医学部 School of news

ニュース&トピックス

News & Topics

[医学部]希少小児神経難病に対する新規遺伝子治療法を開発

研究情報

背景

 テイ-サックス病とサンドホッフ病は、糖脂質GM2ガングリオシドの分解酵素(β-ヘキソサミニダーゼA(HexA, αβ鎖二量体)をコードする二種の遺伝子(HEXAおよびHEXB)の変化によって引き起こされる遺伝性神経変性疾患(GM2ガングリオシドーシス、ライソゾーム病の一種)です。乳児期発症で重症型の症例(発生頻度1人/10~20万出生児)が多く、いまだ根本治療法はありません。

 近年、二種の遺伝子を搭載したアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療法の臨床治験が米国で実施され、新たな治療法として期待されています。しかし、二種の遺伝子に由来するHexAの体内半減期は短く、乳児期に発症し神経症状の進行が速い症例に対しては有効性が低いという課題があります。

 このため、一種の改変遺伝子を搭載したウイルスベクターで十分な有効性が得られ、長期間にわたり効果が持続する遺伝子治療法の開発が望まれています。

概要

 自治医科大学医学部小児科学講座、同オープンイノベーションセンター神経遺伝子治療部門、徳島大学、川崎医科大学、安田女子大学の共同研究グループは、その単一遺伝子産物にGM2分解活性を賦与するとともに、発現酵素の生体内安定性を大幅に向上させることができる改変HEXBを搭載したAAVベクターを用いる新規遺伝子治療法の開発に成功しました。

 本研究では、サンドホッフ病モデルマウスへの脳室内投与により酵素活性の回復とGM2の減少を認め、運動機能の回復および生存期間の延長を確認しました。さらに、ラットおよびカニクイザルを用いた非臨床試験により、中枢神経系への広範な遺伝子導入と良好な安全性を示しました。

 本研究成果は、希少小児神経難病であるGM2ガングリオシドーシスに対する新たな遺伝子治療戦略の長期的な有効性と安全性を示すものであり、日本発の遺伝子治療薬として将来国内外での臨床応用につながることが期待されます。

掲載論文

本成果は、2026年4月23日付で「Cell Reports Medicine」誌にオンライン掲載されました。
雑誌名: Cell Reports Medicine
論文タイトル: AAV-based gene therapy with modified HEXB confers lasting therapeutic benefits in GM2 gangliosidosis models
著者名:北風圭介#、大西恭弥#、辻大輔、渡邊綾佑、加守虹穂、片貝祐子、柴田宏昭、吉沢創太、伊藤美加、滝野直美、村松慎一、伊藤孝司*
   (#は共同筆頭著者、*は責任著者)
DOI: 10.1016/j.xcrm.2026.102762

その他

詳しくは下記をご覧ください。