保存的治療(複合的治療)が中心でした。近年、リンパ管の流れを改善するための外科的治療が目覚ましく発展しています。これら保存的治療と外科的治療を組み合わせて、より高い治療効果を引き出していくことが一般的になりつつあります。
 当センターにおいてはリンパ浮腫療法士の資格を持つ形成外科医が中心となり、院内・院外の多方面・多部門と連携しながら、保存的治療と外科的治療を効果的に組み合わせて治療を行っています。

  1. 保存的治療(複合的治療)
     ・スキンケア
     ・体重管理などの日常生活の注意
     ・用手的リンパドレナージ
     ・弾性包帯や弾性着衣(リンパ浮腫用ストッキングやスリーブ)による圧迫療法
     ・弾性着衣などで圧迫した中で行う運動療法
     上記5つが、複合的治療の柱となります。スキンケアは蜂窩織炎の予防に非常に大切です。体重管理に関しては栄養部にも協力をいただき、食事面から日常生活を見直す体制(栄養指導)をとっています。用手的リンパドレナージや圧迫療法は院内のセラピストや近隣のリンパ浮腫治療院のセラピストさんと連携しながら行います。また、当センターのリハビリテーション部にはセラピストの資格(リンパ浮腫療法士)を有する理学療法士が在籍しており、弾性着衣などで圧迫した中で行う運動療法を効果的に指導することができる体制をとっています。

  2. 外科的治療
     外科的治療には大きくわけて
     ① リンパ管静脈吻合術(LVA)
     ② リンパ節移植術(VLNT)
     ③ 脂肪吸引述
     の3つがあります。いずれの術式も、リンパ浮腫の重症度や患者さんの日常生活、保存療法の状態などを総合的に考慮し、その適応や手術時期を判断します。手術手技自体の難易度も高いとされますが、しっかりとした効果を得るにはリンパ浮腫自体に関する深い理解が必要とされます。当科のリンパ浮腫担当医師は保存的治療・外科的治療の両方を深く理解し、両者を効果的に組み合わせ治療にあたります。とてもマニアックな話になりますが、当院でのLVAは本来のリンパ流を阻害しづらいとされる「側端吻合」を基本としております。また手術直後を「第二の集中排液期」と捉え、術後の圧迫下の運動療法を効果的に行うべく、術後にはゼロストレッチ包帯であるジンクペースト圧迫包帯を積極的に用いております。

当センターでのリンパ浮腫の特徴

  1. セラピストの資格(リンパ浮腫療法士)を有する形成外科専門医が担当
     前述のようにリンパ浮腫治療は保存的治療と外科的治療が両輪となります。保存的治療を行うセラピストと外科的治療を行う外科医がお互いをよく理解し、密に連携をとって治療にあたることが大切です。当科のリンパ浮腫担当医師は、全国でも数少ないセラピストの資格(リンパ浮腫療法士)を有する形成外科専門医です。保存的治療・外科的治療の両方を深く理解し、両者を効果的に組み合わせ治療にあたります。

  2. 多職種による包括的な治療
     たとえリンパ浮腫療法士を有する形成外科専門医がいても、1人では治療を完結できません。リンパ浮腫の治療を効果的に行うためには、多職種がそれぞれの専門を活かし連携することが重要です。さらにはその部門それぞれにリンパ浮腫を適切に理解した人間がいるとなお理想的です。当センターではリハビリテーション部にもリンパ浮腫療法士を有する理学療法士がおり、さらには看護部でもリンパ浮腫療法士を所持する看護師を育成中です。また総合診療科、緩和ケア科にはリンパ浮腫研修(座学)を修了した医師が在籍しており、必要に応じて支援をいただいています。弾性着衣の選定や用手的ドレナージに関しては、院外のリンパ浮腫専門治療院が非常に得意とするところです。そのため信頼できる複数のリンパ浮腫治療院と連携しており、患者さんの居住地などを参考に、リンパ浮腫治療院も紹介させていただくことが多いです。
     大学病院の総合力を活かし多職種の協力を得つつ、院外の治療院にも協力いただきながら、包括的なリンパ浮腫治療を提供します。
    リンパ浮腫診療は多職種連携

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