生殖医学センター(不妊治療・体外受精センター)
生殖医学センターでは、不妊・不育症に悩むカップルの方だけでなく、がん患者様の妊孕性温存療法のご相談等、一般不妊治療から高度生殖補助医療まで幅広い診療を行っています。また、大学病院の特性を活かし、内視鏡手術や遺伝診療等の専門性の高い治療にも注力し、最新の治療につながる研究の取り組みも積極的に行なっています。過去に不妊治療を受けてうまくいかなかった方だけでなく、初めて不妊治療を希望される方、検査のみご希望の方も随時受け付けています。
生殖医学センター長あいさつ
自治医科大学附属病院生殖医学センターは2007年に開設した歴史あるリプロダクションセンターです。これまで栃木県内・外から数多くの患者様を受け入れ、妊娠・出産に向け、患者様に寄り添った診療を行ってきました。
年間体外受精治療周期数は700周期を超え、大学病院としては全国でもトップレベルの件数を誇ります。専門性の高い大学病院という特性を活かし、内視鏡手術や、生殖医療で近年発展の目覚ましい着床前診断等の遺伝診療にも積極的に取り組んでいます。
現在、反復着床不成功や均衡型転座保因者の方がご経験する習慣流産に対して行われる着床前の胚異数性検査(PGT-A,PGT-SR)の導入準備を行い、重篤な遺伝性疾患を罹患したお子さんをご出産されたことがある方や、その保因者の方を対象として行われる着床前診断(PGT-M)を、当院小児科・産科・遺伝カウンセリング室と連携して行うことが可能です。
2016年からは妊孕性温存外来を開設し、小児・AYA (Adolescent and Young Adult; 思春期・若年成人)世代のがん患者様が、ご自身の妊娠できる力(妊孕性)を温存しながら、安心してがん治療を行えるよう、精子・卵子・受精卵を凍結保存する妊孕性温存療法も行っています。さらに初潮前の女児や原疾患治療まで時間のない方を対象として行われる卵巣組織凍結は、現在栃木県内で実施できる施設がありません。栃木県内でがん治療を受けられている方が本治療を受けられるよう、導入のための準備を現在すすめています。
このように専門性の高い治療にも積極的に取り組んでいますが、初めて不妊治療を受けられる方、不妊でないか心配で検査のみの方の受診も大歓迎です。是非気になることがございましたら初診外来にお越しください。
生殖医学センターの特徴
先進的な検査・治療の積極的な導入
当院では、大学病院として先進医療を含め様々な検査・治療を導入し、難治性不妊症の方にも対応しています。
ひとりひとりに合わせたきめ細やかな対応
主治医制を取り入れており、患者さまそれぞれの背景や不妊原因、治療歴、ニーズに合わせたオーダーメイドの治療をしています。初診時から心理的・社会的背景を十分考慮した上での診療を心がけています。生殖医療心理士による心理カウンセリング等、充実した心理的ケアの提供も行っています。
産科と連携し、妊娠前から分娩までサポート
私たちは、妊娠がゴールではなく、母児ともに無事に分娩まで導くところまでがゴールと考えています。当院には総合周産期母子医療センターがあり、妊娠前から産科と連携し、母児ともに安全に分娩までサポートする体制を整えています。
他科と連携し、合併症がある方も安心して不妊治療を
当院ではプレコンセプションケアにも積極的に取り組んでいます。合併症のある方は、それぞれの科で併診しながら、妊娠可能かどうか病状を評価し、妊娠を見すえた処方内容に変更の上、安心して不妊治療ができるよう連携しています。
受診について
初診の方へ
初診は火曜日・木曜日の午前8:30-11:00です。
上記時間内に、可能であればパートナーの方とご一緒に受診をお願いします。
他院に通院していた方は、紹介状をご持参ください。
当院で他科に通院中の方は、主治医の先生にご相談ください。
再診の方へ
電話で予約を取る場合は、下記の番号へお願いします。
電話の際は、お手元に診察券をご用意してご連絡ください。
ダイヤル | 0285-58-7592(外来直通) 0285-44-2111(代表) |
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予約時間 | 平日14:00~16:00 *土日・祭日は予約の電話対応はしておりませんので、ご了承ください。 |
予約外診療について | 緊急受診、当日受診を希望される方は、必ず来院前に上記の番号へ電話でご連絡ください。 緊急受診の相談は、平日夜間・土日・祭日でも受け付けております(当直医の対応になります)。 ダイヤル: 0285-44-2111(代表) |
概要
女性不妊症治療、男性不妊症治療
不妊症の原因は男性例が約50%、女性例が約65%とされています(重複あり)。従ってカップルのお二人がそれぞれ診察し、泌尿器科とも連携しながら不妊症の原因を明確にしていく必要があります。当センターでは不妊治療後の妊娠に際し、安心して出産・育児を行えるように、産科・小児科との連携体制を整えています。また内科疾患など様々な合併症を有する患者様も安心して治療を受けられるよう各科と連携しながら診療を行っています。
「当院での不妊検査・治療の流れ」
不妊症の原因は、①排卵(内分泌)因子、②卵管因子、③子宮因子、④頸管因子、⑤免疫因子、⑥男性因子、⑦原因不明(機能性不妊)に分けられます。当院では、後述する各種検査を行い、原因に応じた治療をすすめていきます。
当院では、不妊原因・検査・治療についてお話する「不妊学級」を定期的に開催しています。尚、治療の進め方については年齢や病状によって異なりますので、詳細は主治医にご確認ください。
一般不妊治療
- タイミング法:排卵日を予想し、最も妊娠しやすい時期に性交を持つようにする方法です。卵胞の大きさなどを確認し、排卵日を推定します。
- 人工授精:マスターベーションで採取した精液から良好な精子を取り出して、最も妊娠しやすい時期に子宮内に注入する方法です。
タイミング法や人工授精を計画する際に、排卵誘発法(内服薬や注射で排卵を促す方法)をとる場合があります。
一般不妊治療の費用について(モデルケース)
- 排卵誘発薬(クロミッド内服)を用いたタイミング法:3,810円/周期
- 月経5日目頃 超音波検査を行い、排卵誘発薬を処方します。
- 月経12日目頃 超音波検査などで排卵日を予想し、性交をもつ日を指導します。
- 排卵誘発薬(ゴナールエフ自己注射)を用いた人工授精:20,570円/周期
- 月経5日目頃 超音波検査を行い、排卵誘発薬を処方します。
- 月経12日目頃 超音波検査などで排卵日を予想し、人工授精を計画します。
- 月経13日目頃 人工授精を行います。
生殖補助医療
卵子や精子などの配偶子を体外で取り扱う治療法を生殖補助医療(ART)と称します。当院では一定水準の妊娠率を確保しながら、卵巣過剰刺激症候群や多胎妊娠等の合併症を最小限にすることを目標に、体外受精(IVF-ET)・顕微授精(ICSI)・受精卵凍結保存・アシステッドハッチング、胚移植および胚盤胞移植・精巣精子採取(TESE)などを行っています。
先進医療
- タイムラプス
- 子宮内膜スクラッチ
- 子宮内膜着床能検査(ERA)
- 子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE)
不育症治療
2回以上の流産・死産がある場合、不育症と診断されます。当院では、不育症の様々な原因(子宮形態、甲状腺機能、抗リン脂質抗体症候群、凝固異常、染色体異常など)の有無について、精密検査を行っています。不育症の中には、流産を偶発的に繰り返している場合もありますが、原因に応じて治療を行うことで次の妊娠で出産まで繋げられる可能性があります。
着床前胚遺伝学的検査(Preimplantation Genetic Testing; PGT)
発育した受精卵(胚盤胞)から一部の細胞を取り出し、必要な検査を行う技術を着床前診断(PGT)と呼んでいます。当院は重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)の承認実施施設施であり、遺伝カウンセリング室、小児科、産科と連携しながらPGT-Mを行うことが可能です。着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)、着床前胚染色体構造異常検査(PGT-SR)につきましては、現在申請に向けて準備中です。詳細は担当医にお尋ねください。
着床前胚遺伝学的検査(Preimplantation Genetic Testing;以下PGT)をお考えの方へ
腹腔鏡・子宮鏡手術
不妊症・不育症の原因となるような婦人科疾患を有する場合には、腹腔鏡・子宮鏡手術による治療を積極的に行っています。
男性不妊外来
男性不妊症に関する診療を泌尿器科内で行っています。精液検査の異常を指摘された方やこれまでの治療がうまく行っていないカップルなど男性因子の検索を行い、治療を提案しています。手術に関しては、附属病院や関連施設で顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術や顕微鏡下精巣内精子採取術を行っています。
【初診の方へ】
初診を希望される方は紹介状を持参の上、水曜日(11時まで)に泌尿器科男性リプロ外来を受診してください。
内分泌治療(更年期障害含む)
高脂血症、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)など更年期の女性に現れる特有の症状に対し、漢方薬やホルモン療法などの治療を行っています。
がん・生殖医療
若い患者さんに対するがん治療は、その内容によって将来不妊症になることがあります。当センターはがん治療後の妊よう性温存に関するご相談も承っており、精子や卵子、受精卵の凍結保存による妊よう性温存療法も行っています。
当院の診療実績
2023年 | 2022年 | 2021年 | ||
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新患患者数 | 不妊症 | 233名 | 284名 | 286名 |
不育症 | 19名 | 24名 | 21名 | |
妊孕性温存 (女性) | 13名 | 10名 | 18名 | |
不妊症検査 | 子宮卵管造影検査 | 64件 | 107件 | 89件 |
子宮鏡検査 | 218件 | 187件 | 217件 | |
精液検査 | 287件 | 372件 | 267件 | |
一般不妊治療 | 人工授精 | 244件 | 374件 | 385件 |
体外受精 | 採卵数 | 325件 | 335件 | 286件 |
新鮮胚移植数 | 24件 | 53件 | 17件 | |
凍結融解胚移植数 | 393件 | 385件 | 409件 | |
妊娠数 | 妊娠数 | 194件 | 151件 | 180件 |
手術 | 子宮鏡手術 | 57件 | 59件 | 75件 |
開腹手術 | 4件 | 15件 | 16件 | |
腹腔鏡手術 | 11件 | 1件 | 5件 |
施設認定
【日本産科婦人科学会】
- 重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査 (PGT-M) 承認実施施設
- 生殖医療専門医制度認定研修施設(日本生殖医学会)
- 2023年度学術貢献施設(日本受精着床学会)
- 栃木県指定妊孕性温存療法実施医療機関(検体保存機関および温存後生殖補助医療実施医療機関)
【日本生殖医学会】
- 生殖医療専門医制度認定研修施設
- 生殖医療専門医制度研修連携施設
【その他】
- 2023年度学術貢献施設(日本受精着床学会)
- 栃木県指定妊孕性温存療法実施医療機関(検体保存機関および温存後生殖補助医療実施医療機関)
診療体制
- 女性不妊症治療
- 男性不妊症治療
- 腹腔鏡・子宮鏡手術
- 不育症治療
- 内分泌治療(更年期障害含む)
- がん生殖医療
組織体制
産婦人科では泌尿器科や小児科とも連携し、患者様へのさまざまのサービス向上をめざし、最新の知識や高い技術をもった多くの有資格者を揃え対応しております。
- 生殖医療専門医(日本生殖医学会認定)【4名】
左 勝則、杉山 瑞穂 (非常勤)、藤原寛行(産婦人科)
安東 聡(泌尿器科) - 腹腔鏡技術認定医(日本産科婦人科内視鏡学会認定)【1名】
左 勝則 - 臨床遺伝専門医(日本人類遺伝学会認定)【1名】
左 勝則 - 日本卵子学会認定胚培養士【1名】
上代 傑 - 生殖医療相談士(日本生殖心理学会認定)【1名】
四反田由紀 - 体外受精コーディネーター(日本不妊カウンセリング学会認定)【1名】
上代 傑 - がん・生殖医療ナビゲーター(暫定含む、日本がん・生殖医療学会認定)【3名】
左 勝則、大橋 麻衣、四反田由紀
特色
- 患者様のご理解を深めていただけるよう下記の学級を行っています。
【不妊学級】奇数月第3火曜日
【体外受精学級】毎月第1木曜日 - 生殖医療相談士によるカウンセリングも随時受け付けています(要予約、1回3,300円(自費))。
*予約は受付までご連絡ください。
スタッフ紹介
外来診療日
初診:完全紹介状制(火・木のみ)(事前予約不可)
再診:予約制 (但し急患は電話または受付にて応相談)
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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