堀江 久永
消化器・一般外科 中央手術部 教授
新潟大学 平成3 年卒業

下部消化管疾患の外科治療を行っています。2006年より堀江久永(教授:中央手術部部長)がグループリーダーを務めています。メンバーは17名(附属病院勤務8人、関連病院派遣9人)で、うち4名が女性医師です。下部消化管疾患は緊急手術も多く、忙しいながらも各メンバーが協力し、活気に満ちた診療・教育・研究を行っています。

診 療

◆ 手 術
① 手術数
毎年200件以上の大腸癌手術を行っています。炎症性腸疾患などの良性疾患を含めると年間300件以上の手術を担当しています。図2のグラフは過去5年間の大腸癌手術数とその内訳を示しています。最近は開腹手術が減少し鏡視下手術(腹腔鏡手術、ロボット支援手術)が増加しています。

② 腹腔鏡下手術
附属病院では3名の内視鏡外科技術認定医が術者または指導的助手を行っています。3DCT画像を作成し、手術前にシミュレーションを行っています(図3)。その有用性を日本内視鏡外科学会英文誌に報告しています。(Koinuma K, et al. Asian J Endosc Surg. 2019;12(2):150-156. Horie H, et al. Asian J Endosc Surg. 2018 ;11(4):355-361)。難易度に応じて専門医の指導下にシニアレジデントが術者を行う機会もあります。また5つの関連病院には1名ずつ内視鏡外科技術認定医が派遣されており、関連病院においても技術認定医指導下に安全に腹腔鏡下手術が行われています。

③ロボット支援下直腸癌手術 
2019年から直腸癌に対してロボット支援手術を開始しました。2022年に手術支援ロボットがダヴィンチSiからダヴィンチXiに更新され2023年6月から結腸癌に対してもロボット支援手術を開始します。

④開腹手術
大腸癌穿孔症例や他臓器浸潤を伴う進行癌には開腹手術が必要です。難易度に応じて専門医の指導下にシニアレジデントが術者を行う機会もあります。

⑤直腸癌の集学的治療
下部進行直腸癌は局所再発率が高いことから、術前に補助化学放射線療法を施行しています。腫瘍縮小効果も高く、術中の視野展開が良好になります。

⑥炎症性腸疾患
難治性の潰瘍性大腸炎に対しては腹腔鏡下大腸全摘術を施行しています。クローン病の腸管狭窄に対しては、再狭窄のリスクが低いKohno-S吻合に取り組んでいます。

◆ 大腸内視鏡検査

消化器外科医は手術のみ行い内視鏡検査は行わない施設も増えていますが、当院では難易度の高い内視鏡治療(ESD症例など)は消化器内科が担当し、手術前と術後フォローアップ症例を消化器外科が担当します。毎週合同カンファにおいて、内科・外科の専門医が内視鏡検査画像をレビューし、内視鏡治療可能か手術かの検討を行っています。

◆抗がん剤治療

抗がん剤治療の専門家である臨床腫瘍科が担当しています。局所進行癌や、遠隔転移を有する症例の治療方針は臨床腫瘍科医師と議論を行い決定しています。

◆排便機能外来

直腸癌術後の排便機能障害や様々な原因による便失禁の患者さんを対象とした専門外来を毎週火曜日に行っています。⇒排便機能外来のページはこちら

教 育

◆内視鏡外科技術認定医
豊富な手術症例と熱心な指導医に恵まれ、2020年度は当グループからは2名の医師が内視鏡外科技術認定審査に合格しました。2006年以降計10名の内視鏡外科技術認定医(大腸)が誕生しています。

◆レジデント教育
シニアレジデントに対しても腹腔鏡下大腸切除術の術者トレーニングを行っています。アニマルラボで術者を体験し、手術器具の使用方法も理解してから(図4)、専門医の指導下に術者を行います。本トレーニング内容は日本内視鏡外科学会誌に報告しました(堀江久永、他:シニアレジデントに対する腹腔鏡下結腸切除術のトレーニングプログラム、23巻3号 Page297-303;2018)。

 

研 究

◆ 学会発表
日常診療での気づきや手術の工夫、手術成績、そして研究成果を学会発表し、他者からの批評を受けることは重要なことと考えています。昨年は学会に22演題発表しました。

◆ 論文発表
昨年は大腸肛門病に関連して4編の和文論文と5編の英文論文が医学誌に掲載されました。

◆ 研究課題

    • 「直腸癌術前放射線化学療法患者における末梢血白血球の総合的解析」
    • 「大腸癌術後再発マーカーとしてのHMGB (High-Mobility Group Box)とIMA(Ischemia-Modified Albumin)の意義に関する検討」
    • 「大腸癌患者における大腸粘膜に生息する腸内細菌の解析」
    • 「大腸癌表面粘膜より検出された細菌の由来に関する研究」
    • 「肥満大腸癌患者に対する腹腔鏡下手術の腫瘍学的安全性を評価する後ろ向き試験」
    • 「肥満患者に対する低位前方切除術後の縫合不全の危険因子」
    • 「腹腔鏡下直腸癌切除における技術認定医手術参加の有用性に関する検討」
    • 「腹腔鏡下直腸癌術後性機能障害に関する多施設前向き観察研究」