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腹膜播種治療センター

一般の抗癌剤治療の効きにくい腹膜播種患者さんに対して、腹腔内化学療法(Intraperitoneal chemotherapy:IP治療)を中心とした集学的治療を行っています。

概要

腹膜播種治療センター

がんが腹腔内に散らばった形で転移を形成する腹膜播種は、胃癌、膵臓癌、大腸癌などの消化器癌や卵巣癌、尿管癌などの癌腫において頻繁にみられる難治性の病態です。近年の抗癌剤の進歩により切除不能進行がん患者さんの予後は著しく向上しましたが、通常の全身化学療法だけでは腹膜播種に対する効果は乏しく、その予後は極めて不良です。当院では、2016年から胃癌の腹膜播種を対象として、皮下留置型腹腔内アクセスポート(以下腹腔ポート)を用いてタキサン性抗癌剤を腹腔内に反復投与するを全身化学療法と併用する新規治療法を実施し、良好な成績を上げています。IP治療は、胃癌や卵巣癌の治療専門医を中心として、長年、試験的治療として行なわれてきており、その有効性が確認されてはいますが、本邦では未だに保険適応治療となっていないため、臨床試験あるいは自費診療の枠組みで限定的に行われている状況です。また、感染やルートの閉塞などの腹腔ポートに特有の合併症も起こるため、設置や管理上の専門的な留意点も数多く存在します。本センターではIP治療を実践することで、予後の悪い腹膜播種患者さんの治療成績の向上に努めています。

診療体制

腹膜播種治療センター

消化器外科・臨床腫瘍科を中心にIP治療の経験を有する複数の診療科の医師に加え、鏡視下手術による腹腔ポート作成や癌性腹水を有する患者に対する腹膜濾過濃縮再静注法(CART)などの特殊技術に精通したメンバーが参加し、臓器横断的な治療体制を整えています。

診療内容

  • 全身麻酔下での審査腹腔鏡検査と皮下留置型腹腔内アクセスポートの設置と管理
  • 外来での腹膜播種患者に対する腹腔内化学療法の実施
  • 癌性腹水を有する患者に対する効果的な腹水濾過濃縮再静注法(CART)の実施
  • 腹腔内化学療法に関する一般的な情報提供
  • 腹膜播種に対する臨床研究の開発
  • 腹腔内化学療法を希望する患者への相談支援

現在、当院で行っている腹腔内化学療法は、胃癌と膵癌を対象とした以下の4つの臨床試験となります。
これら以外で当院で腹腔内化学療法を受けることはできません。

1.腹膜播種を伴う胃癌に対するS-1/オキサリプラチン+パクリタキセル腹腔内投与併用療法

【この臨床試験に参加できる主な条件】
  1. 胃癌の初発腹膜播種(手術後の再発の場合には適応がありません)
  2. これまで化学療法を受けていない
  3. 年齢 20歳以上75歳未満
  4. 経口摂取が可能
  5. 卵巣以外の遠隔(領域リンパ節以外のリンパ節、肝、肺、胸膜、脳、髄膜、骨など)への転移がない
  6. 出血や狭窄に対して緩和的(姑息的)胃切除術が施行されていない
  7. 多量の腹水が貯留していない
  8. 骨髄・肝・肺・心臓・腎臓等の機能が保たれている

2.腹膜転移を有する膵がんに対するS-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内投与併用療法(腹腔内化学療法と標準治療にランダムに割当てられます)

【この臨床試験に参加できる主な条件】
  1. 膵癌の腹膜播種
  2. 以前に化学療法を受けていない、もしくは化学療法の期間が2ヶ月未満である
  3. 年齢 20歳以上80歳未満
  4. 経口摂取が可能
  5. 多量の腹水が貯留していない
  6. 卵巣以外の遠隔(領域リンパ節以外のリンパ節、肝、肺、胸膜、脳、髄膜、骨など)への転移がない
  7. 骨髄・肝・肺・心臓・腎臓等の機能が保たれている

3.4型進行胃癌に対する術後または周術期補助化学療法としての全身・腹腔内併用化学療法(全身・腹腔内併用化学療法と標準治療である全身化学療法にランダムに割当てられます)

【この臨床試験に参加できる主な条件】
  1. 4型(スキルス型)胃癌である
  2. 漿膜下層以深への浸潤が疑われる
  3. 腹膜播種を含め、明らかな遠隔転移がない
  4. 年齢20歳以上75歳以下
  5. 胃癌に対して化学療法や放射線療法を受けていない
  6. 経口摂取が可能
  7. 骨髄・肝・肺・心臓・腎臓等の機能が保たれている

この他にも臨床試験への参加に必要な条件があります。